公開日 2016/07/12 10:06

音楽制作から日常まで使える万能モニター系イヤホン。オーディオテクニカ“ATH-Eシリーズ”全モデルレビュー

ユニット構成含め異なる個性の違うサウンド

音楽性の豊かさを盛り込んだ、楽曲の芯に迫るサウンド

それではここからは各モデルのサウンドをチェックしていきたい。まずATH-E40は、同じ規模のドライバーを向い合せに設置してプッシュプル動作させることで相互変調を抑え、広帯域再生を実現したデュアルフェーズ・プッシュプルドライバーを搭載したことで、ダイナミック型ならではの密度感や素直なレンジ感に加え、立ち上がり・立下りの素早い音離れの良いサウンドを味わえる。

デュアルフェーズ・プッシュプルドライバーを搭載

ウッドベースをはじめとする低域は制動良く弾力を持った適度な切れ味を見せ、音場のクリアさが引き立つ。オーケストラの管弦楽器は爽やかに描かれ、きめ細やかで伸びやかな旋律が響き渡る。ホーンセクションはシャープだが、ピアノはローエンドまでゆったりと伸びて余韻も階調細かく表現。

ボーカルはボディが締まり良く口元のフォーカスを鮮明に描き、クールな艶を感じさせる。高域にかけては多少ブライトな煌めき感を持っているようだが、比較的素直で流麗なサウンドだ。色付け感は少なく、ニュートラルな方向性を持たせつつリスニングにも適した耳当たり良い傾向の音色と言えるだろう。

続いてミドルクラスに位置するATH-E50は、シングルBA型らしいナチュラルで自然な潤い感のあるサウンド傾向で、レンジ感も無理なく素直に伸びている印象である。低域方向のダンピングも高く、分離良く引き締まった音像が展開。管弦楽器はしなやかなハリを見せ、潤い良く柔らかい質感で描かれる。

シングルBA型らしいナチュラルでモニターに最適なサウンド性

中域成分の出方も自然であり、ボーカルもボディ感も程よい厚みを持つ。口元はソリッドな細身の描写となるが、輪郭感は誇張なく素直な浮き立ちできつさはない。ピアノは比較的ブライトでアタックのキレを際立たせる傾向。解像感高く音場の奥行き感も適度に表現する、ナチュラル指向でバランス感覚の優れた、まさにモニターに最適なサウンド性といえる。かといってカリカリとした硬い傾向でもないので、普段使いとしても重宝するだろう。

最後はトップモデルのATH-E70だ。BA型ならではの解像度の高さと分離の良さを追求しつつ、音像の密度感はATH-E50よりも増していて、レンジ感の拡張も含めよりパワーアップさせた傾向である。

ATH-E50よりも密度感が増して、リッチな音を再現

管弦楽器の旋律は分離良く艶やかなタッチで描かれ、ローエンドは締まり良く腰高なハーモニーが展開。ボーカルもハスキーな倍音のエッジ感が立ち、明瞭な描写となる。アタック&リリースの表現も高く、音場はクリアでステージの定位や空気感もダイレクトに反映。中高域にかけては煌びやかな響きが感じられるものの、全体的に厚み良く自然な音像描写に結びついていて、安定感と張り出しの良さを両立したリッチなサウンドといえる。

ロックのリズム隊は厚みとキレをバランス良く整え、朗らかなビートを刻む。ホーンセクションの密度も高く、爽やかな余韻を聴かせてくれる。アタックは多少エッジが立つもののヌケ良くカラッとしたタッチで倍音を表現する。

女性ボーカルはクールかつスマートな描写でハリ良く快活なイメージを与える。サウンド性としては昨今のアクティブモニターのような中高域の張り出しの良さ、中低域の締まり良い密度感を持たせた傾向で、リアルさとは違うベクトルではあるものの、オールレンジで分離良いここの音を際立たせるモニターとしての方向性を実感することができた。

  ◇  ◇  


一口にモニターと言っても目指すサウンドに多様性があるように、オーディオテクニカのATH-Eシリーズもただ個々の音をきっちりトレースするのではなく、グルーヴの粘りや華やかな倍音成分を程よく乗せて音楽性の豊かさを盛り込んだリスニングの要素も兼ね備えたものとしている。“モニター用だから”と敬遠するには惜しい、楽曲の芯に迫る骨のあるサウンドをぜひ体感していただきたい。



■試聴音源
【クラシック】
・イ・ソリスティ・ディ・ペルージャ『ヴィヴァルディ:四季』〜春(HQM:192kHz/24bit)
・飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ コンサート2013『プロコフィエフ:古典交響曲』〜第一楽章(e-onkyo:96kHz/24bit)
・レヴァイン指揮/シカゴ交響楽団『惑星』〜木星(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)

【ジャズ】
・『Pure2-Ultimate Cool Japan Jazz-』〜届かない恋(OTOTOY:2.8MHz・DSD)
・オスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』〜ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)

【ロック&ポップス】
・デイヴ・メニケッティ『メニケッティ』〜メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)
・長谷川友二『音展2009・ライブレコーディング』〜レディ・マドンナ(筆者自身による2.8MHz・DSD録音)
・Suara『DSDライブセッション』〜桜(OTOTOY:2.8MHz・DSD)

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