JBL、新フラグシップ「SUMMITシリーズ」の「AMA」を聴いた!唯一のブックシェルフ型、心鷲掴みにする音色感
“サミットゴールド”の仕上げも美しいJBLのフラグシップライン
今年のミュンヘン・ハイエンドでグローバル発表され、すでに世界各国で話題となっているJBLの20年ぶりのフラグシップ “SUMMITシリーズ”。「D30085 Hartsfield」「D44000 Paragon」「Project EVEREST DD55000」「Project K2 S9500」、そして現代の「EVEREST DD65000/DD67000」と生み出されてきたJBLフラグシップ機の流れを汲みながらも、今回は型番も一新。世界の最高峰を囲むヒマラヤ山脈系の名が冠された、堂々たる80周年記念モデルである。
その中から、まずはブックシェルフ型の「AMA」を聴く機会を得た。なお、本製品についてJBLは「スタンドマウント型」と呼んでいる。スタンドとセットで、税抜価格はペア260万円(単体発売はなし)。確かに本棚に置くサイズではないが、便宜上のジャンル名としてブックシェルフ型と呼ばせてもらう。このジャンルとしてはかなり高額な部類に入るだろう。
ミュンヘン・ショウではグロスブラック仕上げがメインとして展示されていたが、日本国内向けには木目仕上げ(エボニー天然木突板・ハイグロス仕上げ)のみを展開する。ユニットの境目やウーファーのエッジにあしらわれているオレンジ色は「サミットゴールド」と呼ぶそうで、このシリーズにしか添えられないアクセントとなる。上品な仕上げが美しい。
20年間で培われた最新の音質技術を搭載
外観上、やはり目をひくのがJBLのシンボルといえるコンプレッションドライバーとホーンの組み合わせ。サイズこそ違えど、上位機種の「PUMORI」「MAKALU」にも搭載されていることを確認している。
トゥイーターは38mm口径の2発のコンプレッションドライバーを向かい合わせに配置した「D2815K」。JBL独自のD2ドライバーと呼んでおり、コンシューマー向けモデルとしては初搭載。強力なネオジムのリング・マグネット、またフェーズプレートも亜鉛ダイキャスト製とするなど、新開発の技術で音質を追求している。
注目はHDIホーン部で、近くでみると直線ではなくゆるやかなカーブを描いていることが分かる。この20年の間にコンピューターシミュレーションが大きく進化し、音波がどのように放出されるか精緻にシミュレートできるようになったことで、複雑な形状が実現できた背景があるという。
またウーファーは200mm口径の「JW200SC」。上位機種とはサイズが違うが素材は共通で、発泡コア材をセルロースコーンでサンドイッチした構造となっている。接着剤も特殊なものを用いてダンピング性能を高めている。ちなみに、過去モデルではエッジにリブが設けられていたが、今回は接着剤の厚みが変わることから、リブのないエッジとなっている。
キャビネットは正方形の4つの角を切り落としたような八角形。グロス仕上げと合わせて、これまでにない新鮮な印象を与えてくれる。25mm厚のMDFに、19mm厚のカーボンファイバーで補強されたサブバッフルという構成となる。
ターミナルも面白い設計で、新規設計のジャンパーバーがターミナルの上に装着されており、上の穴に専用ジャンパーを装着すればシングルワイヤに、ジャンパーを外せばバイワイヤ接続が可能になる。バナナ端子が4つ繋がった独特のバーも斬新なアイデアである。リア・バスレフ方式を採用。
足元は、スタンドの下にIsoAcoustics(アイソアコースティクス)製のインシュレーターが4点支持で配置されている。かなり大型のインシュレーターで、回転して高さを変えることができる。アイソアコースティクスは、ソナス・ファベールの「Suprema」や、マーテンの「Coltrane Supreme Extreme」にも採用されるなど、世界のハイエンドシーンで搭載が進む高性能インシュレーターである。
ホーンから飛び出てくる熱い音色感
さて肝心の音である。ミュンヘン、そして上海のオーディオショウでもちらりと耳にはしているものの、きちんと正対して聴くのは今回が初めてである。
まずは出音の一音目から、心を鷲づかみにされる熱い音色感である。華やかで、それでいてリッチに濃い。解像度高く、耳をそばだてなくてもそれぞれの楽器の役割が自然に見えてくる。
聴き進めていけばその熱さが、ホーンから飛び出してくる特別な音であると気づく。キャノンボール・アダレイのサックス、そのパッセージとまさに呼吸を合わせるように、音が前方へと飛び出し部屋の空気を震わせる。シンバルの立ち上がりの速さ、伸びやかさはまさに絶品。ホーンにしか出せない音がある、ということを改めて心の底から納得する。
低域は軽快に、文字通り歌うように部屋を満たす。太鼓の皮のハリまで見えるような存在感、ウッドベースの弦のしなりなど、さらりと自然に聴かせてくる。
ライヴ盤の熱気も良い。ジョン・ウィリアムズの『ライヴ・イン・ベルリン』からアンコール曲「インペリアル・マーチ」では、オーケストラが一体となってこの場を楽しんでいるさまが伝わってくる。最後の拍手まで、息も切らせぬ緊張感が続く。生演奏ならではのダイナミズムにも非常に良くマッチしそうなスピーカーである。
開発陣からも、「開発が進むほどに、リファレンス曲がどんどん増えていく」という声があったのだという。良いスピーカーであればこそ、この曲はどう聴こえる? どう鳴ってくれる? と聴きたい曲が増えていくことは大きく首肯できるところ。どこまでこのスピーカーのポテンシャルがあるのだろう、それを深く知ることもまたオーディオの楽しみであると教えてくれる。
欲を言えば低域にさらなるスピード感や深みはほしい。だがそれがブックシェルフのまとまり感の良さということでもあるだろう。
JBLという名前には、多くのオーディオファンにとって、それぞれの思いがあるだろう。それが、HiFiスピーカー市場を牽引し、数えきれない銘機と名エッセイを生み出し、80年を超えてブランドを継続してきた彼らの重みでもある。
だが一度頭をまっさらにして、言葉を選ばずに言えば「中学生に戻った気持ちになって」、新しいJBLの音に触れてほしい。そこには間違いなく、小さな箱から音楽が飛び出してくる喜び、敬愛するミュージシャンの息吹を、特等席で味わう喜びに溢れているだろうから。
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