今年もAV Kansai圧勝!パイオニアのCSTドライバーも注目の「第10回ハイエンドカーオーディオコンテスト」レポート【前編】
10回目となるカーオーディオの全国大会、ハイエンドカーオーディオコンテスト(以下ハイコン)が、石川県小松市のこまつドームにて9月6日(土)と7日(日)に開催された。
昨年まで静岡県のつま恋リゾート彩の郷で開催されていたハイコンだが、今年は場所をこまつドームに移した。2015年の第1回開催場所に戻ってきたことになるが、例年9月の静岡エリアは台風の通り道、強い雨風の影響で開催が危ぶまれることもあった。天候の心配をしなくてよいこまつドームはその点安心である。
今年も2day開催で、初日はディーラーデモカークラス(入賞:1〜10位)と、ユーザーが参加できるチャレンジクラス(入賞:1〜10位)の2つ。2日目はユーザーカー部門 ハイレゾ・エキスパートクラスで、価格帯別に「A/B/C」と3コースが用意される。
ディーラーデモカークラスの審査員は小原由夫氏、山之内 正氏、秋山 真氏、土方久明氏。チャレンジコースは岩井 喬氏と峯岸良行氏。昨年からの続投となり、他のカーオーディオコンテストでも審査員として活躍する信頼厚いメンバーである。
今年の目玉は、なんといってもパイオニアから発売された車載用スピーカー「TS-Z1GR」および「TS-HX1GR」(以下GR)であろう。パイオニアの高級オーディオブランドとしてスタートし、現在も世界に誇るジャパニーズ・ハイエンドとして名を馳せるTADと共通の技術を採用。TADでも活用される同軸構成のCSTドライバーには、蒸着ベリリウムによるトゥイーターを採用。TS-HX1GRはCSTドライバー(+ネットワーク)の2ウェイ、TS-Z1GRはさらにウーファーも追加した3ウェイモデルである。
各地のコンテストに参加しているパイオニアの営業スタッフにGRの反響を尋ねると、「おかげさまで大好評です」とニコニコの様子。今回のハイコンでも、ディーラーデモカークラスに参加する36台のうち、12台にGRが取り付けられており、「パイオニアTS-Z1GRクラス」として独立して表彰される。全国各地の専門店がどのような音作りを仕上げてくるかは今回のコンテストの大きな目玉となっている。
記者も過去8年ほどカーオーディオコンテストを取材してきているが、ある特定のスピーカーについて、複数の車で聴き比べられる機会というのはなかなかない。もちろんBLAMの10周年記念ユニットや、morelのSUPREMOといった「ヒットモデル」は存在し、その音の違いを体験できることもある。だが、ここまで「ヨーイドン」で各店舗が作った音を聴き比べができることは珍しい。
今年のディーラー部門の課題曲は、ウィリアムス浩子の「Rainy Days And Mondays」と、ベートーヴェンの「交響曲第5番「運命」第4楽章」(ネッロ・サンティ&NHK交響楽団)。浩子さんの楽曲はボーカルの定位感やブラシの細やかさ、ベースの質感、クラシック楽曲についてはステレオイメージの再現力やリズム、楽器の厚みなどが大きなポイントとなるだろう。
ちなみにチャレンジコースは、クラシックの課題曲1曲(スメタナの交響詩「ワレンシュタインの陣営」)と、自分の好きな曲1曲にて審査してもらえるコースとなる。
今回のコンテストにも「基準車」としてトヨタのGR86が用意された。TS-Z1GRは過去のパイオニア取材で聴いたことがあるが、この日の試聴でも、ユニットとしての素性を「丁寧にしあげている」ということを改めて感じさせてくれた。解像度や位相バランスの良さがありながら、ひとつひとつの音にメリハリのある、仕上がりのあらためて感じられた。
例えば青森県・イングラフはのAMG「C43」にGRを装備。GR86とはまた違った、高解像度かつハイスピードでハートのど真ん中を撃ち抜かれるような爽快感。インストールを担当した木村さんも、「最初はピーキーな音になってなかなか苦労したのですが、なんとかまとめ上げることができました」と満足げ。

一方で鳥取県のジパングのハリアーでは、楽器の位置関係がよく見える、俯瞰的で広いステージング感が大きな魅力。またクラシックでの休符の瞬間、その無音の深みにもハッと息を呑む。GRは、作り手の考える「いい音」を明晰に引き出してくることがわかって非常に面白い。
AV Kansai天王寺店は、メルセデスの「Cクラス」をGRデモカーとして出場。出色はやはりウィリアムスさんの声で、S/Nがよく付帯音がないとここまでナチュラルで情感豊かな再生ができるのか!と驚く。クラシック楽曲における三次元的な奥行き感や、なめらかなクレッシェンドも心地よい。
複数台聴いてみると、GRに共通する特性もみえてくる。中高域の独特な底光りする艶感も感じられて、「作り手の思いがしっかり音に出る」ユニットである、ということが伝わってくる。多くのインストーラーから、「位相特性が良いので使いやすい」という声も聞こえる。
ほかにも、岩手県のサウンドフリークスやカーオーディオクラブなどもGRデモカーを出展。全部を聴くことは叶わなかったが、それぞれのショップならではの「高音質」の提案がなされていることは非常に興味深かった。すでにユーザーの手元にも渡っているそうで、今後のコンテストにはユーザーカーも登場してくるだろう。ハイエンドのカーオーディオ市場を活性化に期待である。
そのほか注目の車両ピックアップしよう。茨城県のサウンドウェーブはアウディのデモカーを出展。メインスピーカーはモレルに、ETANIのDSPを活用するという組み合わせ。ウィリアムス浩子さんの英語のアクセントの滑らかさはひとつの聴きどころだが、とろけるような声の旨みをしっかり引き出してくる。パイオニアとはまた違った包み込まれるような柔らかさに感動。
昨年のハイコンにおけるディーラー部門で優勝を飾ったAV Kansaiは、他に2台の車を出展。BMWにはクワトロリゴを、アウディにはグラウンドゼロのスピーカーを装備。昨年のハイコンでもディーラー部門で優勝を飾っただけに、今年も連覇を狙って音を仕上げてくる。
メタリック・グリーンの仕上げが目を引くBMWでは、解像感の高さと絹のような手触り感を感じさせてくれる。浩子さんの声はより艶やかに温かく、バックミュージシャンの前にスッと立つ姿が目に浮かぶよう。耳元で歌ってくれているような親密さに耳が幸福に満たされる。
夕方からは、ディーラーデモカーコースとチャレンジコースの表彰式が行われた。今年も特にトップグレードは大激戦を繰り広げたようだが、昨年に続きAV Kansaiが2連覇を達成、さらに1位と2位を独占した。続いてカーオーディオクラブ(大阪)、サウンドエスパス(茨城)、カーオーディオクラブと実力ショップが追う。
パイオニアのTS-Z1GRクラスでは、こちらもAV Kansaiが優勝、カーオーディオクラブ、イングラフ(青森)、サウンドフリークス(岩手)、ジパング(鳥取)と続く。チャレンジコースの上位入賞者もAV Kansaiが独占し、今年も圧倒的な強さを見せつけた。
お楽しみのウィリアムス浩子さんのコンサートも。ギタリスト・北脇久士さんとのデュオというシンプルな編成で、今回の課題曲である「Rainy Days And Mondays」を含めた2ステージを披露。浩子さんのまろやかな歌声、カバー曲も自分のものとして歌いこなす歌唱力は生で聴くとさらにしっとり染み渡る。ギタリストのアレンジも見事で、シンプルだが弾き手が楽しみながら音を紡ぎ出しているさまはとても幸せな気持ちになる。良い生音の体験は、またひとつコンテストに向けた気持ちを高めてくれる。
ユーザーカーがメインとなる2日目の「ハイレゾエキスパートコース」については後日改めてレポートをお届けしよう。






























