<HIGH END>世界で躍進する日本のアナログ。オーディオテクニカ・テクニクス・ナガオカ
編集部:筑井真奈ウィーン・ハイエンドにて日本メーカーの存在感が高まっていることは度々報告しているとおりだが、特にアナログ再生関連アイテムへの関心は群を抜く。テクダスとDSオーディオはハイエンド市場を牽引しているが、それに触発されるように、新たな市場開拓を目指すのがオーディオテクニカである。
ハイエンド・カートリッジに力を入れるオーディオテクニカ
オーディオテクニカのアナログプレーヤー、特に低価格帯の製品はアメリカなど世界中で大ヒットを飛ばしているそうだ。
世界的なアナログブームを陰で支える存在であることは間違いなく、若いユーザーの“最初の一台”として愛されているのだろう。そして実は、同社はカートリッジのOEMにも強みを持っている。
そのような技術背景、市場背景をバックに、近年は特に「ハイエンドカートリッジ」に精力的に取り組んでいる。
今年発表になったのは、一体型ダイヤモンドカンチレバー搭載のMCカートリッジ「AT-MCD1」。日本円で170万円(税別)というフラグシップモデルとなる。このウィーンハイエンドに合わせて日本市場での投入も正式発表されたことを覚えている人も多いことだろう。
ブランドの60周年を記念して生まれた「AT-MC2022」の後継機という位置付けとなるが、技術的にはさらにアップデート。ハウジングはチタンを継続採用しているが、前作はゴールドだったところから、今回はブラックの精悍なデザインに変更。
カンチレバーの軽量化とともに、新規開発のシバタ針を採用した点もポイントで、よりスムーズで小気味良い再生を狙う。
開発担当の小泉洋介氏も、「ダイヤモンドカンチレバーの良さを引き出しつつ、解像度をしっかり見せながら聴き疲れのしない音を狙いました」と仕上がりにも自信を見せる。
「AT-MCD1」は、今回はドイツのハイエンドオーディオ代理店・Audio Referenceのブースにて再生されていた。
メインスピーカーにはWilson Audio、アンプはDan D'Agostinoと、弩級のシステムの中に組み込まれ、SMEの アナログプレーヤー「Model 60」に本機を装着。
残念ながら時間の都合で現地で音を聴くことは叶わなかったが、オーディオテクニカが世界のハイエンドブランドと肩を並べる存在へと歩みを進めていることを目の当たりにした。
海外展開限定のアナログプレーヤーも展示
日本のアナログといえば、忘れてはならないのがテクニクスの存在。ヨーロッパ市場においては、特にドイツやオランダを中心にDJ文化が盛んで、テクニクスへのリスペクトも高いと聞く。
今回はスピーカー「SB-G90M2」と、アクティブスピーカー「SC-CX700」をメインに、プリメインアンプ「SU-R1000」、CD/ネットワークプレーヤー「SL-G700M2」、アナログプレーヤーは「SL-1200GME」を組み合わせ、アナログからQobuzまで幅広く再生を行っていた。
また、今年初頭に海外向け限定で発表されたアナログプレーヤー「SL-1500CS」も展示されていた。
外観は「SL-1500C」とほとんど変わらないが、「SL-1200GR2」などに搭載されるモーター駆動技術「ΔΣモータードライブ」が投入されており、さらに正確かつ静粛性の高い回転を実現している。
なお国内向けの展開は現時点では未定とのこと。ΔΣモータードライブの魅力は立ち上がりの鮮烈さや、音溝を最奥まで味わい尽くす力強さにあると記者は感じているだけに、日本投入も期待したいところだ。
他にも、完全ワイヤレスイヤホン「EAH-AZ100」やワイヤレスヘッドホン「EAH-A800」も展示。ここまで幅広い製品ジャンルを展開するブランドは他になく、まさにオーディオブランドとしてのテクニクスの”総合力”を見せつける展示となっていた。
独自のMPカートリッジに力を入れる
また、ヨーロッパ市場開拓に力を入れるもうひとつのブランドがナガオカ。
今年は新製品はなかったが、昨年のハイエンドにて発表した、85年の技術を結集したフラグシップ・カートリッジ「MP-700」がヨーロッパ市場でも大きな評判を呼んでいる。ヨーロッパの権威あるEISAアワードも獲得するなど、”世界のナガオカ”は着実にその地位を高めている。
ナガオカのカートリッジの特徴はMP=Moving Permalloyと言われるもので、磁気化したスーパーパーマロイが動くことで発電するというメカニズムを持っている。
出力電圧はMM相当で、針先を交換することもできるが、MMとは違ってマグネットそのものが動かないことから、可動部をより軽くできるというメリットがある。そのことで、より細やかな情報を引き出したいという狙いがあるという。
開発スタッフも、「ナガオカのMPカートリッジは”MCキラーですね!”という声もいただいています」と胸を張る。アナログ全盛時代からレコード再生の理想を追い求めてきたナガオカの技術力に、世界市場からの視線も熱い。