「オーディオは人々の希望を支える」。MAYAさんイベントも大盛況、「第9回北陸オーディオショウ」レポート
富山県のオーディオ専門店・クリアーサウンドイマイは、北陸エリア最大級のオーディオショウ「第9回北陸オーディオショウ」を、4月18日(土)、19日(日)の2日間、ボルファートとやまで開催した。
北陸オーディオショウは、2016年に北陸初のオーディオイベントとしてスタート。9回目となる2026年は、「オーディオは人々の希望を支える」というテーマのもと、国内外の人気メーカー32社が参加した。
まず、クリアーサウンドイマイ代表取締役社長の今井芳範氏に、第9回目の意気込みを尋ねた。
ーー第9回北陸オーディオショウの狙いをお聞かせください。
今井:2024年1月に発生した能登半島地震から約2年が経ち、物理的な復旧はかなり進みましたが、心の傷は未だに癒えることはありません。被災地では人口減少が進んでおり、特に若い世代の流出が際立っています。そんななか、能登出身の若いミュージシャンの方々が災害復興支援コンサートに積極的に参加されているのを見て、能登への深い想いと行動力あふれる姿勢に触れ、感銘を受けました。
そこで第9回は「オーディオは人々の希望を支える」をテーマに掲げました。いまも能登地方に留まっている方に癒しを提供し、少しでも心を明るくしたい。音楽やオーディオにはそんな力があると信じています。
ーー今回の見どころをお聞かせください。
今井:オーディオのハイエンド化が進んでいると言われている昨今ですが、ハイエンド機器ばかりデモをしていても、お客様のニーズと乖離してしまう。そこで、オーディオを身近に感じていただけるような企画を考えました。
たとえば、評論家の土方久明先生とトップウイングの菅沼さんがオーディオの最先端を紹介するYouTubeチャンネル「土方久明のオーディオ最先端」の出張編を開催する運びになりました。
また、月刊「Stereo」ではオーディオライターの田中伊佐資さんと吉野俊介編集長による連載「ヴィニジャン」が人気ですが、そのヴィニジャンも出張編を開催いたします。田中伊佐資さんと吉野編集長の漫才のようなやり取りを通じて、オーディオの楽しさを感じていただきたいです。
2日目の19日には、石川県珠洲市出身のシンガーソングライターギタリスト・大塚 育さんによるイベント「声が、音楽になる瞬間。DIPTYQUE AUDIOで聴く大塚育」を開催します。大塚さんご自身は音楽を通じて何かできることはないかと模索しながら、能登復興支援コンサートに熱心に参加されています。そうしたイベントを通じて、お客様に少しでも希望を感じていただければと思っています。
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「北陸オーディオショウ」の会場は3階と4階の2フロア、9のブースに32のメーカー・商社が出展し、試聴デモを実施。ここからは18日当日の各ブースの模様の一部をレポートしていくことにしよう。
【珀水】SOULNOTE/エミライ
4階にある珀水ルームにはSOULNOTEとエミライ、シーエスフィールドが出展。ここではSOULNOTEとエミライのデモの様子をご紹介する。
SOULNOTEは、プリメインアンプ「A-2 ver.2」、DAC「D-2 ver.2」をデモしていた他、SOULNOTEとスフォルツァートが共同開発したオーディオ用通信プロトコル「USS(Ultimate Sound Stream)」のメリットについて、エンジニアの加藤秀樹氏が力説。近々、USSプロトコル対応へのアップデートが予定されるネットワークトランスポート「Z-3」のデモを行っていた。


エミライは、英国ブランドPMC「Prophecyシリーズ」のトールボーイ「Prophecy 9」を土方久明氏の解説を交えてデモンストレーション。土方氏は、浅いカーブと急なカーブという2つの異なる数理曲線を組み合わせて設計された特殊な形状のウェーブガイドや、キャビネット構造に採用されたトランスミッション方式など、PMCならではの技術について解説しながら、今季グラミー賞を受賞した作品を中心に優秀録音を再生していた。
【琥水】スペック/PDN/トップウイング/トライオード
4階 琥水ルームにはスペック、PDN、トップウイング、トライオードが出展。ここではPDN、トップウイング、トライオードのデモの様子をご紹介する。
PDNはトーレンスのダイレクトドライブ方式アナログプレーヤー「TD403DD」を、パラダイム「PERSONA 5F」と組み合わせてデモ。上位機「TD1500」と同じトーンアームを採用しながら、22万円という比較的お求めやすい価格を実現したTD403DDの魅力をアピールしていた。なお、デモ機のカラーは5月20日より発売予定の新色「OAK MAT」。
トップウイングは、評論家 土方久明氏とトップウイングの代表・菅沼洋介氏によるYou Tubeチャンネルの出張版となる「オーディオ最前線 出張編」を開催。18日17時20分からの回では、4月末リリース予定のオーディオグレード・スイッチングハブ「OPT REF SW」の最新情報を会場で発表するとともに、OPT REF SWをハブとして使用しなかった場合/使用した場合、さらにSEPモジュール「Silent Fidelity SFP」を用いてSFP接続した場合など、さまざまなネットワーク構成で比較試聴。
土方氏は「ネットワークプレーヤのポテンシャルを引き出すには、前段のネットワーク構成が大事。比較的お求めやすい価格を実現したトップウイング製品ならコストを抑えて音質にこだわったネットワークを構築できる」と解説していた。
トライオードは、真空管アンプ「JUNONE 845SE」をスペンドール「Classic 100Ti」と組み合わせてデモ。代表の山崎順一氏は高校生の時、オーディオ好きの友人が自作した真空管アンプの音に魅せられ、真空管アンプに興味を持つようになったエピソードを披露しながら、因幡晃のアナログレコードやショスタコーヴィチ「交響曲第8番 ハ短調」のCDなどを再生。山侮≠フざっくばらんな語り口に、会場からは度々笑いが起こっていた。
【4階】ティアック/ハーマン/フェーズメーション/オーディオテクニカ
4階の珊瑚ルームにはティアック、ディーアンドエムホールディングス、ハーマンインターナショナル、フェーズメーションが出展。
ティアックは、ポール.W.クリプシュが初めて作り上げたスピーカー「Klipschorn」をよりコンパクトかつ妥協のない形で実現したモデル「La Scala AL6」をデモ。組み合わせるのはもちろんエソテリックの製品。ネットワークプレーヤー「Grandioso N1」やSACDプレーヤー「Grandioso K1X SE」、パワーアンプ「Grandioso S1X」などの技術解説を交え、エソテリック、クリプシュの魅力をアピールしていた。
ハーマンインターナショナルは、サウンドエバンジェリストの藤田裕人氏が、JBL創立80周年記念として「SUMMIT MAKALUと4369が継承する歴代フラグシップを語る」をテーマに講演。フラグシップライン「Summitシリーズ」の「Summit Makalu」とフラグシップモニター「4369」の技術解説を行いながら、両機のデモンストレーションを行っていた。
フェーズメーションは、ブランド初の光カートリッジ対応フォノイコライザー「EA-1500」を中心にデモンストレーション。トーレンス「TD124DD」、タンノイ「Stirling IIILZ Special Edition」、プリアンプ「CM-1500」、プリメインアンプ「SA-1500」(パワーアンプとして使用)を組み合わせ、MC/光カートリッジでさまざまなレコードを再生。同ブランドの齊藤善和氏は、フェーズメーションは高度な巻線技術によりカスタム・トランスを内製できることが強みだといい、それにより、優れた低域のリニアリティを実現していると解説していた。
また、4階の瑪瑙ルームにはオーディオテクニカ、KEF、ノア、TADの4ブランドが出展。ここではオーディオテクニカのデモの様子を紹介する。
オーディオテクニカはアナログプレーヤーの最新モデル「AT-LP7X」をデモンストレーション。内蔵のフォノイコライザーがMMとMCカートリッジに対応することから、同社のVM型「VM750SH」とMC型「AT-ART1000X」で比較再生を行っていた。
【3階】サエク/フォステクス/完実電気/ラックスマン/アッカ
3階ダイアモンドルームにはサエク、フォステクス、完実電気が、サファイアルームにはラックスマン、フルテック、メースが、オパールルームには日本音響、アッカ、ヤマハが、エメラルドルームにはアキュフェーズが出展。ここではサエク、フォステクス、完実電気、ラックスマン、アッカのデモの様子をレポートする。
サエクコマースは、ハーベス「XD2シリーズ」と、サエクのダブルナイフエッジ機構搭載トーンアームのロングタイプ「WE-712」を展示。デモでは、3月に発売されたばかりのハーベスのブックシェルフ型「HL-P3ESR XD2」を再生するとともに、XD2に新たに搭載されたダイアフラム・テクノロジー「RADIAL4」、そして設計に携わるアラン・ショー氏のこだわりを紹介していた。
フォステクスは4月上旬に発売したトゥイーターユニット「FT36TD」を搭載したスピーカー「GX160BJ」をデモ。その他、スピーカーユニット「FE203Σ-RE」と本機専用に開発されたエンクロージャーキット(ワンダーピュア製)との組み合わせでも再生していた。デモ後は「ネットワーク用コンデンサーはどうやって繋いだらいんですか?」など熱心なユーザーからの質問が絶えなかったのが印象的だった。
完実電気はデビアレのプリメインアンプ「ASTRA」と、ワイヤレススピーカー「Phantom Ultimate」をデモ。Phantomはアンプとネットワーク機能を内蔵しており、新たにQobuz Connectにも対応。ラウンドボディの中に凝縮された驚くべき先進テクノロジーについて解説しながら、Qobuzの音源を再生していた。
ラックスマンは100周年記念モデル「D-100 CENTENNIAL」「L-100 CENTENNIAL」をデモ。特に、同社では9年ぶりとなる純A級プリメインアンプL-100について、「A級は電力効率は悪いけれども、心に響く音楽を奏でてくれる」とその魅力をアピールしていた。
アッカはYG Acousticsの総合プレイバックシステム「Vantage3 Live」を再生。スピーカーは3つのドライバーユニットそれぞれに700Wものアンプを搭載しているだけでなく、DSPクロスオーバーも内蔵。コントロール・ユニットとの組み合わせにより、ストリーミングやアナログ再生まで行えるという。アッカの木村氏は「アンプを変えたりといったオーディオ的な楽しみは少ないけれども、ドライバーユニットに最適なアンプを接続してマッチングさせることによって実現した音は唯一無二です」と語っていた。
【イベント】音楽之友社企画「出張”ヴィニジャン”」
今回のショウの目玉の一つが、オーディオライターの田中伊佐資氏と「Stereo」編集長・吉野俊介氏のトークを交えたイベント「出張“ヴィニジャン”」。会場は人波で埋まるほどの大盛況で、熱気に溢れ返っていた。「オーディオで聴いて気持ちいいロック、ジャズのLPはどれだ!?」をテーマにお二人がレコードを再生。
組み合わせた機材はオールヨーロッパブランド。フランスブランドDIPTYQUE AUDIOの平面型スピーカー「DP 160 MKII」やクズマのアナログプレーヤー「STABI R」、エレクトロコンパニエのアンプ類、ヨルマ・デザインのケーブルなどを使用していた。
初っ端はハービー・ハンコックの『ニューポートの追想(V.S.O.P)』で、ワウペダルの達人、ワー・ワー・ワトソンのファンキーなプレイにのっけから心を掴まれる。次いで、ビートルズ『ビートルズ・フォー・セール』の赤盤、UKオリジナル盤、7インチ盤の聴き比べを実施。
「吉野編集長は『音がよすぎるとその音楽に入り込めない』って言うんですよ」(田中氏)という話の流れから、ボブ・ラドウィックがカッティングを担当した証であるRL刻印入りの盤としてスタイリスティックスのデビューアルバムを再生。
「オーディオシステムで聴きたいストリングス」というお題のもとで吉野氏が再生したのは、ダニー・ハザウェイの名盤『Extension Of A Man』。DIPTYQUE AUDIOとの相性が抜群で、ダニー・ハザウェイの伸びやかな歌声とメロウなエレクトリック・ピアノの音が会場に心地よく広がり、思わずうっとりとしてしまったほどだ。
取材の兼ね合いで途中で退出したのが残念だったが、田中氏と吉野氏によるゆるい掛け合いが魅力のイベントは、オーディオ、そして音楽の楽しさを思う存分に伝えてくれた。
【イベント】MAYAさんのデビュー作が待望のLP化!
18日はもう一つ目玉があった。ジャズシンガーMAYAさんによるイベントだ。MAYAさんは4月に自身のデビューアルバム『Why try to change me now?』を初のLPとしてリリースしたばかりだが、その最終的なサウンド判断を託すスピーカーを探し続けていたという。そして、1月に選び抜いたのがパラダイムの「Persona B」だった。
今回のアナログ化にあたっては、日本を代表するエンジニア・松下真也氏がリマスタリングを担当。デジタルマスターをリマスターしつつテープに落としてアナログマスターを制作。そのマスターテープからヴィンテージ・アナログカッティングマシンを用いてカッティングする手法を採っているという。
イベントではLP制作の裏話や、音作りのパートナーとしてPersona Bを選んだ理由についてMAYAさんが語るとともに、Persona Bでデビューアルバムを再生。ビッグバンド編成をバックに歌い上げるMAYAさんのフレッシュな声に、じっくりと耳を傾けていた来場者の姿が印象的だった。
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第9回北陸オーディオショウは天候にも恵まれたこともあってか、どのブースも多くの来場者で賑わっていた。イベント会場を後にしてからもずっと、クリアーサウンドイマイ代表・今井芳範氏が語ってくれた「オーディオは人々の希望を支える」という言葉が心から離れなかった。
その言葉通り、それぞれのブースで奏でられた音は、訪れた人々の心をささやかな希望とともに優しく包んだに違いない。
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