公開日 2014/08/15 10:54

【レビュー】4Kアダルト動画の可能性をマジメに検証する

4Kテレビと4K PCで徹底視聴
編集部:風間雄介
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

4Kアダルト動画普及への課題とは?

取材を通して、4Kアダルト動画の高いポテンシャルを全身で体感できたわけだが、課題もいくつか指摘しておこう。

まずは被写体側の準備がさらに難しくなる、ということ。肌などをしっかり手入れしないと4K視聴に耐えられず、かえって興趣を削ぐ可能性もあるのだ。この点については、途中から取材を見ていたAVレビュー編集部の“画質変態”ことA部も強く同意していた。

AVレビュー編集部のA部も興味津々の様子

あとは環境面の整備も必要だ。撮影や編集環境の4K対応が必要になるのはもちろん、モザイク処理のためのシステムも4K対応する必要がある。「ちょっとテストで1本作ってみました」という程度なら力技でできるだろうが、システマティックに大量にこなすとなると投資が嵩む。

映像の流通経路、流通形態についても考える必要がある。現状で4K映像を収めるパッケージ規格は存在せず、放送波に乗せるのも当初は難しいだろうから、必然的にストリーミングかダウンロードか、ということになる。圧縮効率の高いHEVCでエンコードして配信出来ればよいが、ハードウェアエンコーダー導入には追加の設備投資が必要となる。もしHEVCで配信出来たとしても、再生側のPCでソフトウェアデコードするのに、かなりのマシンパワーが必要だ。

こういったことを考えあわせると、中小メーカーが話題作りの意味も含めてチャレンジするフェーズの現段階では、MPEG-4 AVC/H.264系を使うのがファーストチョイスになると思う。4K映像のディテールをしっかり残すためには、最低でも40〜50Mbps程度は欲しいところだ(もちろんもっと高いに越したことはない)。それだけのハイビットレートとなると、ストリーミングは回線スピードから考えて難しく、ダウンロードにも膨大な時間がかかる。HEVCのエンコード/デコードソリューションが早く普及して欲しいものだ。

最後に、“そもそも論”になってしまい恐縮だが、ディテールがしっかり見える美しい映像への対価として、我々がどの程度プレミアムを支払う用意があるのかということも、もちろん考えなければならない。たとえばパッケージソフトでは、いまだにBD版が用意されている作品は少数で、原則としてメジャーな単体女優を複数人起用した大がかりな作品などに限られる。裏を返せば、多くの人はDVDの画質で十分と考えているわけだ。私見だが、これにはSD映像の方が適度に情報量がマスクされ、逆に“いい感じ”になるという理由もありそうだ。

アダルト動画において、現状ではHD解像度すらさほど求められていないのに、それよりハンドリングしにくい4K映像が果たして必要とされるだろうか。もし「必要」という人が一定数存在したとしても、制作者の投資に見合うだけのプレミアムな価格設定を見たとき、実際に支払うかどうかという壁が次に立ちはだかることになる。

…とネガティブなことも指摘せざるを得ないが、筆者自身は今回の体験を通じて、その可能性が大きいことを実感できた。4K映像にしか表現できないリアリティをうまく作品性とマッチさせられたら、大きく花開く可能性がある。

4Kのあとには8Kも控えている。果たしてアダルト動画もその歩調にあわせて高精細化に向かうのか、それともSDや720p程度が主流のまま進むのか。今後の動向を注視し、機会があったら再び検証を行ってみたい。

前へ 1 2 3 4 5

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

トピック

クローズアップCLOSEUP
アクセスランキング RANKING
1 DALIのコンパクトスピーカー「KUPID」はテレビ横にも置きたくなる!エンタメサウンドも相性抜群
2 ビックカメラ、旧池袋マルイ跡地「IT tower TOKYO」に出店。2026年3月オープン予定
3 Valerion、4Kレーザープロジェクター&スクリーンのセットを最大43%オフで販売する「クリスマスセール」
4 スクリーンを下ろせば和室がホームシアターに変身! ユニークな機器レイアウトに注目
5 ORB、“最良の音楽表現” を目指したフラグシップヘッドホンアンプ「JADE casa Ultimate」
6 「ベーシック」の常識を覆すハイレベルなインターコネクトケーブル Zonotone「Granster AC-2000」
7 KEF、対象スピーカー購入者全員へChord Company製ケーブルをプレゼントするキャンペーン
8 LG、RGBマイクロLEDテレビ「Micro RGB evo」。CES2026で正式発表へ
9 NICEHCK、新フラグシップIEM「Rockies」。1DD+2BA+2ESTのハイブリッドドライバー搭載
10 <ポタフェス>B&W、フラグシップヘッドホン新旧比較/デノン、リアルウッドヘッドホンをアナログで味わう
12/18 10:50 更新
音元出版の雑誌
オーディオアクセサリー199号
季刊・オーディオアクセサリー
最新号
Vol.199
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
特別増刊
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
最新号
プレミアムヘッドホンガイドマガジン vol.23 2025冬
別冊・プレミアムヘッドホンガイドマガジン
最新号
Vol.23
プレミアムヘッドホンガイド Vol.33 2025 SUMMER
プレミアムヘッドホンガイド
(フリーマガジン)
最新号
Vol.33(電子版)
VGP受賞製品お買い物ガイド 2025年冬版
VGP受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年夏版(電子版)
DGPイメージングアワード2024受賞製品お買い物ガイド(2024年冬版)
DGPイメージングアワード受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年冬版(電子版)
WEB
  • PHILE WEB
  • PHILE WEB AUDIO
  • PHILE WEB BUSINESS
  • プレミアムヘッドホンガイド
  • ホームシアターCHANNEL
  • デジカメCHANNEL
AWARD
  • VGP
  • DGPイメージングアワード
  • DGPモバイルアワード
  • AEX
  • AA AWARD
  • ANALOG GPX