公開日 2016/05/26 10:00

オペアンプ交換も楽しめるハイレゾプレーヤー! ベンチャークラフト「VALOQ」レビュー

【特別企画】3種類のオペアンプ別に聴き比べ

■音質チェック! オペアンプを交換して3種類のVALOQを聴き比べる

それではいよいよ、本機の音質をチェックしていこう。今回はオペアンプに「MUSES 8820」を乗せた標準機を基準にしながら、異なるオペアンプを装着したサンプル機をほかにも2台用意し、合計3台を並べて聴き比べしてみた。2台にはそれぞれTIのバーブラウンから、ヘッドホンアンプ用に開発されたオペアンプ「OPA1622」、ベンチャークラフトのiOS対応ポタアン「VANTAM」にも採用実績があるオペアンプ「OPA627BM」を使った。リファレンスのイヤホンには「FitEar Air」、ヘッドホンはオーディオテクニカの「ATH-MSR7」を使った。

▼1:MUSES 8820搭載バージョン(スタンダード機)

標準仕様の「MUSES 8820」を使ったVALOQのサウンドは、バランスがよく自然な音色と質感を特徴としている。

スタンダードモデル(MUSES 8820搭載)の背面を開けたところ

MUSES 8820

エアロスミスの「Parmanent Vacations」から『Angel』ではボーカルや、エレキ&アコギのクリーンに突き抜けるハイトーンが心地よい。高さ方向の伸びやかさに富んだサウンドがこの曲の雰囲気によくマッチする。低域はほかのオペアンプの音に比べるとやや軽めだが、タイトでパンチ力があり、全体にバランスが整っているのでとても聴きやすかった。

マイケル・ジャクソンの「Off The Wall」から、アルバムタイトル曲の『Off The Wall』では、ボーカルの声がキリッと引き締まっていて精悍な印象を受ける。リズムも軽快で疾走感に富む。生楽器による演奏のダンスミュージックとは相性がとても良さそうだ。ドラムスのシンバルやクラッシュ、ハンドクラップの効果音はヌケがよく、余韻がきめ細かなグラデーションを描いて広がる。ピアノや金管楽器などメロディの音色は他のオペアンプに比べて少しあっさりめに感じられた

原田知世の「恋愛小説2〜若葉のころ〜」から『SWEET MEMORIES』では、解像感の高さとディティールの再現力に目を見張った。声質は透明感が強く、芯がしなやか。ビブラートや息継ぎなど細かい表情がよくみえる。声の輪郭も彫りが深い。豊富な情報量を無理なく引き出せる手応えもある。バックの演奏は、グランドハープの高音に混じりけがなく煌びやか。ウッドベースの低音は透明で歪みがない。生楽器による演奏をバランスよく自然な音色とともに楽しめるのが、このオペアンプを選ぶメリットだ。

クラシックの楽曲でもその魅力が冴え渡る。ミロシュの「アランフエス協奏曲」から『第1楽章:Allegro con spirito』では、ギターの自然な音色が柔らかく広がり、鮮やかなメロディラインを描き上げる。音の立ち上がりが素速く、ボディの深い共鳴から生まれる余韻がふわっと柔らかく空間に満たされたあと、静寂の中にすっと溶け込んでいく。

バックのオーケストラは弦楽器のハーモニーの解れがよく、倍音成分を豊かに引き出す。S/Nがよいので空間が広く見渡せる。ギターは高域の音色が華やかで、声楽系の楽曲も滑らかな声の質感を楽しませてくれた。

上原ひろみによるザ・トリオ・プロジェクトのアルバム「SPARK」から『Wonderland』では、やや硬質なタッチのピアノの音色が澄み切っていて、クリスタルのような輝きを帯びている。流麗なメロディのきらめきは3つのオペアンプの中で随一だった。ベースやドラムスの低音が少し軽く感じられるものの、その特徴を活かした軽快な見晴らしの良さを味わいたい。情報量が豊富なので、ピアニッシモの音量で弾かれた音まで、自然に耳に奥へ飛び込んでくる。

DSDはホリー・コールの「Girl Talk」から、タイトル曲の『Girl Talk』を聴いた。冒頭からアタックの立ち上がりがとても俊敏で筋肉質なウッドベースが足場をしっかりと固める。声質をリアルに蘇らせるボーカルと、濃密なピアノのメロディとが絡み合いながらゆったりと空間に溶けていく様を描き出した。

続いては、MUSES 8820を乗せたVALOQを基準にしながら他のオペアンプと聴き比べてみる。

次ページ続いて、オペアンプをOPA1622とOPA627BMに交換してみた

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