公開日 2026/09/22 23:00

Beats、最上位ヘッドホン「Beats 360」。クッション交換可能で「ヘッドホンをスポーツシューズのように」

音質ノイキャン性能なども向上させた
編集部:原田郁未
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Beatsは、ワイヤレスヘッドホンの新フラグシップモデル「Beats 360」を9月24日(木)に発売する。販売価格は59,800円(税込)。ブラック、クラウド、ピンク、スカイの4色をラインナップし、Appleオンラインストアで注文受付を開始する。

Beats 360

同製品は、付け替え可能なイヤークッションとヘッドバンドクッションをBeats製品として初めて採用。素材やカラーの組み合わせにより、最大256パターンのカスタマイズが可能としている。

またフラグシップモデルにふさわしく音質も強化したほか、ノイズキャンセリング性能や外部音取り込みの性能も向上させた。つまり、ファッション性と音質、使い勝手をそれぞれ高めたモデルと言える。

イヤークッション、ヘッドバンドクッションを付け替えられる

本稿前半では製品の詳細を、後半では発売に先駆けて行われた記者発表会で明かされた開発思想や、実際の試聴を含めてレポートする。

Beats初、イヤークッションとヘッドバンドクッションを交換可能に

Beats 360を象徴する機能が、イヤークッションとヘッドバンドクッションをユーザー自身で交換できるシステムだ。Beatsが実施した調査では、ヘッドホンのカスタマイズに対するニーズがあり、中でもクッションを交換できることへの関心が高かったという。

なお、便宜上イヤークッションと表記するが、クッション部だけでなくイヤーパッドとイヤーカップが一体化しており、それをまるごと取り替える構造となっている。

さて、イヤークッションの素材としては「パフォーマンスニット」と 「ウルトラプラッシュ」の2種類を開発した。それぞれの特徴は後述する。どちらもイヤーカップ部はシリコンを採用している。

本体となるフレーム部には、同色の「パフォーマンスニット」クッションが標準付属する。交換用の「Beats 360 クッションキット」は別売で8,900円(税込)となる。

イヤークッションとヘッドバンドクッションをセットにしたもので、パフォーマンスニットは本体カラーに加えてネイビー、ボルトの全6色、「ウルトラプラッシュ」についてはブラックとクラウドの2色を用意する。

クッションには、表面に凹凸のあるニット素材「パフォーマンスニット(左端、左から3番目)」と、既存モデルと同様のレザー素材の「ウルトラプラッシュ(左から2番目、右端)」を用意
 
本体フレーム4色とクッション8種類の組み合わせで32パターン。さらにイヤークッションとヘッドバンドクッションを異なる色にすれば、最大256パターンの組み合わせを作れ、自分好みの素材や色にカスタマイズできる。ただし、左右のイヤークッションを違う色にしたり、違う素材にすることはできない。

イヤークッションは回転させ、機械的にロックする構造を採用。ヘッドバンド側のクッションも着脱でき、外観だけでなく用途や装着感に合わせて変更できる。

クッション部は自由に取り外し可能。写真はクラウドカラーの本体に、別売りのボルトカラーのクッションを装着したもの

また、イヤークッション内部のセンサーが装着されたクッションの構成を識別し、ANC、外部音取り込みモード、イコライゼーションに専用のフィルタリングを適用。異なる素材を使用した場合でも、一貫した音響性能が得られるよう自動調整する。電源投入時には、左右のイヤークッションが正しく取り付けられていることを知らせる確認音も鳴る。


クッション部分は磁石などを使わず、物理的な機構で取り外しする。これにより密閉感も担保するという

本体に同梱されるパフォーマンスニットは、通気性と軽快な装着感を重視した新しいクッション素材だ。内部には音響面も考慮して作られた形状記憶素材を用い、表面は36本の高強度マイクロファイバーによるダイヤモンドニット構造で仕上げている。柔らかさや耐久性、通気性に配慮し、ワークアウトなどでの安定した装着感を狙ったとしている。


パフォーマンスニットのクッション。無数の通気孔で着用時の蒸れを防ぐ

そしてウルトラプラッシュは、Beats Studio ProやBeats Solo 4にも使われているレザー素材を採用した。シームレスな表面仕上げとメモリーフォームを組み合わせ、長時間のリスニング時の快適性に配慮したとしている。

ウルトラプラッシュのクッション。従来モデルと同様のレザー素材

「完全ワイヤレス構造」でヘッドバンド薄型化、接続性や装着性も向上

筐体設計も従来のオーバーイヤーヘッドホンから大きく見直したという。同製品は、左右のイヤーカップそれぞれにバッテリー、アンテナ、処理コンポーネントを搭載。ヘッドバンドを通る配線や信号経路を最小限にしており、同社ではこれを「完全ワイヤレス構造」と説明している。

これにより、ヘッドバンド内部の配線スペースに設計を左右されにくくなり、ヘッドバンドを薄型化できた。左右それぞれにアンテナを配置できることも、接続性能の向上につながったとしている。また、ヘッドバンド部は曲げにも強く、これも装着性の良さに寄与している。

ヘッドバンド部分には必要最低限の配線しか通っておらず、本体部に機能を集中させたという

クッション部が受け持つ荷重をStudio Pro比で約1.5倍に増やし、圧力の分散を図ったと説明している。薄型ヘッドバンドには極薄の鋼板バネを中心とした構造を採用し、人間の頭部に沿うカーブや側圧、クッション密度、イヤーカップの可動域まで含めて最適化している。

新設計したドライバーやダイヤフラムで音質向上。NC性能も1.75倍に

音響システムはBeats 360専用に新設計。ドライバーには40mmデュアルマグネット式ダイナミックトランスデューサーを搭載する。10回以上の試作・改良を経て開発したリング型デュアルネオジムマグネットを採用し、ドライバー出力はBeats Studio Pro比で12dB向上したという。

ダイアフラムは3層構造。厚みがありながら軽量で制振性の高い内層を、薄く剛性の高い2枚の外層で挟み込み、不要な共振を抑えながら効率的に駆動する。これに専用のハイダイナミックレンジアンプ(HDRA)を組み合わせ、低域の再現性や広いダイナミックレンジ、細部の表現、全帯域での低歪みを図ったとしている。

3層構造のダイヤフラムを搭載した

トランスデューサー中央部と外周にはベントを設け、周囲の空気の流れをコントロール。背圧を適切に処理することで、歪みを抑えながら安定した音響性能を得るとしている。

アクティブノイズキャンセリング(ANC)も強化。本体に9基のデジタルMEMSマイクを搭載し、このうち8基をANCに使用する。Beats独自設計の次世代カスタムチップとアルゴリズムにより、周囲の環境とヘッドホンの装着状態を分析しながらANCをリアルタイムに調整する。Beats Studio Proとの比較では、アクティブ/パッシブを含む総合的なノイズキャンセリング性能が最大1.75倍に向上したとしている。

外部音取り込みモードも改良。周波数レスポンスを拡張するとともに、マイク配置と処理能力を見直し、より自然な外音再現を目指したという。

さらにANCと外部音取り込みをともにオフにした際には、「アダプティブイコライゼーション」が動作する。ヘッドホンと耳との音響的な位置関係を継続して分析し、装着状態に応じて周波数特性を動的に補正。個人差や装着のずれがあっても、一貫したサウンドを届けることを狙う。

使用イメージ。ANC機能の向上で街中の騒音も軽減

アップル製品との連携だけでなくAndroidにも最適化

SoCにはアップルのHシリーズではなく、Beats独自設計の第4世代カスタムプラットフォームを採用。通信はClass 1 Bluetooth 5.3に対応する。対応コーデックはSBCとAAC。

アップル製デバイスではワンタッチペアリング、iCloudペアリング、自動切り替え、オーディオ共有、「探す」、「Hey Siri」、パーソナライズされた空間オーディオなどを利用できる。

Androidデバイスとの連携では、Fast Pair、音声の切り替え、Google Find Hub、音声アシスタント、Android版Beatsアプリとの連係に対応。なおBeatsアプリの利用にはAndroid 15以降が必要となる。

本体9基のマイクは通話性能にも活用される。仕様上は音声ピックアップに3基を使用し、このうち2基をANCと共用する。

上述のとおり新たなSoCと、AIで学習したアルゴリズムを組み合わせた音声処理アーキテクチャを搭載。DSPの処理能力は前世代のBeats独自プラットフォーム比で約2倍とされ、数百時間分の音声データで学習したモデルによってユーザーの声と環境ノイズを分離する。

3基のマイクによるビームフォーミングを基本とし、強風などノイズの大きい状況では追加マイクの情報も活用。状況に応じてS/N比の最適化を図り、ANC/外部音取り込みのどちらを利用していても通話できる設計とした。

空間オーディオにも対応。左イヤーカップに加速度センサーとジャイロスコープを内蔵し、両センサーから構成されるIMUが頭部の動きをリアルタイムに追跡。ユーザーの頭の動きに応じて音場の位置を変化させる。

アップルのパーソナライズされた空間オーディオとダイナミックヘッドトラッキング、ドルビーアトモスにも対応する。パーソナライズ用プロファイルの作成にはTrueDepthカメラ搭載iPhoneが必要で、対応するアップル製デバイス間では作成したプロファイルを同期できる。

操作は左右イヤーカップに物理ボタンを振り分けた。右イヤーカップには音量+/−と再生/一時停止ボタンを配置。1回押しで再生/一時停止、2回押しで次の曲、3回押しで前の曲を操作できる。通話時には1回押しで応答やミュート/ミュート解除、2回押しで通話終了が可能。長押しではSiriまたはAndroidの音声アシスタントを呼び出せる。

左イヤーカップには電源ボタン、USB-Cポートに加えて、Beatsとして初となる専用の「リスニングモードボタン」を装備。標準ではANCと外部音取り込みを切り替え、設定からオフ/アダプティブEQも選択肢に加えられる。なお、USB-C端子は充電用で、デジタル音声入力は行えない。

底面から見たイメージ。基本操作は物理ボタンで対応

バッテリー駆動時間は、ANC+パーソナライズされた空間オーディオ使用時、ANCオフ+アダプティブEQ使用時ともに最大32時間。5分間の充電で最大1時間再生できる「Fast Fuel」にも対応する。

また、同製品はBeatsのオーバーイヤーヘッドホンとして初めてIPX4等級の耐汗耐水性能を取得した。ドライバー背面に独自の仕切りを設け、必要な音響ベントを維持しながら電子部品側への液体侵入を抑制。ワークアウトや屋外での使用を想定している。

使用イメージ。パフォーマンスニット、耐汗性でワークアウト時の使用を訴求

ワークアウト後には、汗を吸ったクッションを取り外して交換することもできる。ただし本機は防水ヘッドホンではなく、水泳など水上/水中でのスポーツには非対応。また耐汗・耐水性能は永続するものではなく、濡れた状態での充電も避ける必要がある。

環境面では、本体のイヤーカップ、スピーカー筐体、内部部品など複数のパーツに80%再生プラスチックを採用。Beatsのオーディオ製品として過去最大量の再生プラスチックを使用したとしている。全マグネットには100%再生希土類元素を採用。パッケージには再生繊維または植物由来素材を使用する。

本体サイズは165.5W×191.3H×87.1Dmm、質量294.5g。付属ケースは225W×225H×85Dmm、88g。本体と同色のパフォーマンスニットクッション、キャリングケース、クイックスタートガイドを同梱し、USB-C充電ケーブルと電源アダプターは別売りとなる。リップストップ生地のキャリングケースが付属する。

付属のキャリングケース

なお、Beats 360の投入に合わせ、AppleオンラインストアおよびApple Store直営店ではBeats Studio Proの価格を、従来の54,800円から5000円値下げした49,800円(税込)へ改定する。

記者発表会レポート。「ヘッドホンをスポーツシューズのように考えた」

ここからは、発売に先駆けて開催されたメディア向け発表会の模様を紹介する。発表会には本社からVice-President, Hardware Engineering and Operations(ハードウェアエンジニアリングおよびオペレーション担当副社長)のマシュー・コステロ氏が登壇し、プレゼンを実施した。

マシュー・コステロ氏

マシュー氏は、Beats 360について単なる「Studio Proの次世代モデル」ではなく、オーバーイヤーヘッドホンをよりアクティブなライフスタイルへ広げることを意図して一から設計した製品だと説明した。

開発にあたってはオーディオ製品だけを研究するのではなく、大きなインスピレーション源として「スポーツシューズ」を挙げた。スポーツシューズは軽量で、長時間着用しやすく、汗や汚れへの耐久性を備える。同時に色や素材を選び、ファッションや自己表現の手段としても使われている。

こうした発想から、交換可能なクッションやIPX4対応、装着バランスを見直した設計を採用したという。

Beats創業20周年。「アップル傘下でもBeatsらしさは変わっていない」

発表会では、Beatsブランドの歩みについても触れられた。登壇したBeats担当者は、ブランドのこれまでの歩みを振り返るとともに、自身が同社で約17年間勤務し、Apple傘下となってからも約12年が経過したと説明した。

担当者によれば、アップル傘下となってからも、Beats独自のブランドアイデンティティやカルチャーとの距離感、音楽へのコミットメント、チームで製品を作る姿勢は変えていないという。

一方、アップルのハードウェアやエンジニアリングのリソースを利用できる点は、大きな強みになったと説明。製品開発の根底には、ブランド初期から掲げてきた「アーティストが意図した音をリスナーへ届ける」という考え方があるとした。

スポーツ用途を強く打ち出したBeats 360でも、耐汗耐水性能やフィット感、メンテナンス性と、フラグシップモデルとしての音質との両立を図ったという。

なぜ今、オーバーイヤーヘッドホンなのか?

質疑応答では、「なぜ今、スポーツ用途まで含めてオーバーイヤーヘッドホンを強化するのか」というテーマについても説明された。

同社の認識では、約8年前にはAirPodsをはじめとする完全ワイヤレスイヤホンへユーザーが大きく移行し、携帯性の高い小型イヤホンが中心になった。一方、近年はオーバーイヤーヘッドホンがファッションやスポーツのシーンで再び存在感を増しているといい、その理由のひとつとして「自己表現」を挙げた。

「自己表現」をテーマとした展示も実施。ファッション面でも訴求する

オーバーイヤーヘッドホンは耳周辺に大きな面積を持つため、イヤホンよりもカラーやデザインが外から見えやすい。ファッションの一部として使いやすく、今回採用した交換式クッションも、こうした特徴を広げるものと位置付けている。

もうひとつの理由として挙げたのが「没入感」だ。ジムや屋外といった騒音の多い環境では、耳を覆うオーバーイヤー型とANCを組み合わせることで、周囲の環境音を抑え、トレーニングや音楽へ集中しやすくなるとの考えを示した。

アスリートによる使用をカラーや素材開発にも反映

発売前からBeats 360は、世界各地のアスリートが着用し、SNSで話題になるティザープロモーションが行われていた。マシュー氏はワールドカップ、ウィンブルドン、全米オープンといった国際的なスポーツイベントにも言及し、大規模なスポーツ大会を世界に向けた重要な製品訴求の機会と位置付けていると説明した。

実際にアスリートに製品を使用してもらう中では、開発側が想定していなかったカラーやクッションの組み合わせを選ぶ例もあったという。このことから、「このフレームならこのクッション」と、あらかじめブランド側が完成形を決めるのではなく、ユーザーの実際の使用例から得られた反応を、今後のカラー展開や素材開発に活かしたいと語った。

交換クッションは「着替える」感覚。異なる素材も検討

パフォーマンスニットとウルトラプラッシュの使い分けについては、「運動専用や日常用というように、厳密に分けるものではない」と説明した。

パフォーマンスニットは通気性と安定感の高さからワークアウトでの使用を想定する一方、ウルトラプラッシュについては、長時間の移動などで柔らかい感触を好むユーザーを想定。担当者自身も、長時間のフライトなどではウルトラプラッシュを選ぶと話していた。

一方、フィット感は髪型や髪の量、頭部形状、好みによっても変わる。色だけでなく素材も「着替える」感覚で、ユーザー自身に選択してほしいという考えだ。発売時は2素材だが、今後は異なる素材のクッションについても検討したいと語ってくれた。

会場では本体とクッションの様々な組み合わせが試せる展示を実施

新開発ドライバーのサウンドを試聴

発表会終了後には実機を試聴できた。試聴には、タイラー・ザ・クリエイターの「Stop Playing With Me」を使用した。シンセサイザーの反復にドラムとベースが重なる、エレクトロニック色の強い楽曲だ。

装着した様子

短時間の試聴では、低域の量感を確保しつつ、シンセサイザーやクラップ、ドラムのアタックを見通しよく描く、明朗快活なサウンドという印象を受けた。ベースだけが前面に出ることはなく、中域から高域に至るまでの、様々な音色をしっかり描き分ける解像感の高さが印象的だ。

本体を手に取ると、軽量であることにすぐ気づく。これが軽快な装着感につながっている。パフォーマンスニットのクッションは、からっとした触り心地で、試聴している時も耳の周囲のムレを感じなかった。装着したときの側圧もよく調整されている。

イヤーパッドをウルトラプラッシュに交換すると、全く違う装着感になる。より密閉感が増し、周囲のノイズを抑えてくれる。

なお、イヤーパッドやヘッドクッションの交換は非常にかんたん。慣れたら一瞬で取り外しできる。これなら、本機最大の特徴であるクッション交換を手軽に楽しめるだろう。

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