【上海ショウ】物欲の魔都、個人的にイイ音・欲しいモノ。ATC、マイトナー、オーディオリサーチetc
海外のオーディオショーには、日本に輸入されていないブランドやアイテムが数多く展示されている。そこで個人的で恐縮だが「これは欲しい!」と思ったモノと、「これはイイ音だった」というブースを紹介する。
ディナウディオ - パワーアンプをスピーカースタンドに内包
残念ながら日本での取り扱いが止まっているディナウディオ。その現状は下記記事に詳しいが、ここでは最新モデルである「Confidence 20A」について紹介したい。

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2025/07/13
パワードスピーカーのConfidence 20Aは、Esotor3ソフトドームトゥイーターと、ネオジムマグネットとアルミボイスコイルによる磁気回路NeoTecを用いた18cm口径ウーファーによる2ウェイ機。ウーファーの振動板素材は、もちろんMSP(マグネシウムシリケートポリマー)だ。
ユニークなのは、パワーアンプをスタンドに内包したこと。トゥイーター側は150W、ウーファー用には400Wがあてられており、その設計はコペンハーゲンのPascal社が担当しているようだ。入力はアナログXLRのほか、AES3デジタル接続に対応し、部屋の位置による3段階のトーンコントロール機能などが用意されている。
つまり、「Confidence 20」のスタンドのみを変更したモデルといえそう。だがスピーカー背面にはパワーアンプ入力端子はないので、スタンドを変えてパッシブ型からアクティブへチェンジすることはできない。
スタンドにパワーアンプを内包するというアイデアは非常に面白い。ユーザー側の選択肢も広がるし、メーカー側としても設計を一元化できるというメリットもあるだろう。他のスピーカーブランドにも広がって欲しいものだ。
ATC - 50年経っても色あせないスタジオモニター
もう一つ魅力的な音を奏でていたのが、50年の歴史を有する英国ATCのスピーカー陣だ。外観も含めて現代ハイエンドオーディオシーンの主流とは異なるのは事実だ。だがホットでスパイシー、浸透力のある音は貴重であり、聴き手の琴線に触れるものだ。
「SCM150ASLT」は、いまどき珍しい38cm級ユニットを搭載した3ウェイ機。パワーアンプ搭載モデルも用意されており、ハイパワー再生では会場随一のサウンドで人々を圧倒。価格は現地価格で約600万円(ペア)と高価だが、ATCでしか得られない音世界に心が震えた。
DSD録音のレジェンド、EMMラボ&マイトナー
日本に代理店はあるものの、ここ数年、話題を聞かなくなったのがEMMラボと、マイトナー・オーディオだろう。EMMラボはエンジニアのエド・マイトナーが立ち上げたプロフェッショナルオーディオ向けブランドで、DSD録音・再生の世界を切り開いた伝説的なブランドの一つ。マイトナー・オーディオはそのサブブランド的な位置づけのようだ。
現在日本市場では、EMMラボの光カートリッジ用フォノイコライザー「DS-EQ1」のみDSオーディオが輸入を担当しているが、それ以外の製品は入ってきていない。どうなったのだろうかと思っていた。
会場ではマイトナー・オーディオの「MA3」というDAコンバーターが展示されていた。入力はUSBのほかLANも用意され、ネットワークプレーヤーとしても使えるようだ。日本ではMA1 V2以降の話は聞いていなかったので、MA2をすっ飛ばしてMA3まで製品がアップデートされていたことに驚いた。
さらに驚いたのが、EMMラボから「MTRX2 V2」というパワーアンプも展示されていたこと。完全ディスクリート構成で、出力はなんと1000W。バランス回路構成で、基板材料はセラミックPCB、内部配線材はキンバー・ケーブルと贅沢だ。当然高額商品だが、DSDの第一人者が作るパワーアンプの音を聴いてみたいというのは贅沢な話だろうか。
ウィルソン・ベネッシュ - 現代ハイエンドオーディオの極点
21世紀直前のオーディオシーンにカーボンコンポジット素材を持ち込みセンセーションを巻き起こした英国のウィルソン・ベネッシュ。日本市場から撤退して久しいが、未だハイエンドシーンでは見逃すことのできないブランドであることに変わりはない。
上海インターナショナルオーディオショウでは、フラグシップスピーカーの「Eminence」と超級アナログプレーヤー「GMT One」によるデモンストレーションを敢行。ビタス・オーディオのエレクトロニクス陣と共に、現代ハイエンドオーディオの極点と言いたくなるほどのハイレゾリューションサウンドを披露。リスナーを桃源郷へと誘った。もう一度、日本で聴きたいブランドだ。
オーディオリサーチ - 最新のプリ&パワーアンプに注目
日本では何度か輸入されるも、なかなか根付かなかった米国のオーディオ・リサーチ。直近では2021年に取り扱いが終了している。会場では最新のプリアンプ「LS-2」とパワーアンプ「D-80」を披露し、エステロンを色香漂う音で十全にドライブしていた。
LS-2は信号経路から一切のソリッドステート素子を排除した真空管式プリアンプ。パワーアンプのD-80は出力段にKT150をプッシュプルで用いて、チャンネルあたり80Wを出力するステレオパワーアンプ。4、8、16Ωの出力端子を有しているとのことだ。
中国では埋め込みスピーカーも人気!
日本ではJBLなど一部を除き、めっきり見かけなくなったのが壁埋め込み型のスピーカーだ。導入にはリフォームが必要であったり、容易に新モデルに入れ替えられないなど、上海でもダウントレンドであるというが、それでも需要はあるのだろう。
上海インターナショナルオーディオショウで目を惹いたのが、フォーカルによる“スピーカー埋め込みゲート”。実際に音を出して来場者を出迎えるというデモンストレーションは面白く、思わずユニットに耳を近づけて本当に音が出ているのか確認してしまった。
ほかにも、REVEL、ソナス・ファベールなどから日本では展開のない埋め込みスピーカーも展示されていた。ホームシアターはもちろん、イマーシブオーディオにも活用できるので、日本でも選択肢が増えるといいのだが……。












































