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第24回ミュージック・ペンクラブ音楽賞 受賞作品が決定

ファイル・ウェブ編集部
2012年02月03日
第24回(2011年度)のミュージック・ペンクラブ音楽賞作品が決定した。

ミュージック・ペンクラブ音楽賞は、1966年に発足したミュージック・ペンクラブ・ジャパン(旧名称・音楽執筆者協議会)が1987年以来、毎年発表している「年間音楽賞」。音楽の言論分野(クラシック、ポピュラー、オーディオ)で活動する約200名の会員による自主投票によって選出される。

第24回音楽賞に選出された作品と、審査員による授賞理由は以下の通り。

《クラシック部門》

◆録音・録画作品(外国人アーティスト) 
 「ベートーヴェン:交響曲全集/クリスティアン・ティーレマン指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団」
(DVD、BD)(キング・インターナショナル/KKC-9019)
(CD)(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル/SICC-20140〜46)
2008年12月から2010年4月までにウィーン楽友協会大ホールで行われたベートーヴェンの交響曲全曲演奏を収録。ティーレマンは旧来のブライトコプフ版のスコアを使用し、20世紀のベートーヴェン演奏の王道を行くような解釈を披歴している。そこから得られる感動は往年の巨匠の演奏と共通するところがある。細部の完成度の高さも舌を巻くばかり。ウィーン・フィルの楽員たちが指揮者のタクトに魅せられたように音楽に没入しているのが伝わってくる。(岡本稔)


◆コンサート・パフォーマンス(外国人アーティスト)
「プラシド・ドミンゴ コンサート・イン・ジャパン2011」
4月10日NHKホール、13日サントリーホール
3月11日の大震災後のドミンゴの来日は、暗い日本に灯された希望の明かりの様であった。高音のないテノールと、バリトンのアリアの双方を歌うドミンゴの声は、余裕すら感じさせる。若き日のドミンゴのキャッチフレーズ「黄金の声」を思い出させる豊麗な声は、ドミンゴのヒューマンな想いを乗せて我々の耳に届く。音楽の力、歌の力が如何に人の心を励ましてくれるのかを、ドミンゴは改めて教えてくれた。流言飛語が世界中飛びかっていたあの時期の日本に、敢えて訪れてくれたドミンゴの侠気は、その歌声となり、我々の心を温かく満たしてくれた。終生忘れ得ぬ歌声であった。(4月13日サントリーホール)(國土潤一)


◆コンサート・パフォーマンス(日本人アーティスト)
「下野竜也指揮、読売日本交響楽団 ジョン・アダムスと團伊玖麿の作品演奏」
10月23日横浜みなとみらいホール、24日サントリーホール
 東日本大地震と原発事故は、現在も社会全般に深刻な影響を及ぼし続けている。設立50年目の読売日本交響楽団を意欲的な選曲で牽引する正指揮者の下野竜也が、2011年4月からの新シーズン定期公演で最初に指揮したのは、日本初演となるジョン・アダムズの"ドクター・アトミック・シンフォニー"と、團伊玖磨の交響曲第6番。アメリカと日本、原爆投下前と投下後、科学の葛藤と再生を願う人間讃歌など、核をめぐる異なる視点を前後半につき合わせるものだ。果敢なプログラミングのいっぽう、下野の指揮は情感や劇性への傾斜を慎む客観的な情熱を貫き、対照的な書法をとる二作の音楽の内実を緻密に響かせる。いわば徹底して非政治的な演奏で、真摯な問いかけを聴衆に託した。(同一演目による10月23日、第51回みなとみらいホリデー名曲シリーズを所見)(青澤隆明)


《ポピュラー部門》

◆録音・録画作品(外国人アーティスト)
「デュエッツII/トニー・ベネット」
(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル/SICP-3258 )
トニー・ベネットは高齢になってからいよいよ素晴らしさを発揮しているが、これは生誕85周年記念アルバム。グラミー賞3部門受賞の『DUETS:アメリカン・クラシック』に続く第2弾で、全米アルバム・チャート第1位を獲得。最高齢記録となったことは、この偉大なアーティストに対する米国民の敬愛の情の表れであろう。いずれの曲にもトニーのジャズ感覚溢れるうまさがあり、味わい深いものがある。ゲストとの絡みも見事。相手の才能を全開させるかのごとき包容力が、アルバム全体を支配している。彼の100を越える作品の中でも秀逸である。(鈴木道子)


◆録音・録画作品(日本人アーティスト)
「1969/由紀さおり&ピンク・マルティーニ」
(EMIミュージック・ジャパン/TOCT-27098)
往年のジャズ/スタンダードを現代化させてきたアメリカのピンク・マルティーニとの共演盤で、アメリカ、カナダのiTunesジャズ・チャートで1位を獲得した他、イギリスなどヨーロッパでも話題に。由紀が「夜明けのスキャット」でデビューした1969年の日本のヒット作だけでなく、同年の世界のヒットをカバー。濃密な由紀の歌唱、大半を占める日本の歌謡曲のエッセンスを踏襲した編曲の妙など、普遍的な魅力に溢れた佳作。(小倉エージ)


◆コンサート・パフォーマンス(外国人アーティスト)
「東京JAZZ2011」
日本経済新聞とNHKエンタープライズが共催した東京JAZZ2011は9月2日〜4日に東京国際フォーラムAホールで開催された。10周年を迎えた今回は東日本大震災チャリティ公演として催された。海外ミュージシャンの出演者の顔ぶれは豪華で、カウント・ベイシー楽団、ミシェル・ルグラン・トリオ、アンソニー・ジャクソン、ケニー・バロン・トリオ、リシャール・ガリアーノ、ジョージ・デューク、マーカス・ミラー、デヴィッド・サンボーン、マイク・ノック、セルジオ・メンデスらが出演しそれぞれ華やかで充実した内容の演奏を展開した。なお、日本からも上原ひろみ、寺井尚子、日野皓正、矢野沙織、熊谷和徳らが出演した。10年間継続して開催されてきたのも高く評価された。(岩浪洋三)


◆コンサート・パフォーマンス(日本人アーティスト)
「沢田研二Live2011-2012 ゲスト:瞳みのる・森本太郎・岸部一徳」
毎年、精力的にLIVEツアーを展開している沢田研二。このツアーでは、現在は俳優として活躍している岸部一徳、自身のバンドで活動中の森本太郎、そして40年振りの復帰となった瞳みのるという“ザ・タイガース"のオリジナル・メンバーが全曲で演奏に参加。ヴォーカルの沢田を含めた4人による躍動感溢れる演奏からは、現役のバンドをも上回る程のグルーヴが生み出され、“グループ・サウンズの王者"の名に相応しい貫禄と華やかさが感じられるステージを見せてくれた。(町井ハジメ)(Photo by noko)


◆著作出版物
「ロックとメディア社会/サエキけんぞう」(新泉社)
レコード、ラジオ、テレビ、ビデオ、CD、DVD、ネットというメディアの変遷にロックはどうかかわってきたのか。そして、どのような変貌を遂げてきたのか。ロックの歴史を紐解きながら、切っても切れないメディアとの関係を解き明かし、現在のリアルな状況をあぶり出す。そこからはロックという音楽の本質や、その可能性も感じさせられる。ミュージシャンであり、深い知識や洞察力を持つサエキけんぞうにしか書き得なかった、ミュージック・ペンクラブ賞に相応しい力作だ。(細川真平)


◆ベスト・ニュー・アーティスト
寺久保エレナ(アルトサックス)
1992年札幌生まれ。10〜15歳の間札幌ジュニア・オーケストラに参加。2005年13歳で最年少ボストン・バークリー・アワード受賞。2010年高校在学中に「North Bird」(キング)でCDデビュー。2010年9月“東京ジャズ2010"に出演。2011年6月第2作「NEW YORK ATTITUDE」〔キング〕発売。この年9月よりボストン・バークリー音大に留学。高校時代より渡辺貞夫、山下洋輔、日野皓正らがその実力を高く評価。技巧表現、音楽性もすでに高いレベルに達している。(岩浪洋三〕


《オーディオ部門》

◆技術開発
「DP-900」(SA-CD/CDトランスポート)、「DC-901」(MDSDデジタルプロセッサー)
(アキュフェーズ株式会社)
配信全盛の今、アキュフェーズがパッケージ再生の持てる可能性を改めて世に問う大作。DP-900は、総重量10.7kgに達するドライブを搭載、メカ駆動部と信号系を分離した2個のトロイダルトランス、カスタム仕様のフィルターコンデンサー10個を採用した強力な電源部はディスクプレーヤーとして過去類例がない。DC-901は、DSD信号をダイレクトにD/A変換する独自の「MDSD」方式を採用したデジタルプロセッサー。超高速FPGA内のデジタル演算部で遅延させた複数のDSD信号をD/Aコンバーターで変換し各々の変換出力を総加算し2倍速の高精度「移動平均フィルター」回路を構成する。SNの高さと情報量、広大な帯域は驚異的でディスクを介して音楽を聴いていることを忘れさせる。同社創業40周年記念製品だが、オーディオ全体の到達点をここに聴くことが出来る。(大橋伸太郎)


◆録音・録画作品
「シューベルト: ピアノ五重奏曲《ます》 シューマン:ピアノ五重奏曲/田部京子(pf)、カルミナ四重奏団」
(SACD, SHM-CD)(日本コロムビア株式会社/DENON COGQ1004)
最近音質を重視するレコードファンの間で好評なのがSHM仕様のSACDだ。これは記録層を1層に限定したシングルレイヤーのSACD専用ディスクで、CD層を加えた2層ハイブリッド盤を上回る音質が得られる。基盤の素材に透明度と流動性の高い液晶パネル用素材を用いたりレーベル面にグリーンのコートを施すなどの工夫もあり、トータルでの音質を更に向上させている。既にかなりの数のディスクが発売されているが、かつての名盤からマスターを造り直したソースが多い。しかし、図抜けた高音質を得るにはやはり最近収録されたソースが有利だ。2008年初頭にチューリッヒで収録された田部京子とカルミナ四重奏団によるシューベルトとシューマンの五重奏曲はその代表的なものだ。既発売のハイブリッド盤では、高弦の響きがやや刺激的に聴こえたり、ピアノと弦のバランスにやや違和感を感じたりしたが、SHM仕様SACD盤では音場の透明感がさらに増し、粒立ちのいいピアノの響きと滑らかに歌う弦の対比や融和性が鮮明に表出されるようになった。闊達な演奏の雰囲気が肌で感じられる名盤となったと言っていい。(貝山知弘)


《特別賞》

「トニー・ベネット」
トニー・ベネットは生誕85周年の節目を迎え、60年を超える歌手生活に更に磨きをかけている。ビング・クロスビー以来のポピュラー・ヴォーカルの王道を行きながら、ジャズ・フィーリングを加えたヴォーカルは、近年いよいよ深みと充実ぶりを増している。過去に生涯功労賞を含む15のグラミー賞を受賞し、宇宙一権威のある歌手といわれる。目下全米ツアー中。来日の噂も聞かれるが、世代を越えて親しまれるトニーは、多くの人々に夢と希望を与えてくれる存在だ。(鈴木道子)(Photo by Kelsey Bennett)

「中村とうよう」
“とうようさん"の愛称で長年親しまれてきた。音楽評論家としての守備範囲は広く、ロック、フォーク、ブルース、ジャズ、ラテン、ワールド・ミュージック、沖縄音楽など多岐にわたり,私見をまじえた評論は独特のものがあった。編集者として1969年にニュー・ミュージック・マガジンを、1982年にはレコード・コレクターズを創刊。若い音楽ファンのオピニオン・リーダーとして、また音楽文化の確立や普及に努めるなど、大きな役割を果たした。当会の前身、音楽執筆者協議会の創立メンバーの一人。2011年7月逝去。(鈴木道子)

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