受け継がれるなにわシマムセンの伝統。大阪・日本橋の老舗オーディオ&ホームシアターショップ
シマムセンといえば、大阪・日本橋の老舗オーディオ&ホームシアターショップ。かつてホームオートメーションもできるホームシアター専門フロアを構えていた別館CYMAは、ハイエンドオーディオの試聴とイベントルームに生まれ変わっているが、ベテランスタッフの明るく気さくな接客と入りやすい店構えは従来通り。
わたしが勤めた雑誌社を辞めたあと、立場が変わってもいつも変わることなく受け入れてくれ、足を運ぶたび幸せな気分になる。そんなお店の筆頭だ。
使い続けられる安心感、カスタムインストールならではの匠の技を
ちょっと乗り換えに失敗し、お店に辿り着いたのは閉店18時半間近の18時前。にもかかわらず、堀野航平さんと塩見実浩さんがにこやかに迎えてくれた。
航平さんはこれからのオーディオ界を背負って立つ若手のホープ。そしてハイエンドオーディオとシアター担当の塩見さんは、本来家庭用ではない三管式プロジェクターをホームシアターに活用したりレーザーディスクで再生したりと、別館CYMAをハイエンドシアターとして活用していた頃からのベテラン。自然とわたしがホームシアターの雑誌編集者をしていた頃の昔話に花が咲く。
「当時は国内大手ブランドが手頃な価格でしっかりした製品をたくさん作っておられたので、ホームシアターを導入しやすかった。『新築住宅を買うなら、夢のホームシアターを』という時代でしたから。
最近ではそうしたご依頼は減りましたが、当時からのお客様から『子どもも手を離れたのでゆっくり映画でも観たい』と修理や買い替えの相談に訪れる案件はよくあるので、ホームシアター事業を継続しているんです」(塩見さん)
たとえばブルーレイプレーヤー。MAGNETAR「UDP900」が最近MK2化し、ストリーミング配信全盛のいまでもなお需要があるとはいえ、ほぼこれ一択。またテレビの大型化・低廉化を受けても、シマムセンではビクターやエプソンなど、信頼できる主要ブランドのプロジェクターを引き続き取り扱っている。常連のお客さんは安心して使い続けることができるのはありがたいかぎり。
しかし、これからホームシアターをやろうという初心者にとって、とっかかりになる製品があまりにも少ないのが最大の問題だ。さらに問題なのは「カスタムインストールの施工費に対するユーザーの理解が薄いことだ」と塩見さんは言う。
たしかに、いまやテレビなら送料無料がアタリマエで、開梱設置まで無料というところもあり、ハイエンドオーディオなら設置も含めて納品してくれるお店もあるからなおさらだ。
「ほんとうに、インストール費用というものが理解されません。わたしたちが実際にスクリーンやプロジェクターの設置、ケーブルの壁内配線といった作業をしているところをお客様がご覧になれば『それは大変やな』と理解してくれますけれど…。入口から認識にギャップがあるんです」(塩見さん)
ホームシアターのカスタムインストールは、家の建築にまで踏み込む必要がある。どこに機器を置くことでいい音や画が得られるかだけでなく、壁内配線をするための配管設置にもノウハウが必要だし、スクリーンやプロジェクターを吊るとなれば、天井に補強が必要なことも。そのため、設計者や建築、電気工事業者との連携を要する場合も少なくないのだ。
大型テレビにはないプロジェクターの魅力とは
いまや大型テレビは100型を超えた。価格も1型=1万円どころか、100型で30万円なんてものまである。そんな現状にあって、搬入の容易性のほかにも、プロジェクターとスクリーンの世界には、テレビにはない絶対的な優位性があると塩見さんは指摘する。
「ホームシアターって、一回やったら結構抜け出せない世界だと思うんですよ。本来、プロジェクターってのはすごく魅力的だから。きちんと観てもらえたら、直視型パネルに比べて見え方も全然違うことがわかるハズなんです。
かつては20 - 30代の若者がコツコツ貯めたお金でミドルクラスの製品を買って組み合わせ、少しずつケーブルや電源を工夫するなどステップを踏んで知見を深め、40代の働き盛りになってようやくホームシアターを導入したものです。ところがいまは。そうしたいちばん楽しいプロセスが抜けてしまっているのも問題です」(塩見さん)
たしかに近年隆盛を誇るコンパクトプロジェクターは、ほんとうによくできている。映したいところにプロジェクターを向ければ自動でピントを合わせてくれるし、配信アプリも内蔵されているから下手するとケーブルだって要らない。しかし、便利さと引き換えに、趣味のアイテムとしての魅力は失われてしまったというのだ。
「簡単やったら簡単でええ。それこそネットでポチってお客様が自分でスタート切れる『スターターキット』みたいなのがあったらいい。実際にやってみて、でも自分だけじゃどうしようもないから、じゃあちょっと専門店の知識を借りて、もうちょっといいものを入れていこうという流れがついたらいいんでしょうけど。入口として、まずは『プロジェクターってどういうもんよ』『テレビで見るのと何が違うのよ』と。
その次が『ちょっとええやつってどう違うの?』あるいは『壁に映すんじゃなくてスクリーンに映したらどう違うの?』となる。だって、未だにわたしたちは言われるんですよ、『壁に映したらええんでしょ』って。それに対しては『壁って光を反射するようにできてないでしょ』って答えるんです。
そういったことを、マニアが集まる場所ではなく、一番興味を持っている一般的な人が集まっているところでやったら、もうちょっと効果が出るんじゃないかなと思うんです」(塩見さん)
大画面を楽しみたいというお客さんは、みんな機械に詳しいわけじゃない。しかもオーディオに比べ、映像が絡むと途端に手数がとても増え、最近はそこにネットが絡む。ほんとうは、これまで以上に専門店の出番なのだ。
”カンタン便利” で割り切らず、自由に趣味を探求する
マニアでないお客さんにもっとホームシアターの楽しさを知ってもらいたいというのが私のライフワークのひとつなのだが、カメラやレコードが10 - 20代の若者や女性に親しまれていることと何が違うのだろうか? そんな質問を塩見さんにぶつけてみた。
「ビジュアル業界は、オーディオ以上にちょっと商売に走りすぎたというか、DVDからブルーレイになった時もそうやけど、ちょっとユーザーを置いてけぼりにしてしまったところは正直あったよね。
レーザーディスクからDVD、そしてブルーレイと規格が変わるたびにユーザーは思い入れのある資産をスパーンと切ることを余儀なくされてきた。それがユーザー離れを起こしたひとつの原因じゃないかなと思ってます」(塩見さん)
一方で、次のようなエピソードを紹介してくれた。
「先日プロジェクターのイベントで、お客様から画角4:3のDVDを映したらどういう風に見えるんですかって聞かれたんです。黒マスクのある額縁映像でしたけど、意外と綺麗に見られるなぁとみんなで感心しました。
もちろん、僕ら売り手としては最新のフォーマットが最良ですよとよく言うものの、考えてみたら、レーザーディスクなんかはDVDにもなってないソフトがたくさんありますよね。当時は1万円も払って購入したディスクをまだに捨てられずラックに保存しているお客様もいます」(塩見さん)
わたしは4Kリマスターされた4K UltraHDブルーレイを楽しみに購入して感動しているクチなのだが、いまでもパイオニアのレーザーディスクプレーヤー「HLD-X9」はちゃんと稼働するし(平塚さんありがとう)、レコードはもちろん、未だにソニー「TC-KA7ES」で昔録音したラジオのカセットも楽しむ(信じられないほどいい音!)。
そのように、手持ちのソースはそのままに、再生側で蘇生させる方法を提案してみてはどうだろう。優れたカルト作品はたくさんあって中古で流通している。ディスク再生を知らない若い人にとっては、むしろ新鮮だろう。あくまで趣味の世界なのだから、カンタン便利だけで割り切らなくていいのだ。旧い映画を “敢えて汚して” 楽しむ先人達がたくさんいたことをふと思い出した。
お話は閉店後にまで及んだが、迷惑なそぶりもなく対応してくれ、帰りには社長の堀野裕一郎さんのにこやかな笑顔に送られて退店した。こうした専門店特有の、ほっこり満たされた気持ちと、また行きたいという意欲に心満たされた旅だった。

シマムセン
大阪府大阪市浪速区日本橋4-8-11
TEL:06-6632-2851(代表電話)
06-6632-2854(3Fハイエンド・シアターフロア直通)
営業時間:10時30分 – 18時30分
定休日:木曜日、第1・3・5水曜日
































