小林涼子も音質に大興奮。クルマの中が映画館に、ドルビーアトモスがもたらす未来のエンタメ体験
電動化や自動化など、100年に一度の改変期を迎えているといわれる自動車業界。それは車内エンターテインメントの分野にも波及しつつある。
ドルビーラボラトリーズが11月6日、ジャパンモビリティショー2025にて行った「モビリティ×エンタメ―Dolbyが提案する新たな価値」と題したトークステージイベントで、近未来の車内エンターテイメントの全容が見えてきたのでご紹介しよう。
車内エンタメの新しい可能性を提案
イベントは2部構成。まずはドルビーラボラトリーズ 日本法人社長 兼 東南アジア・大洋州統轄の大沢幸弘氏がドルビーの歴史と共に、「エンターテインメントの世界でも30年ぶりの技術革新が起きています」と、ドルビーアトモス、ドルビービジョンの解説を始めた。
「ドルビービジョンは、従来(SDR)よりも広い範囲の明るさを表現できます。それゆえ暗いシーンの奥行きや、明るいシーンのまぶしさをより自然に再現できます。今や多くの方が、その映像を目にされているでしょう」
一方のドルビーアトモスは、音声に関する技術となる。「ドルビーアトモスは、それまでチャンネルごとに音声を収録していたものを、オブジェクトベースによって音を位置情報と共に記録できます。これまでは水平方向に囲まれるサラウンドでしたが、立体的で3次元的、空間をありのままに表現できます」と、5.1チャンネルなど従来のサラウンド再生とは異なる技術であると紹介。
さらにドルビーの強みとして、制作現場から再生まで一貫したエコシステムが構築できているとアピールした。
制作の現場では、ビルボードのトップ100のうち、92%のアーティストがドルビーアトモスを採用しているのこと。「残り8人のアーティストはどなたなのでしょうか」というと、会場から笑い声が漏れた。
そして、NETFLIXやAmazon Primeをはじめとして、数多くの配信会社がドルビービジョン、ドルビーアトモスを用いたコンテンツを配信しているという。「コンテンツにドルビーアトモスやドルビービジョンのロゴが入っていると思います。それを参考にご体験頂ければと思います」と大沢氏は語る。
大沢氏は続けて「欧米、そして中国の自動車メーカーは続々とドルビーアトモスを採用しています。これは自動車を『第2の家、第2の部屋』として、より快適な車内空間の創出を考えているためです」と、アッパーモデル(ラグジュアリーモデル)をメインに採用実績を重ねていると紹介した。
そのいっぽうで「日本の自動車メーカーでドルビーアトモスを採用しているのは3社のみです」と少し残念そうな顔をみせた。しかもマツダは中国向け、スズキはインド向けの車両に搭載しており、ソニー・ホンダモビリティは車両そのものが2026年の発売。よって国産メーカーの国内向け車種でドルビーアトモスを採用している車種は2025年11月現在で存在しないことになる。
「ドルビーは世界中のクルマに良質のエンターテインメント体験を提供し、走らない時にクルマに新しい価値を提案し、皆さまに喜んで頂きたいと思っています」と締め括った。
車を「第2の家」として使うライフスタイル
その後、俳優の小林涼子氏の司会のもと、自動車ジャーナリストの佐藤耕一氏による海外の車内エンターテインメント事情についてのトークセッションが行われた。
佐藤氏は「中国では電動車が新車販売の半分を占めており、車を第2の家として使うライフスタイルが浸透しています。夫婦喧嘩をした際、夫がクルマに逃げ込みんで映画を観るなどで時間をつぶし、ほとぼりが冷めた頃に戻って離婚を回避した、という話もあるほどです」と笑いながら海外事情を紹介。EVの大容量バッテリーを活かして、車内を快適に過ごす文化が拡がっているという。
俳優の小林涼子氏は、「作品を作る側としても、車の中でここまで豊かな映像と音に触れられる時代が来たのは本当に嬉しい」と共感を寄せ、実際に体験してみた時の様子を興奮気味に告白。その上で「俳優は待つのが仕事とも言われる職業です。その時にクルマの中で映画などが楽しめたら嬉しいですね」と笑顔をみせた。
その上で大沢氏は「車の中でも、映画館のような没入感を。目的地に着いても “音楽が終わるまで降りたくない” と思えるような体験を届けたい」「日本の自動車産業は走りで世界をリードしてきた。これからは “体験” で世界を驚かせる番。エンターテインメントの価値をクルマに融合させ、日本発のモビリティ文化を次の世代に届けたい」と抱負を述べた。
上下方向の音の移動が印象的
では、ドルビーアトモスによる車内空間はいかなるものだろうか。会場ではメルセデス・ベンツの「GLS580」によるデモンストレーションを体験することができた。
メルセデス・ベンツは今秋から他メーカーに先駆けて、ドルビーアトモスが愉しめるサービスをローンチしている。ただし条件としてはブルメスター 3D(または4D)サウンドシステム搭載車であることと、配信サービスとしてApple Musicを利用した時のみに限られる。
さまざまなデモンストレーションソースで試したところ、その音響効果は驚くべきものがあった。一言で言えばクルマの中が映画館になったかのようだ。音の移動もスムーズで、特に上から下への移動が印象的。音楽で聴いても、リズム隊が前後左右上下に動く面白さ。ライブ盤はどのように再現するのだろうと興味を抱く。
自宅で同じようなシステムを組もうとすると、かなり大がかりになり出費もかさむ。だが自動車なら最初から完成されており、あとは愉しむだけだ。車内エンターテインメントの可能性を十分に感じさせるとともに、これからの動向に注視したいと思わせられた。
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