公開日 2017/07/10 11:11

ビクター復活の狼煙 ー「WiZMUSIC」徹底解剖! プレミアムなヘッドホンサービスの魅力に迫る

【特別企画】ユーザーごとに音場をカスタマイズする注目サービス

ドライバーユニットは新開発の40mm型で、一般的なPET素材の振動板を用いる。この取り付けにおいては、ビクターブランドとして発売されたかつてのハイエンド・ウッド・ヘッドホン「HP-DX1000」「HP-DX700」と同じ、モノコックハウジングへ直接ドライバーユニットを固定するダイレクトマウント方式を取り入れた。

北アメリカの水路の底に眠る14世紀の希少木材を引き上げたアクアティンバー材を使用。通常のメイプル材(右)よりも木目が詰まっていることなどが分かる

外装面では新開発の低反発イヤーパッドには経年劣化に強いウルトラスエードを採用したほか、ヘッドバンドの外側にはシープスキンを用いて品位の高い手触りを実現。ハンガーやスライダーには軽量かつ剛性の高いマグネシウム合金を取り入れている。そして本機のサウンドチューニングには国内屈指の録音スタジオ、ビクタースタジオが監修に当たっており、音質に対するこだわりを万全の態勢でサポートしている点も見逃せない。

装着感などを確認する岩井氏

EXOFIELD効果の確認の前にHA-WM90の素の音質を確認したのだが、アタックをしっかり再現し、音像の輪郭を丁寧に描き出すモニターヘッドホン譲りのリアルテイスト志向のサウンドであることを実感した。

低域にかけ、ウッドハウジングならではの弾力豊かな響きを持たせており、モニターヘッドホン調とはいえ、耳当たりの良い絶妙なバランスを持つ音作りがなされているようだ。

音場はナチュラルな広がりを持ち、音の繋がりもスムーズで、WiZMUSICの要となる空間再現性軸の素性も良い印象である。WiZMUSIC専用商品のため単売されないのがとても残念であるが、単体使用にも耐えうるサウンドクオリティの高さを誇るハイエンド機だ。

■密閉型ヘッドホンで聴いているとは思えない広がりよい空間が展開

ユーザーに向けた測定サービスの開始前にEX Roomで特別に測定・試聴をさせてもらったが、基本的なEX Room環境下でのサウンドはいかにもスタジオ的なニュートラル軸で押し出しよい方向性のもの。個人的には慣れ親しんだ環境に近いスタジオならではの傾向であるため、測定するためのスピーカーシステム・部屋としては申し分ない。

EXルームでのスピーカーからの音楽の鳴り方を確認

クラシック系の音源では管弦楽器の個々のパートの分離が良く、低域方向の制動性の高さも相まって、すっきりと爽やかに響く。ボーカルなどのセンター定位は極めてソリッドな傾向で、輪郭のエッジも的確だ。

このEX Roomでの測定を終えた後、HA-WM90にて実際にWiZMUSICで提供されるものと同じ条件での試聴を行ったが、EXOFIELD効果のON/OFFを切り替えてもらえるので、その違いを明確に実感できる。

EXOFIELDのオン/オフを切り替えながら同じ楽曲を試聴。その効果の大きさを確認できた

効果をONにすると一気に音場が前方に向かい、密閉型であるHA-WM90で聴いているとは思えない、上質なオープン型ヘッドホンのようなシームレスで広がりよい空間が展開。

視覚的に見えている前方のスピーカーから実際に音が出ている印象も実に新鮮で、目をつむっても、そして顔を横に向けたり、上や下に傾けてみてもそのスピーカー再生空間がついてくるような不思議な感覚である。奥行き感も深く、音の前後感もヘッドホンのみの音場では味わえないほど情報の再現度が高い。

HA-WM90単体で聴いた時に感じた低域方向の豊かな響きは影を潜め、スピーカー再生時と同じ、ダンピングの効いた締りの良いベースサウンドを聴かせてくれる。ボーカルの定位感も非常に明確で、センターにふわりと音離れ良く浮かび上がり、口元の動きもリアルに感じ取れた。ヘッドホンをつけているとは思えないほどの音ヌケの良さ、シャープでクリアなサウンドだ。

セシル・マクロリン・サルヴァント「ホワッツ・ザ・マター・ナウ?」の冒頭部を使ったデモでは効果OFF時、見事なほど一直線に頭内へ定位していたものが、効果をONにしたとたん、一気に前方、上方へ音が分離してゆく。ボーカルの輪郭はかっちりとして鮮度の良い描写で、センターへ立体的に浮かび上がる。

Lchから聴こえるピアノはスピーカーの後ろにまで下がったように自然な前後感を保った状態に定位。Rchのパーカッションもスピーカーの位置まですっと下がっていて、ナチュラルな空間が広がっている。

■最高水準の頭外定位音場再現技術であることを確信

どちらかといえば、これまでヘッドホンでの頭外定位再生には否定的なイメージを持っていたが、WiZMUSIC90で体感できるEXOFIELD技術によって、その概念は見事に覆された。

普段からスピーカー再生を楽しんでいるリスナーには当たり前の立体音場感も、一般的なヘッドホンで聴くと平面的で一直線に音像が定位する状態では実に味気ないものだ。

その点、セシル・マクロリン・サルヴァントの楽曲試聴で味わった、見事なまでの音像のほぐれ感、前方向へ音場が広がる感覚はとても新鮮であり、EXOFIELD技術はヘッドホンで聴いていることを忘れるほどのストレスのない解放感、音楽への没入感をより促進させてくれる。現在最高水準の頭外定位音場再現技術であることを確信した。

(特別企画 協力:JVCケンウッド)

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