回路を見せるためのガラストップ

Mark Levinson、50周年記念モノラルアンプ「ML-50」を12月発売。歴代銘機からインスパイア

2022/12/06 編集部:押野 由宇
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ハーマンインターナショナルは、同社が取り扱うMark Levinsonブランドの創立50周年記念モデルとして、モノラルパワーアンプ「ML-50」を12月に発売する。価格は6,050,000円(ペア/税込)で、本日12月6日より受注受付を開始。世界100ペア限定生産モデルとなる。

「ML-50」

今年の「CES 2022」で発表され、10月の「2022東京インターナショナルオーディオショウ」では実機展示も行われたアニバーサリーモデル。その発売日の詳細が決定した。

ブランド50周年を記念したアニバーサリーモデルとなる

1972年の創業以来リリースされてきた、多数のアンプ製品を振り返り開発されたという限定モデル。製品名は1977年から1986年に製造されたパワーアンプである「ML-2」に由来。フロントパンネルハンドルは1986年〜1995年に製造された「No20」と、そのアップグレードモデル「No20.5」「No20.6」からインスパイアされたものとなる。

またブランドとしてはじめて「リファレンス」と名付けられたパワーアンプ「No33」、および「No33H」が、防振アイソレーション・フィートのもととなり、ガラス製フロントパネルと赤いバックライト付きロゴデザインは、「No53」から取り入れられた。

不要振動を排除する防振アイソレーション・フィート

そしてオーディオパフォーマンスは「No536」をベースとしながら、電源部とオーディオ回路部を大幅に強化。高電圧電源のコンデンサ容量を13,200μFまで増加するとともに、主大電流電源の容量は206,800μFまで確保、トランスからフィルターキャパシターまでの低インピーダンス経路用にはショットキー整流器を再構成し、動的電力の増加を実現した。さらには出力段のバイアスを増加して歪を低減させ、クラスA領域で20W(8Ω負荷)、クラスAB領域で425W(8Ω負荷)という過去最大の出力を実現する。

また信号の入り口から出口まで正確な電気伝送を実現するために、フルディスクリート・コンポーネントをフルバランス回路構成とした伝統の「ピュア・パス回路設計」も踏襲している。

先述の防振アイソレーション・フィートは、不要な振動を排除するほか、本体を接地面から持ち上げることで対流冷却を強化する役割を担う。

ゲインは26dBで、入力感度は142mV RMS、S/Nは85dB。周波数特性は10Hz〜20kHzで、全高調波歪は0.04%以下。入力端子はRCAとXLRを各1系統備える。外形寸法は438W×216H×581Dmm(突起部含む)、質量は49kg。

アニバーサリーにふさわしい仕様が奢られたプレミアムモデル



日本での正式なリリースにあわせて、Mark Levinsonから担当者が来日。メディア向けの説明会が実施された。

ハーマンのラグジュアリー・オーディオ部門バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャー DAVID TOVISSI氏は、「1972年の創業以来、マークレビンソンは音楽を忠実に再現する、オーディオ業界のスタンダードであり続けている。この50年、優秀な開発設計チームが市場を牽引してくれているのは信じがたい幸運だと言える」と50周年を迎えた喜びをコメント。

DAVID TOVISSI氏

あわせて、「もう1つ喜ばしいのは、レクサスとのリレーションシップが25周年を迎えたこと。Mark Levinsonとレクサスは、細部にこだわり、自社製品に最高の結果を求めるという姿勢が共通している。車室で満足のいく音響性能を実現するのは難しいと考えられてきたが、レクサスの妥協のない開発姿勢が、車室に静粛性を生み出し、その結果として車載用マークレビンソンが誕生したと思う」とレクサスとの関係性に触れた。

記念モデルであるML-50について、「ブランドが追求してきたピュア・パス回路はアートとサイエンスの融合といえるもの。これを磨き上げて50周年の記念モデルとしてかたちにしたのがML-50だ」と胸を張る。「天面をガラス仕様にすることで、エンジニアの努力の結晶を目にすることができるようにした」として、その技術を強くアピールした。

また製品開発の責任者であるラグジュアリー・オーディオ部門 製品戦略・企画担当シニアディレクターJIM GARRET氏が、ML-50の詳細を解説してくれた。50周年を記念するアンプとして、どんな製品を作りたいかを話し合ったところ、「ML-2」「No20」「No33H」「No53」という歴代の銘機の良いところを取り入れたいという結論に至ったそうだ。

JIM GARRET氏

上述のとおりML-50は、それぞれからインスピレーションを受けたデザイン、設計が施されている。そのなかでJIM氏は「基板上の回路設計が美しい。ジャンパーを飛ばしたりせず、最短経路で設計している。これが音の良さにもつながっている」と解説。さらにガラストップデザインの内部を照らす赤のLEDについて、「Mark Levinsonにはシンプルかつ無骨なデザインのイメージを持っているかもしれないが、赤のライティングによって生命感をデザインしている」と、あらゆる面でプレミアムモデルらしさを追求したことが明かされた。

ガラストップからは赤でライティングされた内部構造が見える

ホテルの一室を使用した発表会場では、ML-50を中心に、プレーヤーに「No519」、プリアンプに「No523」、スピーカーに「PROJECT K2 S9900」を用いたシステムが組まれ、ハイレゾ再生でのデモンストレーションが行われた。簡単にインプレッションを記したい。


ML-50を中心に据えたシステムでデモンストレーションが行われた
女性ボーカル楽曲では、一聴して受けた印象は清らかさ、そして柔らかさだ。S/Nが高く澄んだサウンドは、清流のように見通しが良く、引っかかるところが一切なく耳を通り過ぎていく。続く四重奏でも、巨大なシステムの見た目からは重厚な威圧感を受けるが、それをある意味で裏切る静けさとシルキーさに驚かされる。

一方で、ハッとさせるような強烈なサウンドはもちろん出せないはずがない。ホテル・カリフォルニアが流れると、環境的に音量は抑えめな試聴だったが、そのボリュームのなかにあらん限りの情報が満ち満ちており、空間と身体でサウンドを浴びる体験ができた。

Mark Levinsonが大切にしているのは、「ピュリティ(純粋さ)」「パワフル(力強さ)」「プレシジョン(精密さ)」で、何も足さず、何も引かず、ソースをそのまま伝えることを製品哲学にしているという。そのサウンドがまさにML-50で実現できていると、両氏は笑顔を見せた。

さて、今年6月に、Mark Levinsonは50年の歴史のなかで初めてヘッドホン製品「No5909」を発売した。本製品は「ブランドにとって重要な製品になった」とDAVID氏。「No5909でMark Levinsonは、家で楽しむハイエンドオーディオから、いつでもどこでも、相棒のような身近な存在としての地位を獲得した。ブランドを身近なものにして、認知を高めることにつながった。ユーザーへの新たなタッチポイントになったと確信している」とその手応えを語る。

写真はLEXUSが展開する『LEXUS Collection』とのコラボ版「No5909」

こうした反響は、今後の製品展開にもつながっていく。ハイエンドオーディオブランドとしての地位は崩すことなく、ラインナップの抜本的な見直しを図るという。「従来のブランドイメージを支持してくださるファンからの要望に応えるため、既存シリーズを大切にしながら、新しいシリーズでのライフスタイル寄りの展開も検討している。アップグレードを続けていくので期待してほしい」と締めくくられた。

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