約90名のオーディエンスが最後まで聴き入った

現代ハイエンドオーディオの最前線を体験。土方久明氏の講演も大盛況、「サウンドピット創業祭2026」レポート

公開日 2026/08/04 06:30 季刊・アナログ編集部 野間美紀子
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オーディオエンスの目の前にハイエンドオーディオが次々と

7月25日(土)、26日(日)の2日間、名古屋市千種区の名古屋市中小企業振興会館「吹上ホール」9階 展望ホール特設会場で、「サウンドピット創業祭2026」が開催された。

サウンドピットは、名古屋市名東区上社に店舗を構えるオーディオ専門店。「現代オーディオ」「ヴィンテージ」「修理」の3店舗を展開する、中部地区を代表するオーディオショップである。今年は創業44周年を迎え、その記念イベントとして最新オーディオ機器の展示・試聴会が行われた。

評論家・土方久明氏による試聴会は今回で5回目を迎え、毎年多くの来場者を集める人気企画として、いまや創業祭の恒例イベントとなっている。

2022年から講演している土方久明氏。解説の分かりやすさ、楽しさ、再生する音源の新しさも注目度が高い

右はサウンドピット代表取締役社長・坂口昌司氏 

オーディエンス席が並ぶ前方に、旬の国内外のハイエンドオーディオが一堂に集められ、それらを繋ぎ換えながら、次々と聴くことができるという、他ではなかなか味わえない試聴スタイルとなっている。

錚々たるアンプ群が並ぶさまは壮観というほかない

90名ほどのオーディエンス。途中席を立つ人はおらず

今年も、25日午前はアンプ、午後はソース機器、そして26日はスピーカーシステムをテーマとし、試聴会が行われた。

ここでは25日に行われた試聴会の様子をレポートしていこう。

今話題アンプのデモが次々と繰り広げられる

25日午前のアンプの部では、全真空管構成のオーロラサウンドのプリメインアンプを皮切りに、トライオードやエアータイトの大出力真空管アンプ、TADのプリメインアンプ、エソテリックやアキュフェーズのA級パワーアンプ、ラックスマンの創業100周年記念モデル、オーディオノートのベーシックシリーズの真空管プリとパワーなど、多彩な国産アンプが披露された。

さらに、Burmester、OCTAVE、BOULDERといった海外ハイエンドブランドのアンプも登場し、充実したラインアップで来場者を魅了した。

トップバッターは全真空管構成のオーロラサウンド「HFSA-02」。なめらかで生き生きとしたサウンドが鳴っていた

アンプの最初のデモにはJBL「4369」が組み合わせられた。1ブランドごとに2曲ずつ、1曲目はメーカー担当者による選曲、2曲目は土方氏による選曲で機器の魅力を引き出す。右はオーロラサウンド代表の唐木志延夫氏

トライオードの「EVOLUTION MUSASHI」。 KT150×4本による100W+100Wのハイパワー出力を誇るモノラル式。「EVOLUTION PRE」と組み合わせて鳴らされた音は鮮度抜群

エアータイトのステレオパワーアンプ「ATM-2 plus」。KT88による70W+70Wのプッシュプル出力で余裕を感じさせる濃厚な音

エソテリック「S-05XE」はA級アンプならではのスムーズさとパンチのあるサウンドが素晴らしい。ネットワークプレーヤー兼プリアンプ「N-05XE」でQobuz再生を行った

 TADのプリメインアンプ「TAD-A1000」(この写真真ん中)は腰の座ったベースを聴かせてくれた

ホワイトボードに記された順序で試聴が進行していく。 アンプの部の後半は、スピーカーのレファレンスはソナスファベール「Amati Supreme」に


アキュフェーズ「A-300」(この写真のセンター)は 同社のプリ「C-3900S」と組み合わせられ、圧倒的なS/Nで清々しい音を鳴らした

ドイツのオクターブのステレオパワーアンプ「RE320」。KT150による130W+130Wの大出力モデルならではのハイスピードなキックドラムを再生

ラックスマンは創業100周年モデルとなるフラグシップ・モノラルパワーアンプ「B-100 Centennial」を披露。潤いを帯びた瑞々しいサウンドが印象的

世界的オーディオブランドとして知られるオーディオノートは「G-72」と「Melius」(写真センター)を鳴らす。ラテンのバンドネオンを情熱的に聴かせてくれた

注目を集めたハイエンド・ネットワーク再生の競演

25日午後のソース機器試聴では、マランツやTADのCD/SACDプレーヤーによるディスク再生に続き、今年日本に本格上陸を果たしたポルトガルのInnuos、そして昨年から大きな注目を集めるdCSやTaiko Audioによるネットワーク再生が披露された。 

ソース機器のトピックはまずはInnuos。「NAZARÉ」は3筐体(ミュージックサーバーNAZARÉ本体、出力ステージFLOW、スイッチNET)で構成されるシステムで、NAZARÉ本体だけで税込1000万強という弩級モデル。圧倒的な情報量を備えながら分析的にならない音楽再生を披露した

機器の入れ替えには、メーカーや輸入商社の方々が自社製品のみならず、協力し合いながらセッティング。25日(土)のアンプの試聴の後ソース機器の試聴に移ると、リファレンススピーカーはアヴァロンISIS Signature」に

Innuos、dCS、スフォルツァートのコンポーネンツは、いずれもフロントパネルに斜めのラインを配した造形美とともに、再生されるサウンドもまた、圧倒的な情報量と空間表現を備えた、アメイジングな美しさを感じさせるものだった。

スフォルツァートのネットワークプレーヤー「DSP-Columba」、マスタークロック「PMC-Delphinus」はアンプの部のレファレンスとして活躍

右から二列目最下段がMaster Fidelity「NADAC D」。正確性を持つデジタル・レファレンスとして、Innuosの「NAZARÉ」(左列)と組み合わせられた

dCS「Varèse」(左列上部のシルバーのコンポーネンツ)はクロック+トランスポート+モノラルDACからなる一式5,000万円を超えるデジタルソースシステム。Innuosのミュージックサーバー「NAZARÉ」との組み合わせと、Taiko Audioのミュージックサーバー「Olympus Server XDMI」+「I/O XDMI」(左列のブラックのコンポーネンツ)の組み合わせで試聴が行われた

Innuos、dCS、Taiko Audioといったハイエンド・デジタルソース機器群が示したのは、圧倒的な情報量や空間表現はもちろん、低域の高いリニアリティと、柔らかな自然な再生音であった。いずれも数千万円級のシステムを構成する世界最高峰のモデルであり、誰もが気軽に手にできるものではない。しかし、それらが示したのは、ネットワークオーディオ、そして現代デジタル再生のひとつの到達点といえるものであった。

クライマックスはアナログレコード再生

アナログレコード再生もまた、華やかな展開を見せた。

注目を集めたのは、フェーズメーションのカートリッジ「PP-5000」、アナログリラックスの「EX2000」、そしてグランツラボのトーンアーム「KATANA II」という、国産カートリッジと国産トーンアームのフラグシップモデルによる組み合わせであった。

これらをテクダスのターンテーブル「Air ForceX Premium」に搭載して再生するという、まさに国内最高峰級の組み合わせは、他ではなかなか体験できない貴重な試聴となった。

テクダス「Air Force X Premium」+グランツラボのアーム「KATANA II」+フェーズメーションのダイヤモンドカンチレバー・カートリッジ 「PP-5000」

フォノアンプはフェーズメーション「EA-1500」、パッシブプリ同「CM2200」。リズムとメロディのタイミングが揃ったカウンド・ベイシー・オーケストラを聴かせてくれた

アナログリラックスの ダイヤモンドカンチレバーMCカートリッジ「EX2000」。こちらもターンテーブル「Air Force X Premium」と組み合わせて再生。ジャッキー・マクリーンの『It's Time!』の熱さが迸る


レコードを持って走り回る土方氏。アナログ再生のレファレンススピーカーはファインオーディオ「F1-12S」+スーパートゥイーター「SUPERTRAX」を使用

また、世界的にも評価を高めているDSオーディオやテクダスの存在感も際立った。

DSオーディオは光カートリッジ専用の真空管式フォノイコライザーを披露。一方、テクダスはターンテーブル「Air Force W」を純正トーンアーム、純正カートリッジとの組み合わせで再生し、現代の日本が先陣を切るアナログ再生の世界観を示した。

DS Audioは真空管式光カートリッジ専用フォノイコライザー「TB-50」と「DS-W3」の組み合わせで、レディー・ガガを再生。高い解像感に、真空管ならではの質感が加わった明るいサウンドだった

テクダスのターンテーブル「Air Force W」+トーンアーム「Air Force10」+ダイヤモンド・カンチレバーカートリッジ「TDC-01 Dia」の再生では、卓越した音像感に会場が釘付けになった。ブルガリアのThraxのフォノEQ「COTYS」(写真下段)にも注目が集まった

海外勢では、1973年の誕生以来、世界中のアナログファンを魅了し続けるスコットランド・LINNの最新フラグシップ「KLIMAX LP12 SE BEDROK」が登場。さらに、リトアニアのReedは、昨年末から大きな話題を集めている光カートリッジ「Reed SF」を、同社トーンアーム「Reed 5T-S」、ターンテーブル「MUSE 3C」と組み合わせて披露した。

LINN「KLIMAX LP12 SE - BEDROK」(写真中央最上段)。1973年から連綿と続くLP12であるが、サブシャーシはKEEL SE、電源はKLIMAX RADIKAL が組み込まれた最新鋭モデル。圧倒的な情報量を備えながら、音楽を自然に聴かせてくれた

Reedが手掛ける光カートリッジ「Reed SF」(DS Audioの光カートリッジ技術を採用)を、ターンテーブル「Muse 3C」、トーンアーム「Reed 5T-S」、フォノイコライザー「Reed EQ」と組み合わせて再生。ローレン・デイグルの息遣いまで克明に描き出した

そしてイベントの最後を飾ったのは、英国VERTEREがこの5月に発表したフラグシップ・ターンテーブル「RG-1 PKG」。

新開発カートリッジ「RUBY ONE MC」との組み合わせによる再生は、創業祭のフィナーレにふさわしい圧巻のアナログサウンド。 ザ・レディングスのレコードを輸入元のタクトシュトック庵 吾朗氏が再生すると、土方氏はそのハイスピードな低域に負けじとマーカス・ミラーを再生した。

VERTEREはこの5月にリリースされた「RG-1 PKG」を披露。14,300,000 円(税込/トーンアーム付き)のフラグシップモデルだ。その音のエネルギー感と躍動感に会場中が釘付けとなった

「音楽を楽しむ」という原点

サウンドピット創業祭2026は、最新鋭のデジタル再生からアナログ再生まで、まさに現代ハイエンドオーディオの魅力を連続試聴できる祭典であった。

一方で、会場でサウンドピット代表・坂口昌司氏が語ったのは、同店が機器の価格やスペックより、その先にある「音楽を楽しむ」という原点を大切にしているということであった。

最後にその坂口氏のコメントをご紹介したい。

サウンドピット代表取締役社長 坂口昌司氏

――サウンドピットさんが大切にしているオーディオの考え方について、お聞かせください。

坂口「皆さん、『音が苦』になっていませんか? 音が楽しいと書いて『音楽』です。オーディオを、ラグジュアリーオーディオと呼ぶ風潮がありますが、私はそのようには捉えておりません。オーディオは音楽を楽しむための手段です。この土方さんの試聴会でも、毎度同じ曲を再生するのではなく、いろいろな音楽をかけていただいております。音楽を楽しんでほしいですね」

 ――実際にどのようにオーディオを選ぶお手伝いをしたり、研究をなさっていますか?

坂口「どういう音楽を、どういうふうにオーディオで再生するか。それを長年にわたって追求しています。

例えばジャズやロックなどは、目の前の近い位置で演奏している様子……お腹にドカンと来るような低音を聴きたいと思う人がいたり、一方で、シンフォニーを聴くのであれば、2階の後ろの方の席で聴くようなホールトーンを味わいたい人がいます。

いま、海外のショウで多く再生されるEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)には、実際のアコースティック楽器では出てこない低音が入っているので、往年のヴィンテージ・スピーカーでは再生が難しいはずです。そういった音楽を聴くのであれば現代のスピーカーを使いませんか、といった具合に音楽の分野ごとにお薦めしています。

――音楽の分野ごとに、オーディオを提案されているのですね。

坂口「はい。といっても分野ごとにこういうオーディオが良いという法則があるわけではありません。

例えば、クラシック音楽を聴くお客さまの中に、多くの人が好むような、コンサート会場の2階席で聴けるようなホールトーンいっぱいのオーディオをセットしてみたら、『私がいいと思っている音はこうではない』という方がいました。

そこで、そのお客さまと一緒にクラシックのコンサートに出掛けることにました。すると、そのお客さまは前から3列目の席を指定して、『いつもこの席で聴くんです』というんです。実際にその音を隣の席で聴いてみると、ティンパニの直接音がものすごい勢いで飛んできます。

なるほど、これもありだな、と思いました。その後、そのお客さまのオーディオの調整をやり直しまして、満足していただけました。

ジャズも、面と向かって向かい合って聴くような音を好む方ばかりではありません。『この音では新聞を読んでいられない』とおっしゃるお客さまもいます。生活のなかで流れる良い音を好む方もおられるわけです」

 ――サウンドピットはいま3店舗を運営されていますが、次のステップも考えておられるとのこと。これからもお客さまに良い音を届けてください。

 坂口「もちろんです。これからもよろしくお願い申し上げます」

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現代ハイエンドオーディオの最前線を体験できる場でありながら、サウンドピット創業祭が多くの来場者を惹きつける理由は、そこに「音楽を楽しむ」という明確な軸があるからだろう。

定番企画となった土方氏の試聴会でも、各メーカー/輸入商社が採り上げる音源を厳選してきている様子が見て取れ、オーディエンスも紹介される音源を熱心にメモしている姿が目についた。

最高峰の機器が奏でる音楽の魅力を通じて、オーディオが持つ豊かな可能性を感じさせるイベントとなった。 

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