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独自の電気音響変換フィルムを採用

<OTOTEN>富士フイルムが作った“画期的”スピーカーはどんな音? 「Φ」試聴レポート

編集部:小澤貴信
2018年06月16日
既報の通り、富士フイルム(株)は、同社が開発した新しいスピーカー技術「Φ(ファイ)」を搭載したスピーカーシステムのデモを本日開幕した「OTOTEN 2018」(事前来場者登録はこちら)で行っている。

富士フイルムのブースにおける「Φ」のデモ

さっそく、同ブースにてこの「Φ」搭載スピーカーのサウンドを聴くことができたので、その技術のポイントと共に、ファーストインプレッションをお届けしたい。

スピーカー技術「Φ」、およびその中核技術となる富士フイルム独自の電気音響変換フィルム「B.E.A.T.」の詳細については、昨日の記事で説明したのでこちらを参照してほしい。

「Φ」スピーカーの本体

サランネット越しに見えるのが「B.E.A.T.」だ

ここでは要点だけ紹介するが、「Φ(ファイ)」は、磁石やコイルなしで電気信号で直接振動する電気音響変換フィルム「B.E.A.T.」を振動板に採用したスピーカー技術だ。「B.E.A.T.」は圧電セラミックスの微粒子と粘弾性ポリマーを複合化したフィルム状の振動板で、圧電素材であるセラミックの特性を活かし、電気を流すだけで振動させ、発音させることができる。また「B.E.A.T.」は、圧電セラミックならではの高速レスポンスも特徴としている。

「B.E.A.T.」の断面図

高い過渡応答性を備えることも特徴だ

この「B.E.A.T.」を独自のスピーカーユニット構造に仕立てることで、「Φ」はさらなる超高速レスポンスを実現。これがクリアなサウンドを可能にするという。加えて「B.E.A.T.」は内部損失が高いため圧電セラミック特有の共振ノイズを抑制でき、コーン紙を上回る振動減衰効果を獲得。素材固有の色づきを廃した音を可能としている。

応答速度と内部損失の高さを両立させたこともポイント

「B.E.A.T.」の背面には吸音材を充填している

ブース内では「Φ」における独自のスピーカーユニットについても紹介。「B.E.A.T.」の背面側に吸音材を充填し(つまりスピーカー構造としては密閉型になる)、裏面側へ放射された逆位相音を吸収すると共に、高い振動減衰効果も獲得。「B.E.A.T.」そのものの減衰効果と相まって、超高速の立ち下がりを実現するという。なお「B.E.A.T.」を囲むフレームはアルミ製となっている。

Φの試作機は、このスピーカーユニットを4面に配置した柱状のスピーカー。この構造により、360度の全指向性を実現し、自然な音場感を実現するという。その特性はグラフでも紹介された。

4面にユニットを備えた柱状多面体構造を採用

360度にわたって優れた特性を実現

今回参考出展された「Φ」搭載スピーカーは、木製のエンクロージャーを搭載。同社が試作したアンプを内蔵している。現時点では低域の再生範囲に限界があるとのことで、ブースではECLIPSEのサブウーファー「TD725SWMK2」2基と組み合わせた2.2ch構成でデモを実施。200Hz以下はサブウーファーが担当している。

今回の試聴システムだが、「Φ」スピーカーはアンプを内蔵しているため、アキュフェーズ製のチャンネルデバイダーで、「Φ」スピーカーとアクティブサブウーファーへ各帯域を振り分け、再生を行っていた。

デモンストレーションされたシステムの構成図

試聴できたのは限られた時間だったが、音質についてもその印象をレポートしたい。試聴デモではクラシック、ジャズ、ロックなどの各ジャンルの音源を短い時間で切り替えながら聴いたのだが、いずれも上下左右、そして奥行き方向にナチュラルかつ広々と音場が展開。音場の見通しのよさ、クリアネスに驚かされた。

音場がクリアだから、生楽器の響き折重なりつつ自然に減衰していく様が見えるようで、独特の生々しい空気感が再現される。解像感を押し出すタイプではないのだが、音楽が細部まで立体的に見えることに好感を持った。

360度に音が広がるスピーカーなのだが、中央付近で聴くと、ボーカルや各楽器がしっかりと定位し、立体的なサウンドイメージが味わえる。

音場感と共に印象に残ったのが、弦楽器やピアノ、シンバルなど各楽器の音色がとてもリアルだったことだ。付帯音がなく、響きの減衰も自然で、このあたりに「B.E.A.T.の超高速応答の効能が現れている。このスピーカーから感じる独特の生々しい空気感は、この色付けのなさが担っているのだろう。ただ一方で、ギターやピアノの再現における力強さはもう少しあっても良いと感じた。なお、低域を担うサブウーファーとのつながりはとてもよかった。

ボーカルの再現については、イーグルス「ホテル・カリフォルニア」のライブ盤では今一歩の力強さが欲しいと感じたが、グレゴリウス聖歌の合唱では、天井や壁の存在を忘れさせるような、伸びやかかつ実在感に豊んだ再現力を見せた。

今回の「Φ」のデモンストレーションはあくまで技術発表というかたちだったが、短時間の試聴でもそのポテンシャルは十分に感じられた。ハイエンドオーディオ機器への応用も検討しているのことだったが、それもこの音を聴けば納得できる。オーディオブランドとのコラボレーションによる製品化に期待したい。

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