公開日 2016/01/29 10:00

【第144回】アマゾン VS セブンイレブン、「音が良い」のはどちらなのか?

[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

■流通の覇権を競う両社のイヤホン、どちらが上?

ではいよいよ実際に試聴!…と言っても「各1,000文字で詳しく!」みたいな製品でもないので手短に。

まずAmazon「E100」だが、相対的なバランスとしては中低域が強いが中低域が良好なわけではなく、高域側がぼんやりしすぎていて中低域が目立つといった感じだ。その中低域もボワンと締まりのない量感だし、問題の高域は女性ボーカルのシャープな成分や息遣いやディストーションギターのエッジをぼやけさせつつ、しかしシンバルにはチリチリした歪み感を出すなど、絶妙のゆるさ加減。

しかし何というかラジオ的な聞きやすさを感じられる曲や場面もある。ラジオ番組やトークと相性が良くて聞きやすいという意味ではなく、周波数帯域やダイナミックレンジがネットでなくFMラジオのように大胆に整理されて、聞き疲れはしなさそうといった意味合いでだが。

いずれにせよ「聴き込む」にはあれだが「聞き流す」にはこれもありかな、という感じのイヤホンだ。遮音性と装着感は悪くないので、その点からもそういう感覚での使い方には合っていると思う。

一方のセブンイレブン「FX711S」は、Amazon「E100」と比べればすっきりとしており、高域もシャープさもある。比較対象がアレだとそれを下回ることは至難の技なので、ここは当然だ。低域側だと例えばベースは、太さや量感は少しコンパクトだが素直な感触だし十分に明瞭。外装と同じく898円と1,077円の差は小さくないと感じさせてくる。

ただE100がそのラジオ感というかローファイ感で「聞き流すには逆にこれもありかな…」を思わせる個性を備えているのに対して、こちらにはそういう独特さはない。遊びで聞くには優等生すぎるけど本気で聴くには力不足。面白みを求めるのは難しい。

いやしかし、1,000円程度で「遊びで聞くには優等生すぎる」と感じるような音にまとめてあるというのは、普通に考えればやはり見事だ。さすがセブンイレブンさすがビクター。

なおこちらも、小さいおかげで装着感は良好。しかし遮音性はちょい物足りない。僕にはイヤーピースが少し小さめだったので、そこが問題なくフィットするユーザーであれば遮音性と低音はもう少し伸びるかもしれないが。

というわけで今回はAmazon.co.jpとセブンイレブンが1,000円前後で展開するイヤホンをチェックしてみた。結果どちらも「健康で文化的な最低限度のイヤホン」にはなり得るのではないかと思う。他に選択肢のない状況で「こんなイヤホンならない方がましだ!」とは思わないだろう。

高級品が高品質なのは当然といえば当然。安物さえも粗悪ではないというこちらの状況こそ、イヤホンという分野の成熟をより強く示しているのかもしれない。

高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi
趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。


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