同店代表・筏隆市氏に話を聞く

【専門店探訪】福井・オーディオスペースコア「アクセサリーへの投資はシステムの音をよくするための必須条件」

2021/11/10 PHILE WEB ビジネス編集部・竹内純
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
福井市のオーディオ専門店「オーディオスペースコア」。ひとりひとりのお客様に寄り添う豊かなオーディオライフを実現するべく、手持ちのオーディオシステムの能力を最大限に引き出す“アクセサリー商品”の提案にも力を入れている。ともするとその存在を軽視されがちな縁の下の力持ちを、輝く存在としてクローズアップする、同店代表・筏隆市氏に話を聞く。

■専門店の力量が試されるオートクチュール

「アクセサリーは言わばオートクチュール。お客様ひとりひとりで力を入れるポイントが異なりますから」と語る筏隆市氏。それぞれのお客様にとって魅力あるアクセサリーか否かは「店側がいかにたくさんの引き出しを持っているかが大切になります」と専門店の力量が試される商材とも言える。同時に「数千円のアクセサリーでいろいろ音を変えてみるのもひとつの楽しみ方。しかし、システムに何百万円も投じているお客様なら、機材を活かすことができるアクセサリーにきちんと目を向けてほしい」と訴える。

福井市のオーディオ専門店「オーディオスペースコア」。

お客様のオーディオアドバイザーとして末永くおつきあい。お客様のサウンドを育てていく。

筏氏が気掛かりなのは“勘違い”されているお客様が少なくないことだ。「例えば、50万円のアンプを購入しようとしている人に10万円の電源ケーブルをお薦めすると、それならば、その資金を上乗せして60万円のアンプを購入しようと考える人がいます。10万円の電源ケーブルは機材の能力を100%引き出すために必要なもの。音をよくするためなのか、単なる物欲のためなのか。電源ケーブルなどは確かに隠れて見えない裏方の存在ですが、アクセサリーの意義をきちんと噛みしめてほしい」と指摘する。

現在、メインの試聴システムにオーディオリプラスの超ハイエンドパワータップ「STP-6」を導入する。「驚異的なS/Nに驚かされました。ハードよりも高価だったりしますが、高価な機器ならこのくらい使用しないと機器の性能を活かしきれないことに気づかされます」と筏氏。

同店のサイト冒頭には「感動を奏でる音楽のある暮らし〜ただオーディオ製品を売るのではなく、お客様に合ったオーディオライフをご提案します」と記されている。「一緒になって耳の肥えたお客様を育てていくことは私たち専門店の役割でもあります。それはお客様のこれから10年先、20年先の趣味としてのオーディオの楽しさ、豊かさを提案していくことにもなります」と力を込める。

オーディオスペースコア 代表・筏隆市氏

そうした姿勢から、多くのハイエンドブランドから頼られる存在でもある筏氏には、数々の相談が舞い込む。見事に潜在能力が引き出された例のひとつがYG ACOUSTICS「RACKシリーズ」だ。今から3年前、スピーカーメーカーが作るオーディオラックとして紹介された「RACKシリーズ」。3段で200万円以上もする商品だが、果たして売れるものなのか。ところが、送られてきたサンプルを使用してみた筏氏は、その想いが完全に払拭されたという。「本当にびっくりするほど音が良くなるんですよ。そこで、価格も安くできるし、オーディオボードとして製品化することを提案しました」。するとこれが大反響を集めた。「『もう1枚』と追加で買われていくお客様も多くいらっしゃって、それならばはじめからラックを購入した方が割安じゃないかとラックも売れ始めたんです」。

YG ACOUSTICS「RACKシリーズ」。

ヨルマ・デザインの電源ケーブルも筏氏が見初めた商品のひとつ。高音質のスピーカーケーブルやオーディオケーブルを繰り出すスウェーデンのハイエンド・オーディオケーブル・メーカーに注目。どうしたらそんなに音を良くできるのかと自ら社長を訪ね、同社の理論を徹底解剖した。音が良くなるには理論の裏付けが必要。「理論で音がわかる」が筏氏の信条だ。同社の理論を解き明かし、20万円もする新製品の電源ケーブルを「間違いなくいいものだと確信できました」と50本仕入れるとこれが完売。「電源ケーブルは機材の数だけ売れるドル箱商品ですから」と全国でもトップの売上げを記録した。

いち早く注目したヨルマ・デザインの電源ケーブル。

■その輝きはリアル店舗でこそ実感できる

既成のカテゴリーにとらわれず、幅広い視野で商品を探求するなか、お客様から大きな支持を集めているのは力を入れるマスタークロック。「昔からとても大事なアイテムだと注目していて、20年以上前からCDプレーヤーの改造なども手掛けていました。dCS(英国)から出ていた業務用製品やタイムロードから出ていたルビジウムを用いた『クロノス』も数多く販売しました」と長年にわたり実績を築き上げてきた。現在はその買い替えニーズにも応えて、MUTECから昨夏に発売された水晶発振を用いた高精度の「REF10 SE120」やマスタークロックの入力を備えない機材にも対応する「MC-3+USB」が人気を集めている。

現在人気を集めるMUTECのマスタークロック「MC-3+USB」。

「陽の目を見ないものがまだまだあるはずです。発見してご紹介できれば、お客様の新しい楽しみにもなります。これまでも『次の新しい目標ができました』と多くのお客様に喜んでいただいています。そこでメーカーにお願いしたいのは、商品を出し続けてもらうこと。なぜなら、お客様は購入後の妄想をしたり、ネットでの批評をじっくり読み込んで検討を重ねたり、1年、2年と時間をかけて楽しみながらじっくりと品定めをする人も珍しくないからです。マスタークロックに関しては、今はエソテリックさんなどからも商品が出てきて、認知・注目が高まっています」と期待を膨らませる。

各社の値上げを前にした製品の駆け込み需要も目立ってきた。「心配されるのはやはりその後の反動です。そうしたときにも心強い存在となるのがアクセサリー」と太鼓判を押す頼もしい味方。「ハードを活かすためのものだとわかっていただくことで、ハードの売上げそのものにもシナジーが期待できます。そのためには何よりいい製品が必要ですから、改良して欲しい箇所があればメーカーに対してどんどん要望を出しますし、開発者とは常にコミュニケーションをとっています」と縦横無尽の活躍を見せる。

底知れないアクセサリー商品の魅力と実力は、オーディオライフをさらに豊かにする存在だ。

withコロナ、afterコロナのニューノーマル時代。「今やネット販売が広まり、ディスプレイ上でクリックするだけで買い物ができます。クルマですらネットで購入することができますからね。そのような時代にあって、アクセサリー商品はお客様とオーディオ専門店のフェイス・トゥ・フェイスの関係を守ってくれる大切なものだと確信しています。店頭でのやりとりがあってこそ、それぞれのアクセサリー商品の価値を実感することができます」と語る筏氏、時代に左右されない、ますます高まる存在意義を訴えた。

■店舗概要
店名/オーディオスペースコア
住所/福井市新保1-808 クレストデュオ1F
電話・FAX/0776-52-2952
営業時間/11:00−20:00(日曜は19:00まで)
定休日/水・木

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE