JBL、80年の技術を結集した最高峰「Summit Everest」を日本初披露。関係者が明かす高音質化のこだわり
JBLは、恵比寿のブルーノートプレースにて新たなフラグシップスピーカー「Summit Everest(サミット・エベレスト)」の日本初披露イベントを開催した。
2026年に創立80周年を迎えたJBL。その長い歴史のなかでも「Everest」の名は、同社が持つ技術を惜しみなく投入する最高峰スピーカーに与えられてきた特別なものだ。今回登場したSummit Everestは、その系譜を受け継ぎながら、新世代「Summit Series」の頂点に立つモデルとして開発された。
イベントではJBLの歴代フラグシップの歩みとともに、Summit Everestに投入されたドライバー、ネットワーク、エンクロージャーなどの技術が詳しく紹介された。
「コストに制約されず、JBLが持つ最高の技術を投入する」
冒頭では、JBLのブランドエバンジェリスト、藤田裕人氏が登壇。JBLの80周年を振り返りつつ、新しいフラグシップの誕生について説明を行った。
JBLには、その時代に同社が持つ最高の技術とイノベーションを投入し、最高峰のスピーカーを生み出す「Project」モデルの歴史がある。開発においてはコストなどの制約に縛られることなく、「JBLが作り得る最高の製品」を目指してきたという。
その歴史を振り返ると、JBL創業者ジェームス・B・ランシングの思想にまで遡る。
ランシングはプロフェッショナル用スピーカーの世界で培った技術を、家具のように美しいキャビネットへ収め、家庭で楽しめるスピーカーを作るという夢を抱いていたとされる。1946年10月1日に創業したLansing Sound, Inc.が現在のJBLの出発点となった。
その象徴となったのが、歴代の「Project」モデルである。1954年の初代Projectモデルに始まり、ステレオ再生を追求した「Paragon」、そしてスタジオモニターの“4300シリーズ”など、JBLは時代ごとに新たな技術へ挑戦。1985年には、世界最高のスピーカーを目標に掲げた「Project Everest DD55000」が登場した。
ランシングの死後、JBLは1人の天才に製品開発を委ねるのではなく、それぞれの分野のスペシャリストを集め、チームとして最高峰のスピーカーを開発する体制を構築する。
さらに1989年には初代「Project K2」が誕生。2001年には第2世代K2「S9800」、2006年には第2世代Everest「DD66000」、そして2012年には「DD67000」が登場するなど、EverestとK2は長年にわたりJBLの最高峰を担ってきた。
新世代「Summit Series」の頂点に立つEverest
そしてJBLが新たに立ち上げたのが「Project Summit」だ。
Summit Seriesでは、それぞれのカテゴリーにおける最高峰を目指して製品を開発。先行する3モデルに続き、2026年には15インチウーファーを搭載する「Summit K2」が発表され、さらにシリーズ最大のモデルとしてSummit Everestが加わった。
Summit Everestは、38cm(15インチ)ウーファーを2基搭載する堂々たる構成を採用する。
興味深いのは、Summit K2とEverestのキャラクターを、開発側が明確に区別していることだ。
K2が「Neutral & Accurate Flagship」、つまりニュートラルかつ高精細な方向を目指すのに対し、Everestは「Emotional & Natural Flagship」と位置づけられている。
単に物理特性を極限まで追求するだけではなく、音楽が持つ感情や自然さまで伝えること。それが新しいEverestの目指す方向だという。
D2コンプレッションドライバーを「3基」投入
Summit Everestを象徴する技術のひとつが、高域を受け持つD2コンプレッションドライバーだ。
D2は、リング状のTeonex製ダイアフラムを用いた2つのコンプレッションドライバーを向かい合わせるように配置して一体化した、JBL独自の構造を採用する。
それぞれのダイアフラムの振幅量を抑えることで、振幅に伴う歪みを低減しながら、高い出力能力を確保できることが特徴となる。
しかもSummit Everestでは、このD2ドライバーを3基搭載する。3基のD2を「3-into-1 Manifold」によって結合し、ひとつのHDIホーンへ接続。3つのドライバーの出力を理想的に統合することで、ホーン側から見れば、あたかもひとつのドライバーが動作しているかのような振る舞いを実現したという。
これにより非常に高い出力能力を確保しながら、歪みを抑えた自然な高域再生を狙っている。
38cmウーファー×2。新設計「Differential Drive」を投入
Everestのもうひとつの象徴が、JBL伝統の38cmウーファーである。
Summit Everestでは、新開発の38cmウーファー「JW380SC」を2基搭載。駆動系にはJBLが近年採用している「Differential Drive」構造を用いる。
ひとつの振動系に対して2つのボイスコイルを使用する方式で、JW380SCでは大型の4インチ・ボイスコイルを2基搭載する。
磁気回路も特徴的だ。ネオジムマグネットをボイスコイルの内側だけでなく外側にも複数配置し、大型ボイスコイルを挟み込むような強力な磁気回路を構成。さらに大型モーターを挟むように2つのダンパーを離して配置する「デュアルダンパー」構造を採用した。
これにより振動板の正確なピストンモーションを追求し、従来の38cmウーファー以上に歪みを抑えることが開発上の大きなテーマとなっている。
25cmミッドバスも2基。左右で動作帯域を変える
Summit Everestでは、38cmウーファーと高域ホーンの間をつなぐミッドバスも重要な役割を担う。
採用されたのは25cm(10インチ)の「JM250SC」で、こちらもDifferential Drive構造を採用。3インチの大型ボイスコイルを2基備えるほか、デュアル・ネオジムマグネット、デュアルダンパーなど、強力な駆動系が与えられている。
Summit Everestではこの25cmミッドバスを2基搭載するが、両者はまったく同じ帯域を再生するわけではない。
ステレオ設置時に内側となるユニットをメイン・ミッドバスとして高域ホーンにつなげる一方、外側のミッドバスはより低い周波数で帯域を制限する構成としている。
強力な高域システムと38cmウーファー×2に負けない中域のエネルギーを確保しながら、高域とのつながりを担う部分についてはひとつのユニットへ集約することで、システムとしての一体感を追求した設計だ。
巨大なネットワーク基板を4枚搭載
ネットワークにもSummit Seriesならではの物量が投入された。
Summit Everestの内部には大型ネットワーク基板を4枚搭載。Summit K2の5枚より枚数そのものは少ないものの、Everestでは大型キャビネットのスペースを活かして1枚あたりの基板を大型化しており、総面積ではK2を上回るという。
さらにSummit Series共通の「Multi-Cap」方式を採用する。必要な容量をひとつの大型コンデンサーで賄うのではなく、小容量のコンデンサーを複数並列接続する方式で、歪みや損失、部品間のばらつきなどを抑制。ネットワークを含めてロスと歪みを可能な限り小さくするという思想が貫かれている。
巨大なユニットを受け止める独自のキャビネット
Summit Everestでは、巨大なユニット群を支えるキャビネットも専用設計となった。
従来のSummit Seriesと同じ構造をそのまま大型化するのではなく、特に横幅が大きくなるEverestでは、バッフルそのものの剛性を高めるというアプローチを採用。
特徴的な山型の形状とともに部材を積層し、内側に向かうほど厚みを増す構造とすることで、強力な38cmウーファーと25cmミッドバスを支える高剛性なバッフルを形成している。
足元にはSummit Series共通のIsoAcoustics製アイソレーションフィートを採用し、床面へ伝わる振動についても配慮した。
個々の物量ではなく「ひとつのスピーカーとしての一体感」
Summit Everestは、3基のD2コンプレッションドライバー、2基の25cmミッドバス、そして2基の38cmウーファーという、文字通りJBLの最高峰にふさわしい物量を投入したスピーカーだ。
しかし発表会で繰り返し強調されたのは、個々のユニットの能力そのものではなく、それらを「ひとつのシステム」として成立させることだった。
一見すると非常に大掛かりな構成でありながら、ドライバー間のつながりを整え、ひとつのスピーカーとしての一体感を実現する。その先に、Summit Everestが掲げる「Emotional & Natural Flagship」というサウンドがある。
1950年代から続くProjectモデル、1985年に始まったEverest、そしてK2へと受け継がれてきたJBLのフラグシップ開発。その80年に及ぶ技術の蓄積を、現代の技術で再構築したSummit Everestは、まさしく現在のJBLが考える「家庭用スピーカーの最高峰」を具現化するモデルと言えそうだ。

























