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Manhattan DAC II、Liberty DACも発売予定

A/D変換を知るからこそ、最高のDACが作れる - MYTEK開発者が「Brooklyn DAC+」の優位性を語る

編集部:小澤貴信
2018年04月27日
エミライは昨日26日、同社が5月より取り扱いを開始するMYTEK Digitalについてのプレス向け内覧会を実施。同社が取り扱い予定の以下のUSB-DAC 3機種を披露した。発表会には、MYTEK Digitalのオーナーであり製品開発を手がけるミーハウ・ユーレビッチ氏も登場。各モデルの詳細について説明した。

「Manhattan DAC II」と「Brooklyn DAC+」

ミーハウ・ユーレビッチ氏

今回取り扱いが正式にアナウンスされたのは、以下のUSB-DAC 3機種となる。

・「Manhattan DAC II
・「Brooklyn DAC+
・「Liberty DAC

いずれのモデルも発売時期は5月のゴールデンウィーク明けを見込んでいるとのこと。価格は調整中だが、Manhattan DAC IIは80万円以下、Brooklyn DAC+は30万円以下、Liberty DACは15万円以下を目指しているという。

上記3機種のUSB-DACは共通して、384kHz/32bit PCMおよび11.2MHz DSDのネイティブ再生に対応。さらにMQA音源のハードウェア・デコードできる「MQAデコーダー」機能(認証取得済み)を搭載する。

国内初導入の新製品となるBrooklyn DAC+は、従来モデル「Brooklyn DAC」の後継機種。ESS TechnologyのハイエンドDACチップ「ES9028Pro」を採用。クロックについては、CRYSTEK製の低ジッター水晶発振器「Femto Clock」を用いた内部ジッター0.82psという「MYTEK フェムトクロック・ジェネレーター」を搭載する。

「Brooklyn DAC+」

背面端子部

プリアンプ機能も備えており、アナログ/デジタルボリュームの両方を搭載。切り変えて使用することができる。また、MM/MC対応のフォノイコライザーも内蔵している。ヘッドホンアンプについては、2系統の6.3mm端子を用いてのバランス出力にも対応する。

従来の「Brooklyn DAC」からの変更点としては、DACチップにES9028Proを新採用したこと、アナログアッテネーター回路やフォノ入力段のグレードアップ、ヘッドホンアンプの向上、アナログ信号経路のデュアルモノラル構成化などが挙げられる。

エントリーモデルとして新たにラインナップされる「Liberty DAC」は、DACチップにESS Technology「ES9018K2M」を採用。DACチップ以外のUSB-DAC部の構成は「Brooklyn DAC」とほぼ同じだという。クロックは、低ノイズタイプの10psマスタークロック回路を搭載する。ヘッドホン出力はシングルエンドのみとなる。

「Liberty DAC」

背面端子部

以前の代理店時代からラインナップされていたトップエンドモデル「Manhattan DAC II」は、ESS TechnologyのフラグシップDACチップ「ES9038Pro」を採用。Brooklyn DAC+と同じく「MYTEK フェムトクロック・ジェネレーター」を搭載しつつ、独自のジッター低減回路「C777クロッキングアーキテクチャ」を組み合わせることで、DACチップの性能を最大限発揮させるとする。

「Manhattan DAC II」

背面端部

またアナログ段/デジタル段で独立した電源回路を設け、ノイズやクロストークを排除した。リファレンスグレードというプリ部も内蔵しており、プリアンプとしても利用できる。本機もアナログボリュームとデジタルボリュームの両方を搭載する。

本機のみオプションカードの取り付けによる機能拡張も可能。MM/MC対応のフォノプリアンプ機能を追加できる「PHONOアナログプリアンプカード」、RoonReady機能を追加できる「RoonReadyネットワークカード」が別売にて用意される。

「Manhattan DAC II」と「Brooklyn DAC」の共通の特徴として、ワードクロック入出力を搭載。複数台を“数珠繋ぎ”にしてのマルチチャンネル再生にも対応している。

また、今後取り扱い予定の製品として、同社初のDAC内蔵ポータブルヘッドホンアンプ「CLEF」、パワーアンプ「Brooklyn AMP」も披露された。いずれも価格や発売日は未定とのことだ。

「CLEF」

「Brooklyn AMP」


DSDフォーマットの策定にも関わったミーハウ氏

MYTEK Digitalのオーナーであり開発責任者であるミーハウ氏は、同社の歴史と製品開発の思想についても詳しく語ってくれた。

ミーハウ氏はポーランド出身で、ワルシャワの大学で電気工学と音響学を学んだ後に1989年に渡米。当時、ニューヨーク最大の録音スタジオだったというヒットファクトリーに就職した。アメリカのスタジオでは機器の整備やカスタマイズ、特注品の開発などを目的として専属の電気工学エンジニアを採用する慣習があり、ミーハウ氏もスタジオでこの役割を務めた。

ミーハウ氏は自身のバックボーンや開発思想について詳しく語ってくれた

その後、やはり著名な録音スタジオであるスカイラインに移籍。1990年からコンバーターの開発に着手。1992年にMYTEKを商標登録して、1993年にはA/Dコンバーターを最初の製品として発表、レコーディングエンジニアの間で高い評価を得た。

1995年にスカイラインスタジオが閉鎖された後に、同氏はMYTEKの事業に専念。業務用のD/Aコンバーター、A/Dコンバーターを多数開発した。また、DSDフォーマットの策定にあたっては、マスターレコーダーの試作機開発にも携わった。

業務用分野で高い評価と実績を重ねてきたMYTEKがコンシューマー用製品を最初に手がけたのは2011年。いちはやくDSD音源のUSB再生に対応した「Stereo 192-DSD DAC」は業務用モデルとして開発したが、これを「オーディオマニアに聴かせてみては」と提案されたのだという。実際、本機はオーディオマニアから賞賛を持って迎え入れられた。これを機に、MYTEKはコンシューマー機の開発も行うようになった。

業務用機器で培った技術と経験が実現する高忠実再生DAC

MYTEKのコンシューマー製品の設計思想について、ミーハウ氏は「アーティストやエンジニアは自身が手がけた音楽をどう聴いてほしいのか。これを踏まえてスタジオの音をコンシューマーに届けることを使命にしている」と語る。スタジオでレコーディングに携わった経験が長いミーハウ氏ならではの考え方だ。

その一方で、「高忠実再生と、エモーショナルや躍動感といった要素をどう表現するか。この2つをどのようにバランスさせていくかは常に悩ましい点だ」とも語る。これらを両立させるために、自身の経験に加えて、現在でもスタジオのエンジニアと交流を行い現場の意見を取り入れているという。

このように業務用分野で培った技術や経験を最大限に活かしているMYTEKだが、同社の業務用分野での評価を理解するには、かの有名なアビーロード・スタジオにManhattan DACとBrooklyn DACを複数台納入しているという事実が参考になるだろう。これらは録音を確認するためのプレイバックに用いられているのだという。

また、同社のコンシューマー向け製品開発における他社にはないプロセスとしてミーハウ氏が説明したのは以下のようなことだ。

D/Aコンバーターの音質をチェックする際、あるソース(例えばアナログテープ)をそのまま再生した音と、そのソースを自社製品でA/D変換→D/A変換した音を比較して、両者に差異が発生しないようにDACの音を作り込んでいくのだという。

高忠実なD/A変換を行うためには、A/D変換についての深い理解が必要となる。MYTEKはA/Dコンバーターを創業時から手がけているが、多くのオーディオブランドではA/Dコンバーターを手がけておらず、DAC開発においても上述のような検証を行うようなことは難しい。このようにミーハウ氏はMYTEKの優位性を説明した。

ミーハウ氏は同社の製品開発や自身のオーディオ思想について興味深いコメントを残した。ESS製DACを採用している点について、その理由のひとつとして「ESSでもAKMでも最終的にほぼ同じ音にすることは可能と言える。しかし、クロックの取り回しの仕方がESSとAKMで違っており、ESSの方がより少ない手間で理想の音を作れる。具体的には、ESS製DACはマスタークロックとDAIのクロックを別々に作れるので、多入力をまかなうためにはより設計がしやすい」と語っていた。

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