早期の実用化へ期待

【HIGH END】生演奏を高音質でライブストリーミング、「MQA Live」の大きな可能性

公開日 2018/05/13 09:52 山之内 正
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5月11日午後、HIGH ENDの複数のブースでMQA Liveによるライヴストリーミングが行われた。

MQAはハイレゾ音源の配信やMQA-CD、そしてTIDALのストリーミング再生などで実用化が進み、高音質とファイルサイズ軽減の両立をアピールしてきたが、それに加えてライヴ配信でもメリットがあることを実証する狙いがある。

配信が行われたのはパートナー企業計9社のブースで、筆者はそのなかのエソテリック試聴室で聴いたが、同試聴室は同じブース内にオンキョーとパイオニアの展示があり、パイオニアの試聴室でも配信が行われた。会場全体ではライヴ配信を体験した来場者はかなり多かったはずだ。

スペースに余裕のあるエソテリック試聴室でライヴストリーミングを体験した

今回の配信プログラムはコンテンポラリー・ジャズのライヴで、演奏はロンドン市内ののPOOL Recording Studioで行われた。ロンドンで活躍する「ミーシャ・ムローヴ=アバド・グループ」の演奏はピアノ、ベース、ドラムスに複数のホーン楽器を加えた編成。「ハロー、ミュンヘン」というMCの声を合図にテスト音源からライヴに切り替わり、リアルタイム配信ならではの臨場感が会場に広がる。

音の広がり具合から、広めのスタジオでの演奏と思われるが、マイクは各楽器の音を鮮明にとらえており、目の前にピアノやベースが並ぶ迫真のサウンドが展開。演奏は40分以上に及んだが、HIGH END会場の通常の通信回線を使っているにも関わらず、音の途切れは一切なく、再生は安定していた。

音の鮮度の高さとダイレクト感はライヴならではのもので、特にドラムのクリアな音像定位、サックスやトランペットの生々しい音色に感心させられた。他の試聴イベントと同様、演奏中も入退場できるスタイルでデモンストレーションが行われたのだが、ライヴ演奏が始まると誰も席を立とうとしない。リアルタイムで演奏を聴いている緊張感に加え、編集された音源とは異なる生々しさがサウンド自体にそなわっていたからであろう。

再生システムの構成はシンプルだ。MQA対応を正式に発表したroonで192kHz/24bitのライブストリームを受信し、roonからエソテリックのネットワークプレーヤーN-05に配信。F-03AとB&Wの800D3の組み合わせで再生するという流れだ。

再生システムはシンプルな構成。N-05の出力をF-03AとB&Wの800D3の組み合わせで再生した

エソテリックのネットワークプレーヤーN-05で再生。192kHzの表示が見えるが、MQAエンコードによってCD同等の転送レートで配信が行われた。

F-03Aは出力30WのクラスAアンプだが、広い試聴室でも800D3から十分な音圧を引き出し、演奏が白熱してドラムの打音が思いがけず強いレベルに達しても飽和する様子はまったく見せなかった。

今回のライヴストリーミングはHIGH ENDの特別イベントとして企画されたもので、MQA Liveの可能性を探る実験的な側面もあったと思うが、安定した再生クオリティに加え、シンプルなシステムで再生環境を構築できる点など、多くのメリットを実感することができた。

エンコーダーさえ用意すれば演奏現場のシステムもさほど大がかりなものにならないはずなので、すぐにでも実用レベルで運用できるに違いない。スタジオやホールから高品質のライヴを届ける手段としてMQA Liveへの期待が募る。

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