ドイツ・クリアオーディオの本社を山之内 正氏が訪問!「アナログ愛」に溢れる製造現場を初レポート
クリアオーディオ(CLEARAUDIO)は現代の根強いレコード人気を支えるドイツの老舗メーカーで、ミュンヘンのハイエンド・ショウでは2年に一度のペースで広大なブースを構え、圧倒的な存在感を放ってきた。機会があれば本社を取材してみたいと考えていたのだが、この5月ついにその願いが叶い、バイエルン州エアランゲンの本社訪問が実現した。
そこはまさにアナログの牙城だった。創業から半世紀近い年月を重ねた歴史の重みとモノ作りのこだわりを目の当たりにし、音楽とレコードを愛してやまない姿勢に強く共感した。その詳細は発売中の『季刊・アナログ 88号』の記事を読んでいただくとして、ここではブランドの概要を紹介することにしよう。
クリアオーディオはピーター・ズッヒーが1978年にニュルンベルク近郊で創業し、現在はエアランゲンに本拠を構え、ロバートとヴェロニカの兄妹が経営を受け継いでいる。主力製品はMM/MCカートリッジ、ターンテーブル、フォノアンプ、トーンアームとアナログオーディオの全領域をカバーし、クリーニングマシーンをはじめとするレコード関連アクセサリーも豊富に揃えるが、あえてスピーカーやデジタルオーディオは手がけず、アナログ製品の開発と生産に専念していることに同社の強みがある。
製品のレンジも非常に広く、たとえばカートリッジは100ユーロを切るMMカートリッジのエントリー機から300万円を超えるフラッグシップのMCカートリッジ「Goldfinger Statement」まで、信じられないほど広い価格帯をカバー。
ターンテーブルも同様で、トーンアームも手軽なS字型から独自機構を駆使したリニアトラッキングアームまで広範囲に及ぶ。最近は輸入元がナスペックに移行したことで日本で購入できる製品が一気に増え、クリアオーディオレーベルで制作されたLPレコードも購入できるようになった。
同レーベルはドイツグラモフォン原盤の高音質LPも販売しており、そのなかには他では入手できない貴重な音源もある。今回訪問した本社のオフィスやリスニングルームには膨大なレコードライブラリが並んでいたが、そこに入り切らないLPが廊下の棚にぎっしり収納されていた。これまで国内外の多くのオーディオメーカーを訪問したが、これほど大量のLPを所有し、製品開発に活用しているメーカーは見たことがない。
エアランゲンの本社は開発や設計を含むオフィスと製造部門が同じ建物のなかに隣接し、「アナログオーディオの大規模生産拠点」の様相を呈していた。カートリッジやトーンアームの主要部品も含め、独自設計のパーツは自社工場内で素材から加工し、組み立てと検査まで一貫して手がけている。
今回の訪問時にはMCカートリッジの磁気回路の生産工程など、門外不出のノウハウがたくさん潜んでいそうな現場まで見学することができ、精度へのこだわりや美的感性を重んじる姿勢など、アナログならではのモノ作りの価値をじっくり体験することができた。
今回の本社訪問には、この秋以降に発売予定の新製品のお披露目というもう一つの重要な目的があった。その詳細はあらためて紹介することにしよう。
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