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公開日 2025/05/30 06:50
トゥルーダイヤモンド振動板、コート・ド・ジュネーブ仕上げ…込められたこだわりを紐解く

finalだからこそ辿り着いた“歪みなきサウンド”。新旗艦イヤホン「A10000」開発の道のりを細尾社長に訊く

野村ケンジ

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finalから、新しいフラッグシップ有線イヤホン「A10000」が登場する。


これまでのフラグシップ機「A8000」のサウンドを過去のものにする、という意気込みで作り上げられたというこの新モデルは、トゥルーダイヤモンド振動板やポリウレタン系エッジ、アルミ線ボイスコイルなど、画期的、かつ特徴的な技術が幾つも盛り込まれている。


そんな「A10000」についての詳細をfinal細尾 満社長に伺いつつ、そのサウンドをじっくりと聴かせてもらったのでご紹介しよう。


 



A10000:398,000円(税込)


 


無数の難所を乗り越えて、ついに実現した「トゥルーダイヤモンド振動板」


そもそも「A10000」は、これまでのフラグシップ有線イヤホン「A8000」と同時期に開発がスタートした製品なのだという。


「A10000の開発はおよそ6年前、A8000とほぼ同時期にスタートしました。しかしながら、当時は(製品のキモとなる)トゥルーダイヤモンド振動板の製作が難航していたこと、逆にベリリウム振動板を採用するA8000が完成にこぎ着けたことから、まずはA8000を先行して発売しました。


とはいえ、トゥルーダイヤモンド振動板の音質的メリットは充分に感じていましたから、A10000は引き続き開発を続けていました。ベリリウム振動板のために必須な素材が入手困難となり、A8000の製造が継続できず販売完了となるタイミングでA10000が完成したのは、とても幸運でした」(細尾社長)


 



final社長の細尾 満氏


 


A10000の開発が一気に進んだポイントは、やはり、トゥルーダイヤモンド振動板の製造に目処が見えたことだという。


「ダイヤモンドの振動板を作成するには、技術的な課題が幾つもありました。まず、平面ならともかく、振動板のようなドーム型を形成するのが非常に難しかった。そこで様々な方法を検討し、最終的にはシリコンの型のうえにダイヤモンド層を育成し、型を溶かして取り出したのち不要部分をカットすることで完成させることができました。そのためトゥルーダイヤモンド振動板は表面がザラつき、(型に密着していた)裏面がつるっとした状態になっています」(細尾社長)


様々な試行錯誤の結果、完成したトゥルーダイヤモンド振動板だが、そのほかにも多くの問題が山積していたそうだ。


 




右からダイヤモンド振動板の単品、エッジを装着したもの、ボイスコイルを装着したもの


 


「ご承知の通りダイヤモンドはとても硬い素材のため、割れやすく歩留まりが悪いという弱点があります。そのため、製造にはかなりの技術やノウハウが必要となりました。結果としては製品化できるレベルに到達できましたが、理想的とまではいいがたい状況です。そんな歩留まりの悪さをコストに反映させないために、さらに思考錯誤を繰り返すこととなりました。


いっぽうで、ダイヤモンドは比重が3.5以上と高く、厚みも30ミクロンあるため、(A8000の)ベリリウム振動板に比べるとどうしても重く、ローリングしやすい、という弱点がありました。そのため、エッジ部分はかなり硬い素材が必要となり、これまで使用してきたものでは理想的な動作が実現できませんでした。


そこで、大学系ベンチャー企業にも協力を仰いで様々な素材をテストし、2年間に及ぶ試行錯誤の結果、特殊ポリウレタンの採用で完成にこぎ着くことができました。ちなみに、ウレタン系素材は以前からスピーカー(のウーファーユニットのエッジ部)などに利用されてきましたが、劣化の早さが問題となっていました。A10000ではそういった弱点を克服した、劣化しにくく、軽量ながらも強度がある新しいポリウレタン素材を開発、採用しています。


また、接着剤を使うと音響的なロスが生まれるうえ、分量で個体差が発生しやすいので、圧空成形と熱成形の組み合わせによって接着剤を使わずに結合しています。これも試行錯誤のすえ、『D8000』用の振動板成形機を改造し、自社工場で作れるようにしました」(細尾社長)



もうひとつ、強いこだわりが盛り込まれているのがボイスコイルだ。A10000はイヤホンとしては珍しくボビンを採用、さらに、ボイスコイル素材にはアルミ合金を採用している。


「一般的に、イヤホン用ボイスコイルはボビンを使わず接着剤等で形成する手法が大半ですが、精度の高さや音質的なメリットを考えてボビンを使用、自社工場でボイスコイル部品も製作することにしました。


A10000にはかなり細いボイスコイル線を採用したかったため、CCAWであっても巻き付け時に折れてしまう可能性が高かったのです。そこで、今回は特殊なアルミ合金線を採用しています。イヤホンの設計では初めてとなるボビンにアルミ合金線を巻き付けるという手法を採用し、トゥルーダイヤモンド振動板の特長を生かし切る、理想的なボイスコイルに仕上げることができました。


データを取ったり試聴したりすると、我ながら画期的なボイスコイルを作り上げられたなと自負していますが……いかんせん高価すぎて、他社にオススメできないのが辛いところです(笑)」(細尾社長)


 



野村ケンジ氏


 


トゥルーダイヤモンド振動板の実力はいかに?

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