公開日 2024/08/15 07:00

自宅の常設DAC兼ヘッドホンアンプが3世代目にアップデート! iFi Audio「ZEN DAC 3」を確かめる

[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域【第276回】

■初代からの変更点&初代から受け継ぐポイントを紹介



背面端子周りでの変更点としては、USB端子は初代のUSB 3.0 BからUSB-Cに変更。ケーブルの選択肢が広がった。

上がZEN DAC 3で下が初代。初代のUSB 3.0 B端子はマイナー気味な端子でケーブルの選択肢も少なかった

そしてこちらは初代と同じく、電源端子も用意。ZEN DACは普通にUSB給電でも動作するので、この電源端子は使用必須ではない。じゃあこれ何のためにあるの? というと、電源をこちらから供給するとUSBの電源供給はオフになり、USBをデータ伝送専用にできるという仕組みだ。

前面に目を移すと、見ての通りフロントパネルのデザインは大きく変更。ヘアライン仕上げのシルバー一色でシンプルな意匠だった初代と比べて凝ったものになったが、色合いがダークになったことでむしろより落ち着いた雰囲気だ。

特徴的な筐体形状を維持しつつ、パネルやノブの意匠変更で新鮮さも打ち出している

色のほか、TRUEBASSからXBass+へ、パネルの後傾がなくなったなどが変更点

そのフロントパネルに用意されている要素は、左から、
●POWER MATCH(出力補強スイッチ)
●XBass+(低域補強スイッチ)
●ボリュームノブ
●6.35mmヘッドホンシングルエンド出力
●4.4mmヘッドホンバランス出力
と、初代とおおよそ変わらない。

であるが低域補強機能は初代の「TRUEBASS」から「XBass+」へと変更。どちらもアナログ技術での調整で低域を補強するものだが、その効果の違いについては後ほどのサウンドインプレッションにて。

細かなところとしては、初代のフロントパネルはやや後傾していたのが今回は普通に垂直に。といっても、ノブやボタンや端子の角度は初代もパネルから独立して垂直だったので、操作感に違いはない。

さらに細かな話もすると、初代は、内部基板固定であろう6.35mmヘッドホン端子やRCAライン出力端子の外径に対してパネルの穴が僅かに大きく、端子がカタカタと動いた。しかし今回そこの造りがタイトになり、カタカタしなくなっている。何となく気持ちよい。

操作性でいえば、背面の可変/固定出力切替も含めあらゆる操作にそれ専用のボタンやスイッチが用意されているのは、初代から受け継ぐ好印象ポイント。小さな画面でメニュー選択したり小さなLEDの点灯色や点灯位置を見分けたりする必要はなく、「このボタンでこの機能をオンオフ!」と迷いなく操作できる。

ほかスペック的には、初代の倍の768kHz/DSD512のサンプリングレートへの対応、初代後期仕様と同じくMQAフルデコード対応など。バーブラウン製「トゥルーネイティブ」DACチップセットへのこだわりにも変わりはない。

付属品はRCAケーブル、USB C-Aケーブル、3.5mm→6.35mm変換プラグ。6.35mmへの変換プラグの付属は気が利いている。

付属のラインケーブルは「ifi」ロゴ入り

■ただでさえ優等生なZEN DAC、3世代目で音はどう変わった?



ではサウンドについて、6.35mmシングルエンドヘッドホン出力での印象を主として述べていく。本機どの出力でもサウンド傾向は十分に揃えられており、重複して説明する必要はないだろう。イヤホンはqdc「Tiger」、ヘッドホンはソニー「MDR-M1ST」など、それぞれ数モデルで試聴。イヤホン試聴時にはFURUTECHの変換プラグ「F63-S(G)」を使用している。

不足を感じる要素はなく満遍なく優秀なことを前提に、特にここが魅力! な要素として、やや明るめの音調、音の粒立ちや抜けやキレに優れることを挙げたい。

民族楽器や古楽器とオーケストラを合わせたサントラ楽曲、Evan Callさん「Zoltraak」ではそれが特に顕著。打弦楽器ハンマードダルシマーの音色の複雑ながらも瑞々しい弾け具合、ティンホイッスルの素朴な構造から生み出される素直な抜け。再現が甘くなりがちなそれらの要素を、ZEN DAC 3は鈍らせることもぼやけさせることもなく、しかし変に強調してしまうこともなく、ニュートラルに届けてくれる。

ホセ・ジェイムズさん「Just The Two of Us」でも、エレクトリックギターのパキッとしたクリーントーンの艶やかさ、エレクトリックピアノの煌めきや揺らぎの再現に唸らされる。

加えて前述の「音の抜けやキレを再現しつつ、変に強調してしまうことはない」の見事さもさらに実感。こちらの曲はソフトで穏やかな雰囲気なので音が立ちすぎれば悪目立ち必至だが、ZEN DAC 3はそのさじ加減もちょうどよい。

また初代で聴くとこの楽曲のソフトで穏やかな雰囲気がさらに強まるのに対して、こちらで聴くと現代録音的なクリアさが高まる。そのクリアさのおかげで音の余白の残し方、空間表現などが際立つのも嬉しい。

空間表現、音の配置の美しさという点では、田村ゆかりさん「雨のパンセ」が最高だった。ボーカル音像の浮き上がりが素晴らしく、それが立体的に折り重なるハーモニーの美しさときたら。つまりボーカルソングとの相性もバッチリだ。

初代の「TRUEBASS」から「XBass+」へと変更された低音補強技術については様々な曲で比べてみたが、曲や好み、さらには組み合わせるイヤホンやヘッドホンによっても、どちらが合うか分かれそうだった。

例えば星街すいせいさん「ビビデバ」の強烈なベースラインに対しては、イヤホンのTigerでTRUEBASSをオンにするとバリ効いてクラブ的にファットなブースト感を演出してくれて好印象。対してXBass+と同イヤホンの組み合わせだと、この曲のベースの重心とのマッチングがイマイチなのか、音程の上下次第で音像の膨らみが凸凹してしまい不安定だった。だがヘッドホンのMDR-M1STでは問題なく好印象。

ホセ・ジェイムズさん「Bag Lady」の5弦ベースによる低重心のベースラインに適用すると、同イヤホンでのTRUEBASSは音をド太くはしてくれるものの全体に緩んだ雰囲気に。対してXBass+はこの帯域のベースには安定して効き、低重心を維持したまま存在感を強めてくれた。

低域補強技術については「曲やイヤホンとうまく噛み合ったらラッキー!」くらいの心持ちで、オプション的に考えておくのがよいかと思う。

次ページZEN DAC 3の使いこなしポイントを紹介

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