いいのか?円安だぞ? THORENSのレコードプレーヤー「TD403DD」が22万円でもコスパが高い理由
アナログレコード人気が続くなか、再生するためのレコードプレーヤー市場も活況を呈しているが、入門用は1万円前後から、そしてハイエンド機では1000万円超えまで、実に幅が広くその選択肢も多い。
改めてレコードに触れ、レコードプレーヤーの購入を考える方の中でも、エントリークラスよりはグレードの高いものを選びたいという、こだわりの強いリスナーにとって、自分に最適な製品を見つけるには、いささかハードルが高いと言わざるを得ない。
そこでワンランク上のクオリティを目指したい初心者にも最適なレコードプレーヤーのひとつとしてお薦めできる、THORENS(トーレンス)「TD403DD」を紹介する。
このTD403DDはVGP2026ピュアオーディオ部会では部門金賞と企画賞を獲得。ライフスタイル分科会においても部門金賞を獲得した。
THORENS
TD403DD
¥220,000(税込)
その大きな理由は上位モデルの基幹パーツであるトーンアームをそのまま移植した、ハイコストパフォーマンスな仕様になっている点にある。
またMMカートリッジも付属し、初めてレコードプレーヤーに触れる方にとっても扱いやすいこと。さらにダイレクトドライブ方式ゆえ、難しいメンテナンスも不要であり、長期間使えるモデルであることも高評価の理由だ。
実は100年近くダイレクトドライブを開発していたトーレンスの歴史とは?
製品そのものを解説する前に、まずトーレンスというブランドについて触れておきたい。トーレンスは1883年にスイスで創業した、140年以上の歴史を持つ老舗メーカーである。
40歳代である筆者にとって、トーレンスとはオーディオをはじめた中高生当時、まさに"高嶺の花"であった。100周年記念モデルのひとつであった「Prestige」など、憧れのレコードプレーヤーをいくつも手掛ける、ベテランマニア御用達のハイエンドブランドだった。
現行のラインアップは、そうしたかつての製品を彷彿とさせる意匠をオマージュしつつ、単なる復刻ではなく、現代の部材や設計による新たなプロダクトとして仕上げられている。
日本では2018年の再上陸時「TD124DD」「TD1600/1601」「TD1500」の3モデルが導入されたが、TD403DDはかつての銘品「TD150」を現代のテクノロジーで生まれ変わらせたTD1500の下位モデルとして誕生した製品だ。
TD403DDは税込み価格で220,000円と初心者向けとしては幾分高めと感じるが、TD1500は税込み価格495,000円であり、同じトーンアームを備えていながら半分以下のプライスを実現しており、前述の通りコストパフォーマンスは圧倒的に高い。
実はTD403DDのヨーロッパにおける発売当時の価格は1400ユーロ(現在のレートで約26万円)に設定されていたが、日本の輸入代理店PDNでは新生トーレンスの存在、その素晴らしさを多くのオーディオファンに知ってもらうべく、輸入品にも関わらず「TD1500の半値以下」という戦略的な価格設定としたという。
音楽的な再生を目指してダイレクトドライブ方式を採用
それではここからは具体的にTD403DDの技術的特長について、解説していきたい。まずTD1500とTD403DDの大きな違いはターンテーブルの回転手法にある。
TD1500はトーレンスのプレーヤーで採用例が多いベルトドライブ方式、一方TD403DDはダイレクトドライブ方式だ。
そもそもトーレンスは1929年に、ゼンマイ式蓄音機におけるダイレクトドライブ方式の特許を取得。1954年にはモーターの回転軸とプラッターを直結したダイレクトドライブ方式のターンテーブル「E53N-PA」を発売。
その後も業務用モデル「TD524」を1982年に発売するなど、トーレンスはベルトドライブ方式とダイレクトドライブ方式、その両方に縁が深いブランドなのだ。
そして時代と共に技術も進化していくが、約100年にわたり、リラックスできる豊かな音楽再生をもたらす設計思想は今も貫かれている。
ダイレクトドライブ方式の心臓部であるモーターは、ブラシや整流子のないDCブラシレスモーターを採用。摩耗による劣化がないため寿命も長く、ブラシ接触による摩擦音や電気的ノイズも発生しにくいため、静音性も高い。
プラッター(1.4kgのアルミダイキャスト製プラッターそのものはTD1500と同じものを導入。この点もコストを抑える要素に繋がっている)直下にあるディスクローターの裏面にはリング状の大型永久磁石を装着。相対する基板には4つのコイルが配置されている。
一般的なダイレクトドライブ方式のモーター構造に比べ極数も少ないが、DJ仕様モデルのような立ち上がりの速さ、トルクの大きさは必要としておらず、いかに動作が静かであるか、慣性を生かした滑らかでスムーズな回転を生み出せるかに注力した設計となっているようだ。
そしてローターの位置や速度の検出、及び磁気センサーによる負荷変動のリアルタイム計測・フィードバックによって、高精度かつ安定した速度制御を実現し、一定の回転数を維持できるつくりとなっている。
このディスクローターを用いたDCブラシレスモーターは、構造的に小型で高出力を実現できるため、キャビネットの薄型化に貢献。キャビネットの横幅・奥行きはTD1500と同じサイズだが、高さは幾分低く抑えられている。
上位機と同じトーンアーム「TP150」を採用した
20万円台とは思えないこだわりが最も感じられるのが、上位モデルTD1500と同じトーンアーム「TP150」を搭載していることだ。
新生トーレンスの現行ラインアップのいずれの製品も新設計のトーンアームを備えているが、外観のデザインは往年のものに倣った意匠を採用。
部材には金属をふんだんに用い、アームの共振や堅牢性にも気を配ったつくりとなっている。なかでもTP150はシンプルなスタティックバランス型のJ字アーム構造を採用し、ヘッドシェルの交換に対応したユニバーサル仕様を取り入れた。
パイプは軽量かつ耐久性を持たせた硬質アルマイト処理を施したアルミ製。2分割式のカウンターウェイトによって、カートリッジ重量は27.8gまで対応可能だ。
レコード再生中にカートリッジが内周方向へ引き寄せられる力を引き戻すアンチスケーティングは、アームベースのスライドウェイトによって調整する。
またカートリッジとの組み合わせ状況に応じてアームの高さ(VTA:垂直トラッキング角)、アームベースに対してパイプを左右数度回転させることができるアジマス調整にも対応。
この辺りは入門モデルでは省かれているケースも多いので、上級モデル用トーンアームならではの対応範囲の広さといえるだろう。
定評あるカートリッジ「2M Blue」がプリセットされている
キャビネットはウォルナットグロス仕上げのMDF製枠組みにアルミトップパネルを組み合わせたつくりで、トーレンスらしい落ち着きある風合いの外観を継承。電源はACアダプターによる供給で、音声出力はRCA端子にケーブルを接続するスタイルだ。
カートリッジはオルトフォンの無垢楕円針採用のMM型「2M Blue」が付属し、予めヘッドシェルに取り付けられた調整済みの状態でセットされるため、トーンアームへ装着したカウンターウェイト及びアンチスケーティングを適正針圧である1.8gに合わせるだけで使用できる。
