究極のネットオーディオ再生を。“求道者”のためのLANケーブル、AIM「SILVER STREAM【NAX】」を聴く
本年度の「オーディオアクセサリー銘機賞2026」にてひときわ話題を呼んだモデルが、エイム電子から発売された最高峰のLANケーブル「SILVER STREAM【NAX】」であった。審査委員諸氏からの非常に強い推薦により、見事に最高栄誉“グランプリ”の受賞を果たした。
パルシャットMUをはじめとした4層シールド構造や導電性機能材を配合した専用開発のインナーシース、最大クラスのOFC+国産純銀コーティング単線導体、空気絶縁に限りなく近い発泡絶縁体、アシンメトリー構造のドレインワイヤー配置などLANケーブルとしては前例のない規模の技術が搭載されている。
その音質やいかに? 審査員でもあり同ケーブルのグランプリ受賞を強く推奨した生形三郎氏をはじめ、炭山アキラ氏と大橋伸太郎氏も含めた3氏がその魅力をたっぷりとレポートする。
産業用の確かな技術と信頼 ケーブル開発の専門家集団
(執筆:生形三郎)
エイム電子は、1983年に情報通信分野での伝送ケーブル製造を起点にスタートした、40年以上もの歴史を誇る国産ケーブルブランドだ。
産業用ケーブルで培った確かな技術力や信頼性を活かし、コンシューマー領域まで製品を拡大。
ケーブル外部はもちろん、ケーブル内部からのノイズ干渉を抑える徹底したノイズシールド技術を基に、高品質なHDMIケーブルやUSBケーブル、そしてLANケーブルなど各種デジタルケーブルからアクセサリー開発までを包括的に手掛けるスペシャリストなのである。
この度登場したLANケーブル「NAX」は、同社のフラグシップとなるモデル。新たに開発した「高純度無酸素銅(OFC)+国産純銀コーティング」による専用導体を採用することが最大の特徴だ。
従来のフラグシップモデルの導体はOFCであったので、純銀コーティングはシリーズでも初採用となる。また、この導体はAWG22というLANケーブルとしては異例なほど大規模なサイズで使用されている。
4層シールドやエアー絶縁 グランドループ対策も万全
コネクタには、360度シールド構造で電気干渉を受けにくいダイキャストで成型されたテレガートナー製コネクタを用いるとともに、ケーブル構造もこれまでのフラグシップにも採用の徹底したシールド構造「Hoplon」を踏襲。
ツイステッドペアの2本のケーブルそれぞれが、旭化成が開発した高機能不織布を基材とした非磁性体ノイズ抑制材「パルシャット」層と高周波帯域のシールド特性に優れるアルミシールド層で守られ、さらに4組のケーブル全体を、オーディオ帯域のシールド特性に優れる銅シールド層、優れた低周波帯特性を持つ高密度銅編組シールド層によって包むことで、信号線を強固にガードしている。
また、導体一本一本は、比誘電率と誘電正接の値が低く最も理想的な絶縁体である「空気」による絶縁状態に限りなく近づけるべく、独自開発の発泡絶縁体「Air 2」で絶縁されるという、まさに入念の限りを尽くしたケーブル構造となっている。
なお、両端コネクターのドレインワイヤーを非対称構造(接地と未接地)とするアシンメトリー設計が実装されることによってグランドループが回避されている点も見逃せないポイントだ。
AIM「SILVER STREAM【NAX】」を試聴
圧倒的な静けさに驚愕 音楽が生き生きと蘇る
ケーブルを試聴してみて、ノイズフロアの低さに驚嘆した。圧倒的な静けさによって、音楽ソース内の情報が鮮やかに浮かび上がったからだ。
音楽の背景にある、意識的な知覚の難しいごく軽微なノイズ成分が取り除かれることによって、驚くほどの鮮明さを獲得している。ストリーミング再生にありがちな薄膜で覆われたかのような不鮮明さが払拭され、音楽が生き生きと蘇ってくるのだ。
ケーブルの構造だけ見ると、その厳重さゆえ、音楽がどこかかしこまったり、縮こまったりするような再生をイメージするかもしれない。徹底的なノイズシールドを施す場合に陥りがちな罠であるが、そういった緊張や収縮は一切感じられない。
また、ケーブルによっては音色バランスにキャラクターが付与される場合もある。しかしながら本ケーブルは、そのような脚色は一切なく、実にフラットな聴感をもたらす。
その上で、純銀コーティングによる巧妙なチューニングによるものなのか、中高音域に程よいプレゼンスが載り、それが先述した鮮明さを引き立てているものと推察した。
そしてそれこそが、厳重なシールドで得たクリアネスから生じてしまいがちな無味乾燥さを回避する絶妙なバランスを形成しているのではないかと筆者は感じた。
機器や音楽ソースの魅力を最大限に引き出すケーブル
上記の特徴ゆえにこのNAXは、まさにトランスペアレントな伝送に徹した究極のケーブルであると感じる。よって、ケーブルによる個性を付与するというよりも、コンポーネントの魅力、そして、音楽ソースの魅力を脚色なく引き出すケーブルだと認識する。
オーディオシステムがトランスペアレントであればあるほど、この能力が最大限に発揮されるのではないかと筆者は考える。
ロスレスストリーミングが一般化した現在、ネットワーク環境を整えるアクセサリーも急増している。オーディオ用ネットワークハブや各種アイソレーターなど、それらは良質なネットワーク再生を得るために重要なアクセサリーである。
しかしながら、良質なLANケーブルによる伝送もまた、極めて重要な基本要素であると、NAXの試聴を通して改めて体感した次第だ。
AIM電子のフラグシップLANケーブルNAXは、ネットワークオーディオに究極を求めるユーザーにうってつけのLANケーブルなのである。
2人の評論家が語る「NAX」の魅力
驚くほど広大な音場空間 雑味が洗い流されるようだ(大橋伸太郎)
LINNのネットワークプレーヤーAKURATE DS/Kとルーター間、NASとルーター間をそれぞれシルバーストリームNAX(5m)を接続して試聴する。
ダイカスト製のモジュラーコネクター(8P8C)は精密感があり、従来の汎用LANから一線を画している。接続時の嵌合にも確かな手応えが伝わる。
ハーフグロス黒の本体はAWG22サイズ。4層シールド構造を採用し堅牢で、取り回しには一定の注意が必要。アシンメトリー設計を採用。両端のコネクターのドレインワイヤーが非対称(接地と未接地)でコネクター近傍本体裏側に方向性が明示されている。
驚くほど広大な音場空間が広がる。清澄に澄み渡り、窮屈さや空間の歪みがみじんも感じられない。
パルシャットMUを採用し外来電磁波の干渉、電源から流れ込むノイズを遮断し、さらに内部から発生する電磁波も吸収する。
楽音がのびやかで、洗い流されたように雑味がない。いままでのLANケーブルがいかに各種ノイズの生む付帯雑音の汚れを纏わりつかせていたかが実感される。
ノイズシェープされた結果、分解能が上がり楽音が立ち上がる発声の瞬間を捉えるミクロレベルの表現が見事というほかない。
音の階調数が増えた感があり、楽音がしなやかで突っ張ったところがない。ピアノ等の楽音が自然なうねりを感じさせてなだらかに減衰していく描写も自然でアナログ的である。
デジタルでも伝送経路がいかに音質を左右するか知らしめる製品。安価ではないがシステムの品位を底上げする価値ある投資といえるだろう。
重要性への認識が評論家側審査員に共有され、「オーディオアクセサリー銘機賞2026」にて最高峰のグランプリを受賞した。
レファレンス的な魅力を備えた極めて器の大きなケーブル(炭山アキラ)
このケーブルは両端へかけて極めて広いレンジでの再現性を引き出し、強調感がどこにもない。帯域バランスも無類に良いし、ノイズフロアも低い。
本来の意味でモニター的、レファレンス的な持ち味を持つ、極めて器の大きなケーブルなのである。
自らのシステムの内面を映し出す鏡を思わせる、ある種の恐ろしさがあるケーブルだが、これを導入なさって音楽の魂が噴き出すように部屋を満たしたなら、それはあなたが手塩にかけてこられた装置がとてもよく煮詰まっていると考えてよいだろう。
上級者向けのとても頼りになるケーブルである。
製品情報・スペック
LANケーブル:AIM SILVER STREAM【NAX】
- コネクター:8P8C モジュラーコネクター(通称RJ45タイプ)
- コネクターサイズ:13.9W×53.8H×16.3Dmm
- コネクター構造:360度シールド構造、電気干渉を受けにくいダイキャスト製
- 規格:ANSI/TIA/EIA-568-BおよびIEC 60603-7-5に準拠
- ケーブル外径:10Φ(mm)
- ケーブルカラー:ブラック
- 導体サイズ:単線AWG22
- 導体数:ツイステッドペア×4(8本)
- 導体素材:OFC(高純度無酸素銅)+純銀コーティング
- 導体被覆:専用開発 発泡ポリエチレン絶縁体
- ドレインワイヤー:アシンメトリー構造
- 価格:0.5m=198,000円/1m=220,000円/1.5m=242,000円/2m=264,000円/ 3m=308,000円(ともに税込)
取り扱い:エイム電子(株)
〒252-0327 神奈川県相模原市南区磯部1353
TEL:046-253-4902
※本記事は『季刊・オーディオアクセサリー 199号』からの転載です。
