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公開日 2025/12/26 13:31
「映画制作を一気通貫で行える」

「日本映画がドルビーシネマの夜明けを迎える」TOHOスタジオにドルビーアトモス/ビジョン対応の制作スタジオが始動

編集部:筑井真奈

東宝は、東京・世田谷区成城にあるTOHOスタジオにて、ドルビーアトモス/ドルビービジョンに対応するポストプロダクションスタジオを新たに設立した。


プリプロダクションから撮影、オフライン編集、グレーディング、ダビング、パッケージ制作まで「映画制作を一気通貫で行える」環境を整え、トップクリエイターの利便性向上を狙ったスタジオとなっている。



TOHOスタジオがドルビーアトモス/ドルビービジョンに対応する制作スタジオを新たに設立


新たな設備を披露するため催された内覧会では、TOHOスタジオ代表取締役社長の島田 充氏が挨拶。多くのクリエイターから「TOHOスタジオにぜひドルビーアトモス/ビジョンを活用できるスタジオを作ってほしい」という声が寄せられていたが、自身はあまり積極的ではなかったと明かす。



TOHOスタジオ代表取締役社長の島田 充氏


しかし、コロナ禍やハリウッドのストライキといった映画制作をめぐる環境の変化が起こる中、ここ数年で日本映画から多くのメガヒット作品が誕生。「その一因はイマーシブでありラージフォーマットでの興行であった」と認識し、TOHOにもドルビーアトモス/ビジョンに対応した制作スタジオを設立するにいたったと説明する。


続けてDolby Laboratories日本法人社長である大沢幸弘氏は、ドルビーフォーマットにて制作した作品が映画業界を席巻していることに触れ、映画・配信・放送・ライブなどさまざまなスタイルで、「日本のコンテンツ産業全体に、世界でもっと商売ができるチャンスになる」「日本のコンテンツ産業が自動車産業と肩を並べる存在になってほしい」と期待を寄せる。



Dolby Laboratories日本法人社長である大沢幸弘氏


加えて、映画『相棒』を撮影中の俳優 水谷 豊氏から、東映の撮影スタジオにて特別に撮影された動画コメントが寄せられた。水谷氏は「日本映画がドルビーシネマの夜明けを迎えた」と賞賛するとともに、「これまでエンターテイメントの世界に携わってきたひとりとして、この先たくさんのドルビーシネマ作品が、TOHOスタジオから世界に向けて発信されることを希望します」とエールを送った。


 


ドルビーアトモス/ビジョン対応した設備で実際に作品を視聴


内覧会では、完成した映画をチェックする「試写室」と、映像が完成した後に、セリフや効果、音響などを最終的に仕上げる「ダビングステージ」の2箇所が披露された。


試写室では、山崎 貴監督の『ゴジラ -1.0』やジョセフ・コシンスキー監督の『F1/エフワン』など、ドルビーシネマで制作された映画作品のワンシーンを体験。『ゴジラ-1.0』における大戸島へのゴジラが上陸するシーンでは、ゴジラの咆哮や皮膚のディテールの細やかさなど、画音一体となって恐怖心を大いに掻き立てる。『F1』では、冒頭のデイトナでのレースシーン、車の疾走感や照明と暗がりの対比などを階調豊かに再現していることを確認できた。



TOHOスタジオの試写室は椅子も豪華で座り心地も素晴らしい




試写室に設けられた天井スピーカー


続けてダビングステージに移動。ダビングステージとは、映像が完成した後に、セリフや効果、音響などを最終的に仕上げる段階のことで、プロデューサーや作品関係者が作品を最終チェックをする重要な場所でもある。


ダビングステージが入っている「ポストプロダクションセンター」は2010年より稼働しており、ワーナーブラザーズ全面協力のもと、音響設計に関しても世界トップレベルのステージとなるべく作られたものとなっている。


今回ドルビーアトモス対応とするにあたり、ダビングステージとして「作った音がそのまま忠実にモニタリングできることを目指して作られている」ことはもちろん、他のスタジオとの差別化として、「クリティカルミキシングエリア」「クリティカルリスニングエリア」を他のスタジオよりも広めに確保。


また音響卓としてはニーヴの「DFC GeMiNi」とアビッドの「S6」をハイブリッドで配置。日本国内ではあまりない贅沢な音響システムが導入されている。 



ニーヴの「DFC GeMiNi」とAvid protoolsの「S6」をハイブリッドした音響卓を設置


ポスプロ担当の早川氏によると、S6は最近音の仕込みにProToolsが使われていることが多いため、効果音などをこの場で簡単に展開できることがメリットだという。


一方GeMiNiは長年TOHOのダビングステージで使われてきた実績のある音響卓で、制作関係者にも非常に評判が良く、さまざまなクライアントの要望に合わせたワークフローを組むことができるのが長所だそうだ。


サラウンド環境については、エレクトロボイスのスピーカーを左右の壁に9基ずつ、天井に9基を2列、背後の壁面に6基と、合計42基のスピーカーが設置される。またサラウンド用のサブウーファーを4基、スクリーンチャンネルは従来通りのLCRとして配置されている。天井にもスピーカーを設けることで、ドルビーアトモスだけでなくIMAXの12chに対応した音響作品制作も作ることができるようになった。



ダビングステージの壁面に設置されたエレクトロボイスのスピーカー


こちらでは、ドルビーアトモスで制作された作品の一部を体験。セリフの息遣いなど声優陣の演技の細やかさが耳に届き、地下道のシーンでは閉塞感がより肌に迫って感じられた。


『ゴジラ -1.0』は2023年の映画のため、当時まだTOHOスタジオにドルビーアトモスの環境が用意されていなかった。そのため、この部屋で5.1chと7.1chを作成し、別のスタジオでドルビーアトモスにアップコンバートされた作品となる。ゴジラが銀座を蹂躙するシーン、ビルの崩壊とそれに伴う音の大迫力は、やはり高さ方向の表現があってこそと改めて感じさせてくれる。


「良質な音の環境」を用意することで、より質の高い作品制作の制作づくりをサポートするTOHOスタジオ。このスタジオから今後誕生する映画作品、その音のクオリティにますます期待が高まる。


 

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