オーディオ 商品レビュー

次へ

オーディオ 関連インタビュー

次へ
同時開催のhifi deluxeにて登場した注目機

<HIGH END>TANNOY、往年の銘機を復活させた「Legacyシリーズ」発表 ー キーマンに詳細を聞く

オーディオ編集部:浅田陽介
2017年05月25日
TANNOYは、現地時間の2017年5月18日(木)〜5月20日(土)に独ミュンヘンにて行われたオーディオショウ「hifi deluxe munich 2017」にて、同社の最新ラインアップとなる「Legacyシリーズ」3モデルを発表した。

Legacyシリーズのなかで最も大きなサイズとなる15インチユニット搭載の「ARDEN」

ラインナップを構成するのは「ARDEN」「CHEVIOT」「EATON」の3機種。いずれも、1970年代に“ハイファイ・スタジオモニター”をコンセプトに開発されたTANNOYのスピーカーと同じ名前を持つ。

今回、現在の同社のスピーカー開発のキーパーソンであるJamie O'Callaghan氏に、Legacyシリーズの詳細について伺った。

現在のTANNOYのディレクターであるJamie O'Callaghan氏。今回は同氏にその開発背景にまつわる話を聞くことができた

歴史的名機をベースに最新技術を投入して開発されたLegacyシリーズ

そもそもTANNOYは、日本でこそハイファイ・オーディオブランドとしてのイメージが強いが、実は音にまつわる全てのソリューションを提供する企業である。スポーツ会場からコンサートホール、レストランに至るまでのサウンド設計を行う「エンタープライズ」。レコーディングスタジオなどのプロの現場のソリューションを提供する「クリエイション」。そしてホームオーディオやホームシアター向けの製品をラインナップする「ライフスタイル」と、その規模は非常に巨大だ。

このような事業規模に加えて90年を超える歴史を持つTANNOYだが、そのベースにあるのは、やはりサウンドクオリティの高さと長い歴史の裏付けによる圧倒的な信頼性である。Legacyシリーズは、そんなTANNOYの基本思想に敬意を表しつつ、新しい技術を取り入れて現在に登場した新シリーズとなる。

Jamie O'Callaghan氏は、Legacyシリーズのコンセプトと同社ラインナップにおける位置付けについて、次のように語る。

Jamie O'Callaghan氏(以下O'Callaghan氏)「Legacyシリーズは新たなクラシックラインとして、TANNOYのなかでも独自の立ち位置のスピーカーとなります。従来のクラシックラインにはPRESTIGE GOLD REFERENCEシリーズがありますが、Legacyシリーズはクラシックラインのエントリーに位置する製品として開発を進めました」。

Legacyシリーズで最も小型となる10インチユニット搭載の「EATON」

「EATON」のリアパネル

前述のとおり、TANNOYは創業時から現在にいたるまで、音楽再生にまつわる最先端を走り続けてきたブランドだ。その過程で得た技術と長い歴史を築き上げてきたTANNOYのエンジニア達が抱いた思想を、理想的な形でハイブリッドさせたのが今回発表されたLegacyシリーズといえる。

Legacyシリーズにおけるミドルサイズ・モデルとなる「CHEVIOT」。こちらは12インチユニットを採用

CHEVIOTのリアパネル

O'Callaghan氏「TANNOYは、新しい技術を全面に打ち出した製品ももちろん開発していますが、決してそれだけではありません。自らの過去の遺産に対して“これだけ優れたものを作ってきた”ということを証明するという、“ステートメント・プロダクト”としてLegacyシリーズを開発しています。ただし、ただの復刻ではなく、そこに新しい技術を投入して、同時に“現在のアコースティック・エンジニアリングがどこまで進化したのか”という未来志向をリスナーに示すことも意図しています」。

この言葉のとおり、実際にその内容をみると、外観に加えて様々な部分に変更点があることに気づく。搭載されるユニットにしてもエッジにはラバー素材を採用し、エンクロージャー内部のブレーシング(添木構造)も最新の音響解析に基づく。そして何よりも、今回のLegacyシリーズではあくまで「メイド・イン・スコットランド」にこだわったことは重要なポイントとなる。

O'Callaghan氏「例えば、以前のARDENに関して言えば、採用するパーツの全てが完全に自社製ということではなく、ネットワークもプリント基板でした。一方で新しいARDENは、キャビネットも含め、全てメイド・イン・スコットランド、つまり自社で製造しています。ネットワークも、手作業によるハードワイヤリング仕様にグレードアップしました。TANNOYは自社生産に強いこだわりを持っていますが、細部までハンドメイド生産していることもLegacyシリーズの特徴です」。

「伝統」と「最新テクノロジー」の融合が可能にした唯一のサウンド

こうしたこだわりが、Legacyシリーズを復刻という枠を越えた新しいスピーカーにしている。オリジナルモデルと現在では使用しているデュアルコンセントリック・ユニットも異なるもので、ユニットそのものの奥行きも深い。そのため、必然的にキャビネット内部のブレーシングも新しく設計されているなど、音の核心に至る部分までエンハンスメントされたものとなっている。

現在のデュアルコンセントリックユニットは奥行きも異なるため、Legacyシリーズではキャビネットのブレーシングなどエンクロージャーにも現在の技術が盛り込まれた

そのサウンドを聴くと、シリーズを通して、良い意味で現在のスピーカーのトレンドとは異なる独自の方向性を持っている。おおらかに音楽を鳴らしながら、奥行き方向へ自然に広がるサウンドステージや楽器の位置関係を的確に表現する点は、最新テクノロジーによる現代的なエッセンスを盛り込んだからこそ実現できたと言えるだろう。伝統ある古き良きサウンドと現代のTANNOYの姿がハイブリッドしたサウンドがそこにある。

ユニットのサイズはARDENが15インチ、CHEVIOTが12インチ、EATONが10インチ。それぞれ音の傾向は共通であるものの、サイズが大きくなるにつれてやはり低域の量感に差が出てくる。このあたりはリスナーの好みによって選ぶこととなりそうだが、いずれにしてもほかのスピーカーにはないこの音は、Legacyシリーズの最大の魅力といっていい。

もちろんこのサウンドの背景には、単なる復刻にはとどまらないという現在のエンジニア達の想いがある。

デザイン上の大きな変更点となるフロントパネルのEQ部

O'Callaghan氏「オリジナルの音をそのまま復刻するのではなく、そこから一歩踏み出した領域まで表現することを念頭に設計しています。設計にあたって、エンジニアはオリジナルモデルを何度も繰り返し聴き続けて、どのような音の特徴があるか全て把握した上で、そこに加えるべき新しい要素を盛り込んだのです。設計同様、サウンドでも新しい“エンハンスメント”を加えたということですね」。

リスペクトも込めて銘機の名前をそのまま継承した

このように、ARDEN、CHEVIOT、EATONの3モデルともにオリジナルとはまた異なる新しいTANNOYの「Legacy」が盛り込まれているが、名前はそのままオリジナルのものを採用した。そこには、現在に至るまで変わることのないTANNOYの想いが反映されている。

O'Callaghan氏「今回発表したARDEN/CHEVIOT/EATONという名前は、普通の家電製品によく用いられるモデルナンバーとは異なり、その名前自体が製品のアイデンティティを示しているのです。そうした大きな意味を持って生まれたオリジナルモデルへのリスペクトという意味でも、名前に"MK2"のように余計なものはつけないことにしました。もちろん設計に手を加えた部分もありますが、基本思想は変えるべきではないと考えました。もともとのARDEN、CHEVIOT、EATONは“家庭用のハイファイ・スタジオモニター”という思想がありましたから、これを現在の形でそのまま表現したかったのです」。

ブランドがこれまで辿ってきた歴史と、それを正統に現在のエンジニアリングで受け継ぐという想い。これこそがこのLegacyシリーズのコンセプトを何よりも体現している。

今回のLegacyシリーズのようなスピーカーは、TANNOYのように正統な歴史を誇るブランドにのみ許された特権でもある。1970年代、世界中のオーディオファイルをおおいに沸かせた銘機が、いま再び、現在のオーディオファイルの前に登場することに、ひとりのオーディオファイルとして期待せずにはいられない。

Legacyシリーズは夏にイギリスからの出荷を予定しているが、そのサウンドと存在感は早くも現地のオーディオファイルから高い関心を集めていた。

関連記事