公開日 2018/04/27 20:04

“アナログ感”を全面に押し出したLP盤『Pure2-Ultimate Cool Japan Jazz-』、その制作に込めた想いとは

『春のヘッドホン祭2018』でも試聴イベント開催予定!

■ソニー・ミュージックスタジオによるカッティングを実施

F.I.X.RECORDSでは『Pure』『Pure2』でヴォーカルを務めた所属アーティストSuaraの作品のほか、『Pure』と『Pure3 Feel Classics -Naoya Shimokawa-』(以下、『Pure3』)が先行してレコード化されているが、『Pure2』だけはアナログにこだわりのある作品だからこそ、レコード化においてもどのように作業を進めればいいのか検討が重ねられたため、時間がかかっていた。そしてこの春、満を持して『Pure2』のレコード化にゴーサインが出され、SACD盤のマスタリングも実施した東京・乃木坂にあるソニー・ミュージックスタジオでカッティングが行われたのである。

カッティングにあたっては再びアナログ・マスターテープを使用して進められた

カッティングはレコードをプレスするための金型を作る大元の工程だ。マスター音源がデジタルデータである『Pure』『Pure3』のレコードは、プレスを行う東洋化成に併設されたカッティングルームでカッティング作業を実施したが、『Pure2』のマスター音源はアナログテープであるため、そこからカッティングできる現場は限られる。現在のところアナログテープから直接カッティングを行うことは不可能ではないものの、修正作業が難しいこともあり、対応してくれるスタジオは少ない。一般的にレコード化される音源のほとんどが元を辿ればデジタルデータであることが要因でもあるが、アナログ音源の場合は一旦デジタル・オーディオ・ワークステーション(DAW)に取り込み、EQやコンプレッサー、ノイズ除去などのエフェクター処理を経てカッティングマシンに音声を送り込む。

マニアとしては純粋なアナログ工程を貫いたレコード化が理想であるが、DAWで96kHz/24bit以上のクオリティで取り込まれたものはアナログテープマスターと遜色ない品質であるため、頑なにアナログのみの環境にこだわる必要性はない。

エンジニアを勤めたソニー・ミュージックスタジオの鈴木浩二氏

今回の『Pure2』レコード化においては、以前SACDで用いたマスター音源をそのまま流し込むのではなく、レコードの特性に合わせた音質調整を行っている。ソニー・ミュージックスタジオのマスタリングルームにて、下川氏、橋本氏も同席のもと2度目のマスタリングが実施された。今回のマスタリングもSACD盤の時と同じ、鈴木浩二氏が担当。アナログハーフマスターテープを再生するのはSTUDER『A820』。その出力はドルビー『363』を経てドルビーA NRをデコードし、dCS『904』でA/Dを行ってからDAW『SEQUOIA』(セコイア)に入力。DAW上でマスターテープの音質の良さを生かすため、音圧感は上げずにアナログならではの豊かな低域と、高域のハリ艶良い輪郭感をもたらすための僅かなEQを行っている。

アナログ・マスターテープの再生に用いられたスチューダー「A820」


ドルビーA NRのデコードにはドルビー「363」を使用


A/DコンバーターにはdCS「904」が用いられた


作業中の鈴木氏。DAW『SEQUOIA』を使いながらアナログ感を追求したマスタリングを行っていく

このレコード用マスタリングの音質確認はSACD盤マスタリングも行ったMastering1ルームで実施。収録楽曲すべてのチェック、マスタリングが終わるとカッティングが行われる。ソニー・ミュージックスタジオのカッティングルームは別フロアにあり、カッティングマシンにはノイマン『VMS70』を導入。既に自社以外のタイトルもカッティングを行っており、先般リリースされた『ニューヨーク52番街/ビリー・ジョエル』と『夢で逢えたら/大滝詠一』を皮切りにとしてプレス工程についても本格的に始動するという。LP盤『Pure2』に関してはソニー・ミュージックスタジオでのカッティングの後、東洋化成にてプレスを行うこととなっている。

ソニー・ミュージックスタジオに導入され、大きな話題を集めたノイマンのカッティングマシン「VMS70」。今回の『Pure2』の制作でもこのカッティングマシンが活用された

このカッティングルームにもコンソールやモニタースピーカーが設置されているが、モニタリング環境が異なることもあり、カッティング最中の立ち合いは行わず、レコード用にマスタリングしたデータを基に、あらかじめテストカッティングしたラッカー盤をMastering1ルームで試聴するという体制で進められた。

アナログテープを使用した作業は、工程としても非常に手間がかかるものとなる

テストカッティングされたラッカー盤がMastering1ルームへ届けられ、マスタリングスタジオ内にセッティングされたレコード再生用のレファレンスシステムにセット。用意されていたシステムはレコードプレーヤーにテクニクス『SL-1200G』、カートリッジはデノン『DL-103』、フォノイコライザーがアキュフェーズ『C-37』、プリアンプに同『C-2420』である。

今回のラッカー盤の試聴で使用したレコードプレーヤーはテクニクスの「SL-1200G」


フォノイコライザーはアキュフェーズ「C-37」で、プリアンプはアキュフェース「C-2420」が用いられた

でき上がったばかりのラッカー盤からのサウンドがマスターテープからマスタリングされたものと印象が変わらないかを再度確認したが、昨今のレコードで多く見られる音圧を上げた方向性ではなく、ダイナミックレンジを優先し、音圧感は控えめにカッティングする形で進められた。この間カッティング段階で1dB単位でのレベルの上げ下げで試聴を繰り返し、アナログらしさ、レコードらしさを追求したのである。

ラッカー盤を試聴する橋本氏(写真左)と下川氏(写真右)。試聴を重ねながら、双方に納得するサウンドへと仕上がっていった

まだ『Pure2』のLPを手にしていないので、いまからそのサウンドがどのようなものであるのか楽しみであるが、LP発売直後である『春のヘッドホン祭2018』の一日目、28日の13時より中野サンプラザ15F・アクアルーム『ORBブース』にて行われる筆者イベント内にて、『Pure2』LPの試聴を行う予定だ。ぜひともお立ち寄りいただきたい。

最後に『Pure2』エグゼクティブ・プロデューサー、下川直哉氏と、プロデューサー&エンジニアを務めた橋本まさし氏への『Pure2』LP化においても思いを伺ったインタビューをお届けしよう。

次ページキーパーソンに訊く『Pure2』LP化への想い

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