公開日 2017/07/28 20:15

VGP批評家大賞を受賞! KEFのスピーカーシステム「Qシリーズ」を徹底分析

【特別企画】完成度を高めた普及帯シリーズ
山之内正
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Q750を聴く ー 高い解像感で音楽情報を余さず再現。キレのよい低音も魅力

次にフロア型のQ750につなぎ変えてさまざまな音源を聴いていく。フロア型3機種の中間に位置する本機はUni-Qを含むすべてのドライバーユニットが16.5cm口径で、低音は駆動ユニット1基とパッシブラジエーター2基を組み合わせることで量感の拡大を狙っている。

KEF「Q750」

あふれ出るほどの過剰な低音が出てくるかと最初は少し不安を感じていたのだが、オーケストラ録音を聴いて意外に感じるほど低音は引き締まっている。たしかに重量級の低音ではあるが、それによって低音楽器の動きが停滞することはない。ショスタコーヴィチ作品に頻繁に出てくるチェロとコントラバスの細かく動き回るフレーズを一音一音切れの良い音で再現するので、引き締まったサウンドという感想が最初に浮かんできたのだ。演奏や録音の意図に反して再生システムが重々しい低音を再現する例はよく見かけるが、本機はその懸念を払拭するような切れの良い低音を再現する。

ただし、そうした本機の特徴を引き出すためには、横と背後の壁からある程度離し、足回りがぐらつかないようにケアすることがポイントだ。ブックシェルフ型に比べるとセッティングによる音の変化が大きいので、再生環境によってきめ細かく追い込むようにしたい。

ジャズのピアノトリオを本機で聴くと、ピアノの左手の音域に重量感があり、ベースとドラムも楽器がフルに鳴り切っている感触が伝わってくる。楽器のイメージが必要以上に広がりすぎないのはQ350と共通の美点で、一音一音に芯があり、鮮明な発音で音を聴き手の位置まで確実に届ける力強さがそなわる。Qシリーズ全体に当てはまることだが、音がスピーカーの位置に張り付かず、スピード感をともなって前後左右に広がっていく振る舞いがとても心地よい。今回聴いたアレッサンドロ・ガラッティのCDもそうだが、アコースティック志向の強い録音を聴くと、本機の応答の良さがよくわかる。

山之内氏は各種ハイレゾ音源を中心に用いながら試聴を行った

シューベルトのピアノ五重奏曲「ます」はピアノと4つの弦楽器の音量バランスが正確で、ピアノの高音とヴァイオリンが同じ音域で重なってもそれぞれの動きが埋もれず、解像感の高さが伝わってきた。音調自体はQ350よりも若干落ち着いた傾向なのだが、それぞれの楽器のアーティキュレーションなど、音楽的に重要な情報を漏らさず再現する力がある。KEFの他のモデルと同様、柔らかい音調のスピーカーではないが、過剰にクールなタッチになったり刺激的な音を出すことはなく、絶妙なチューニングで音を追い込んでいることがわかる。



ユニットの基本性能や仕上げの良さがこのクラスの水準を上回ることは最初に指摘した通りだが、実際の再生音を聴いてもその印象が揺らぐことはない。同軸方式ならではの正確な音像定位はもちろんのこと、応答性の良さや解像度の高さなど、Qシリーズのスピーカーはどれも長所がたくさんあるが、そこまでの性能をこの価格帯で実現したことには本当に驚かされる。従来モデルも安定した人気をキープしていたが、今回のリニューアルでQシリーズはさらに一段階評価が上がることに疑う余地はない。


特別企画 協力:KEF JAPAN

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