ノイマン、新モニタースピーカー。密閉型「KH 310 II」とバスレフ型「KH 350」/プロエンジニアによるコメントも
ゼンハイザージャパンは、同社が展開するNeumann(ノイマン)の3ウェイ・スタジオモニタースピーカー「KH 310 II」「KH 350」を発表した。KH 310 IIは11月18日(水)に発売し、KH 350は本日10月30日(金)より受注を開始する。価格はいずれもオープン。KH 350の出荷開始日は今後の案内としている。
両モデルは、「2つのモニターに共通する、1つのリファレンス基準」を掲げて開発されたプロフェッショナル向けモニター。KH 310 IIはロングセラーモデル「KH 310」の音響設計を継承・発展させた密閉型、KH 350はより深い低域再生と広いリスニング環境への対応を目指した新設計のバスレフ型となる。
共通して、同社設計の3インチ・ソフトドーム・ミッドレンジ、1インチ・トゥイーター、新設計の8.25インチ・ウーファーによる3ウェイ構成を採用。32bit DSPと高出力アンプを搭載し、低歪、高い中域解像度、正確なトランジェントレスポンスや位相特性を追求している。アンプ出力はいずれも585Wとなる。
3ウェイ方式を採用する理由について同社は、人間の耳が特に敏感な中域を専用ドライバーに受け持たせ、ウーファーによる大振幅の低域再生から分離することで、ボーカルや楽器の細部を明瞭にモニターできるためと説明。新設計のウーファーでは大振幅時の歪みを抑え、高い音圧でも正確な再生を維持することを目指した。
DSPはルーム補正に加え、各ドライバーの周波数特性や位相、帯域間のつながりを精密に制御する役割も担う。両モデルともルーム補正システム「MA 1 Automatic Monitor Alignment」に対応。アナログ入力に加え、AES3id規格の同軸デジタル接続をサポートし、ステレオからサラウンド、イマーシブオーディオまで幅広い制作環境を想定する。
密閉型の音響設計を継承し、DSPを導入した「KH 310 II」
KH 310 IIは、従来のKH 310が持つ自然なサウンドバランスやクリアな中域、密閉型キャビネットを受け継ぎながら、DSP、新設計ウーファー、高出力アンプなどを導入した後継モデル。
従来モデルと比較してアンプ出力を約2倍に高め、最大音圧レベルは5dB向上。歪みの低減とリニアリティの改善も図った。キャビネット寸法は従来機と同じとしており、既存のKH 310を使用するスタジオでも置き換えやすい設計とした。
密閉型キャビネットは、内部の空気を利用してウーファーの動きを制御。低域の立ち上がりや収束の速さ、低い群遅延を特徴とし、低音の輪郭や中低域の処理を精密に確認するニアフィールド用途を重視している。
推奨リスニング距離は1.0 - 2.5m。レコーディング、ミキシング、マスタリングのほか、ボーカルや中低域を細かく追い込む作業などを想定する。
バスレフ方式で低域と音圧性能を追求した「KH 350」
KH 350は、KH 310 IIとフラグシップモデル「KH 420」の間を埋める新設計モデル。縦型キャビネットを採用し、容積はKH 310 IIのおよそ2倍となる。バスレフ方式によって、より深い低域と高い音圧性能を確保した。
低域再生は27Hz(±6dB)まで拡張。大型の「MMDウェーブガイド」によって放射特性を精密にコントロールし、広いリスニングエリアでも安定した音像定位を目指す。
推奨リスニング距離は1.2 - 3.0mで、ニアフィールドに加えてミッドフィールドにも対応。広いコントロールルームや映画音楽制作、ポストプロダクション、放送、サラウンド/イマーシブオーディオのLCR/サラウンドスピーカーなど、大きな音圧と広い低域レンジが求められる環境を想定する。
共通のドライバーやDSP技術を用いながら、KH 310 IIは密閉型ならではの低域の立ち上がりや収束、設置性を重視。KH 350は深い低域や音圧効率、広いリスニング環境への対応を重視しており、制作環境や好みに応じて選ぶ2つの選択肢と位置づけている。
KHシリーズを使うエンジニア3名が新モデルを評価
同社は都内で新製品発表会を開催。発表会内で開催されたトークセッションには、音響ハウスのレコーディングエンジニア・櫻井繁郎氏、セガサウンドのレコーディングエンジニア・宮 吉忠氏、スタジオアルテのレコーディングエンジニア・長谷川巧氏が登壇した。
3名はいずれもKHシリーズを制作環境に導入しており、櫻井氏はKH 310、宮氏はKH 150、長谷川氏はKH 420を使用しているとのこと。
従来のKH 310を使用する櫻井氏は、そのサウンドを「誠実な音」と表現。大きな入力にも耐えられる業務機としての信頼性も、導入理由のひとつに挙げた。
KH 310 IIについては、従来モデルのパワー感を継承しながら、「ミッドレンジやミッドローを処理しやすくなった」と評価。DSPによるルーム補正をかけていない状態でも中低域を追い込みやすく、従来機からの進化を感じたという。
ゲーム音楽制作に携わる宮氏は、EDMなど低域の動きが速い楽曲ではキックとベースの分離やスピード感が重要だとして、KH 150を導入したと説明。
今回の2機種については、KH 350にKH 150にも通じるバスレフ型らしい低域の特徴を感じる一方、KH 310 IIの「密閉型ならではの低域の切れ」とパワー感を評価した。
KH 420をメインモニターに使う長谷川氏は、映画音楽やテレビ、ゲームなど、大きなダイナミックレンジや低域が求められる制作を多く手掛ける。
新モデルについては「密閉型とバスレフ型の違いが明確に出ている」と評価。自身の好みではKH 350に惹かれるとしつつ、アーティストと一緒に制作する場面ではKH 310 IIが使いやすいケースもあるとして、用途や好みに応じた選択を薦めた。
トークでは、両モデルが対応する「MA 1 Automatic Monitor Alignment」にも話が及んだ。MA 1は、専用測定マイクで室内特性を測定し、DSP搭載のKHシリーズを補正するシステム。周波数特性だけでなく位相特性も含めて調整し、ステレオからサラウンド、イマーシブオーディオ、サブウーファーを含むシステムまで対応する。
櫻井氏は、これまでDSP補正に必ずしも積極的ではなかったというが、今回の試聴では補正後の方が「音の見通しが良くなり、ピントが合う」と感じたと説明。特に低域を処理しやすく、細部を把握しやすくなったと評価した。自身のKH 150でMA 1を使用している宮氏も、測定で判明した低域の膨らみを補正することで、「低音の切れが良くなった」と話した。
長谷川氏は、複数のスピーカーを配置するDolby Atmos環境など、現代の制作環境ではDSP補正が「必須に近い」と指摘。すべてのチャンネルを理想的な位置に配置することは難しく、MA 1のような補正システムが、その差を詰める重要な手段になると説明した。測定時のマイク位置を数値で案内する操作性や、補正結果をグラフで確認できること、ターゲットカーブを任意に調整できる点も評価していた。


























