公開日 2023/05/05 08:39

いまだからこそ“二刀流”エントリーDAP、超小型Shanling「M0 Pro」に注目!

[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域【第271回】

音質強化に投じたコストを操作性据え置きで相殺か?


しかし超小型サイズの継承は同時に「超小型画面でのタッチ操作」の継承でもある。M0のそれをそのまま踏襲したM0 Proの操作性は、「超小型画面でのタッチ操作にしては悪くはない」程度にとどまる。

なお、左スワイプでの「戻る」操作は、ゆっくりではなく、スパッと速くスワイプ!した方が誤動作が少ない。それを気に留めておくだけでも操作感は違ってくる。「画面長押しでいつでもどこからでもトップメニューに戻れる」も覚えておくとよいだろう。

トップメニュー「再生中→マイミュージック→ファイル一覧→再生設定→システム設定」をスワイプ移動して、目的のメニューをタップして階層を下る

リストの一覧性の低さは超小型なのでやむなし


再生中のアートワークをタップするとコントローラーが表示される

そこからスワイプ移動した画面にプレイリスト追加などの機能が用意されている

この操作性、M0当時は「超小型の割には使いやすい」というポジティブな印象が上回った。しかしDAPの操作性の平均レベルがM0当時から向上、また同じく超小型画面でのタッチ操作でありつつ、操作性良好なスマートウォッチも存在する現在においては、ここは明確な弱みと感じられる。

そのスマートウォッチのような超小型タッチディスプレイにおける開発・設計ノウハウを導入し、操作性を高めることもできたはず……そう思うところもあるが、しかし、想像してみてほしい。M0の新モデルが、もし「M0と同じく超小型で、音質も操作性も向上!でもお値段は倍」という形で登場していたら…?

超小型&お手頃価格の両輪が揃ってこそのM0、あらゆるコストが上昇している今、ディスプレイを強化すれば、サクサク動作維持のためSoCも強化、駆動時間維持のためバッテリーも強化というドミノが発生し、お値段はドンと跳ね上がりそうだ。音質機能も操作性、何もかも強化した上で、お値段据え置きはもう絶対無理だ。

そこでShanlingは「操作性は現状維持としてそこにはコストを投じず、使えるコストは音質強化にぶち込む!」という方針を採ったのだろう。であれば納得。むしろ英断と称えたい。

初代M0、そしてスティック型DAC/アンプと音質比較


さて、音質強化にコストを全振りしたのであれば、M0 Proの音は「音質は明らかに良くなった!」と誰しもを納得させるだけのレベルでなければ、説得力も競争力もなくなってしまう。ということで、いざ試聴!

なお、試聴はDAPとしての単体再生で行ったが、USB-DAC/ヘッドホンアンプとしての動作モードでも、音調やクオリティに大きな違いはなかったことを先に伝えておく。

まずは超ハイエンドイヤホンとの組み合わせにて、M0 Proのポテンシャルをしっかりチェック。超ワイドレンジかつニュートラルな音調でDAPの能力や個性を見定めやすい、qdc「Tiger」をセレクトした。

写真は本体3.5mm端子でのシングルエンド駆動の状態

そして比較対象にはまずもちろん初代M0、そして同社スティック型USB-DAC/ヘッドホンアンプ「UA2」も用意。UA2は2021年発売で当時1万3000円程度の製品だ。

「UA2」とも比較。スティック型としての小ささを優先した2.5mm端子でバランス駆動にも対応

次ページバランス駆動でも音質チェック!

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