参加者が好きなアニソンを持ち込み

アニソンを高級オーディオで聴くとどうなる? オーディオ協会「好きな曲でオーディオ体感試聴会」レポート

公開日 2025/03/10 19:17 編集部:川嶋隆寛
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日本オーディオ協会は、「第4回 持ち込みOK!好きな曲でオーディオ体感試聴会 アニソン編」を東京都港区高輪の同協会内試聴スペースにおいて、3月8日(土)に開催した。

好きな楽曲を持ち込みスイートスポットで試聴できるイベント

「持ち込みOK!好きな曲でオーディオ体感試聴会」は、参加者が「この曲をオーディオ機器で聴いてみたい!」というお気に入りの曲を持ち込み、本格的なオーディオシステムで聴くというイベントである。これまで「J-POP編」「アナログレコード編」などのテーマで開催してきたが、第4回となる今回はアニソン編として、アニメ、ゲームソングであればどんな楽曲でも持ち込みがOKとなっていた。

持参するのは1人1曲、持参した曲の再生時間は1曲4分程度。音源を持ち込むメディアは、ディスクはSACD/CD、ストレージはUSBメモリー、USBオーディオ接続デバイスはDAP/スマートフォンである。

13時からの部と16時からの部、2つの時間帯に分けて各部15名の定員で開催されたのだが、回を重ねるごとに応募者が増えてきているとのことで、今回も多数の応募者の中から抽選を経て、10代から50代までの幅広い参加者が集まったという。

本イベントの最大の特長は、自分が持ち込んだ楽曲をかける際は前列のセンターの席(スイートスポット)に座って試聴できること。1曲ごとに交代で席を移動するのだが、必ずスイートスポットで試聴できる点は刮目に値する。また、自分が持ち込んだ楽曲を再生する前に、その楽曲の紹介タイムがあり、なぜその楽曲を選んだのかなどを説明する時間が設けられている。

16時から開催した第2部の様子。高校生から50代まで、幅広い年齢層の参加者が集まった

総額およそ400万円超。注目のオーディオシステムで鳴らす

今回の試聴会で使用した機器は、ネットワークトランスポートにラックスマン「NT-07」、SACD/CDプレーヤーにラックスマン「D-07X」、プリアンプにヤマハ「C-5000」、パワーアンプもヤマハの「M-5000」、そしてスピーカーにはフォステクスのモニタースピーカー「NF06」。

再生機にはラックスマンのNT-07とD-07Xを使用

 

アンプにはヤマハのセパレートタイプ、5000シリーズを使用した

 総額およそ400万円超となるシステムである(ケーブルやスピーカースタンドなどアクセサリーを含めると500万円に近づく)。NT-07は一昨年秋に登場したラックスマン初のハイレゾストリーマーで、登場後、評論家からも高い評価を集めた製品だ。同じくラックスマンのD-07XはフラグシップD-10Xに迫る高性能で知られるなど、今回使用する機器はどれも銘機として名高い。

また、フォステクスのスピーカーNF06はプロスタジオ向けとして音楽制作の現場で求められるリファレンス性能を追求したモニタースピーカーである。

後述するがアニソン、ゲーソンといっても、J-POPからオーケストラによるシンフォニック・スコア、さらにはメタルコアまで、音楽ジャンル・カテゴリーは非常に幅広い。この幅広いジャンルをNF06がどこまで表現できるのかも今回の試聴会のひとつの注目ポイントだろう。

好きな楽曲を持ち込むから、オーディオ本来の楽しさを実感

小雨から雪に変わる悪天候の中、13時から始まった第1部は13名、16時からの第2部は10名がお気に入りの楽曲を持参して集まった。記者は第2部を取材したのだが、参加者の年齢層は、高校生から、記者と同世代の50代まで、幅広い。

幅広いと言えば、当日プレイした楽曲のジャンル/カテゴリーも非常に幅広い。アニソン、ゲーソンといっても、BGMまで含めると当然カテゴリーはバラエティ豊かになる。当日のプレイリストは別掲するが、エレクトロポップがあれば、典型的なJ-POPあり、ジャズあり、シンフォニック・スコアあり、さらにはメタルコア/ハードコアまでと、とにかく幅広い。

さて、オーディオ協会からの挨拶でイベントがスタートし、次いで各メーカー担当者よりシステムの説明が行われた後、まずはオーディオ協会が用意した音源を2曲ほど試聴した。Adoの「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」と、「ギ・ナタタク(FF7 Rebirth OST Ver.)」である。オーディオ協会によって用意された音源自体が当日の幅広い音楽ジャンルを象徴している。

挨拶をするオーディオ協会の八木真人氏

 

趣旨説明を行うオーディオ協会オーディオ体感ワーキンググループ委員長の今 裕実氏

この2曲に続いて、参加者が持参した楽曲の再生がスタート。最初に楽曲に関する簡単な紹介を行ってから、再生する。

機材の説明を行うラックスマンの小嶋 康氏

 

アンプの解説を行うヤマハミュージックジャパンの小林博文氏

 

スピーカーの説明を行うフォスター電機の仲前 学 氏
 
参加者が持参した楽曲が次々と再生されていく。参加者は自らが持参した楽曲だけでなく、他の方が持参した楽曲を真剣に聴いている姿がとても印象的である。記者も参加者とともに、体感試聴会を存分に楽しんだ。
参加者は楽曲をかける前に、なぜその曲を選んだのかなど、簡単な説明を行う
 
たとえば4人目の方が持参したSACD『交響詩 銀河鉄道999』の「惑星メーテル」。シンフォニック・スコアの名曲である。今回のシステムでは、幻想的でドラマティックな演出を余すことなく表現するとともに、ストリングスによる抒情的で繊細な描写がとても印象的であった。
試聴タイム。参加者全員が真剣に聴きこんでいる姿が印象的であった
 
この楽曲を再生している時は、取材していることを忘れ、リスナーとして聴きこんでしまった。定評のあるラックスマンのD-07Xの再生能力に加えて、フォステクスのNF06の表現力の豊かさに驚かされる。

また、おもしろい発見があった。

爆音で再生されたマキシマム ザ ホルモンの「絶望ビリー」。パワフルで重いサウンドをNF06が丁寧に描写していたのが非常に印象的だった。重いブレイクダウンだけでなく、楽曲全体を貫くハードコア的なスピード感もしっかりと表現している。記者はこの楽曲をメタルコアだと思っていたが、今回このシステムで改めて聴くと、エネルギッシュなハードコアの疾走感も感じ、また、NF06がこうした楽曲とも相性が良いことも発見できた。

オーディオイベントの試聴会だと、再生する音楽のカテゴリーとしては、クラシック、ジャズ、フュージョン、ロックが多く、他のジャンルを再生している場面に出会うことは少ない。特に今回のようにメタルコア/ハードコアを爆音で鳴らしている試聴会には、オーディオ業界歴30年弱の記者も出会ったことがない。

しかし、この「持ち込みOK!好きな曲でオーディオ体感試聴会」はそうした制約がない。制約がないが故に、新たな発見があった。この発見がオーディオの醍醐味である。

高いハイエンドなシステムだからと言って、かしこまって音楽を聴く必要はない。

好きな楽曲を爆音で鳴らす。それでいい。そんなオーディオが本来持つ楽しさに改めて気づかされる試聴会であった。次回の開催も待ち遠しい。

「第4回 持ち込みOK!好きな曲でオーディオ体感試聴会 アニソン編」試聴曲

【第1部】

  • Ado『新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)』
  • 島 翔太朗/植松 伸夫『ギ・ナタタク(FF7 Rebirth OST Ver.)』
  • 上原れな『届かない恋』
  • シートベルツ『Gotta knock a little harder』
  • トゲナシトゲアリ『雑踏、僕らの街』
  • 米津玄師『海の幽霊』
  • 岩男潤子『スカーレット』
  • Belle『歌よ』
  • 悠木碧『帰る場所があるということ』
  • 藍井エイル『INNOCENCE』
  • いとうかなこ『Hacking to the Gate』
  • Ado『ウタカタララバイ』
  • Suara『不安定な神様』
  • 小林泉美『I,I,You&愛』
  • 音無小鳥『光』

 

【第2部】

  • Ado『新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)』
  • 島 翔太朗/植松 伸夫『ギ・ナタタク(FF7 Rebirth OST Ver.)』
  • 西川貴教『BEYOND THE TIME -メビウスの宇宙を越えて』
  • SIAM SHADE『1/3の純情な感情』
  • 王菲『Eyes On Me』
  • 熊谷弘『惑星メーテル(交響詩 銀河鉄道999)』
  • TrySail『High Free Spirits』
  • ケビン・ペンキン『reBirth ft. Takeshi Saito』
  • David Matthews Orchestra『OPENING ACT』
  • マキシマム ザ ホルモン『絶望ビリー 』
  • MARUMOCHI from HoneyWorks『ファンサ(feat.ハコニワリリィ)』
  • ささきいさお『宇宙戦艦ヤマト』


<日本オーディオ協会オーディオ体感ワーキンググループ>
株式会社クリプトン、CSポート株式会社、スペック株式会社、株式会社ディーアンドエムホールディングス、株式会社トライオード、フォスター電機株式会社、株式会社ヤマハミュージックジャパン、ラックスマン株式会社 (50音順)

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