アーティスト自身が立ち上げる自主レーベル〜チェロ編

【ベストハイファイ・レーベルNavi】ラボリー、エジア、リプキンズ・プロダクションなどから新作CD登場

2010/06/21 季刊オーディオアクセサリー編集部
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アーティスト自身が主宰する自主レーベルに高音質な作品は少なくないが、世界から良質なCD作品を輸入しているキングインターナショナルから、チェロ奏者が自身のレーベルを立ち上げたもので、新作が続いているのでご紹介したい。

ひとつはバロック・チェロの帝王クリストフ・コワンのレーベル「Laborie」。新作『死と乙女』は冒頭の dの音から、他とはちょっと違う、と思わせる演奏だ。

Laborieのロゴ

美しく甘いハーモニーの場面でも、常に一定に保たれた厳しい緊張が流れており、「死」というものが、恐ろしいものであると同時に、この世の苦しみを見ることなく永遠の眠りにつけるという慰めでもある、という両面を持ち合わせていて、シューベルト自身この「死」と格闘していることが強く打ち出された演奏である。

レーベル立ち上げ後、初めてリリースしたハイドンの『リラ・オルガニザータのための協奏曲 他』(LC01)では、本当にリラ・オルガニザータを用いた貴重な録音であったことでも注目したい「Laborie」レーベル。いずれも明るく快活、極上の娯楽作品となっている。バリトンを弾くコワンの技術も見事である。

【Laborie】 シューベルト: 弦楽四重奏曲第9番、第14番 モザイク四重奏団〈ヘーバルト(第1Vn)、ビショフ(第2Vn)、ミッテラー(ヴィオラ)、コワン(チェロ)〉 LC06 ¥OPEN

2つめはイタリアのジャズレーベル「EGEA」より、名匠マリオ・ブルネロが立ち上げた自主シリーズ「BRUNELLO SERIES」。オデュシア(SCA138)とヴィヴァルディ:チェロ協奏曲集(SCA147)の2タイトルをリリースしてきたが、2010年ついにバッハ無伴奏をリリースした。

EGEAのロゴ

これまでブルネロは、自然を愛するチェリストならではの発想で、富士山の山頂やサハラ砂漠、ドロミテ山塊で演奏してきた。完璧な静寂の中で演奏する事により、自身の内面からわき上がる音楽が表出すると語っているという。

今回、バッハが録音されたのは、ペルージャの歴史地区にあるサンタ・チェチリア礼拝堂。5つのコンデンサー式パノラマイクを配置し、礼拝堂の響きを生かした自然なサウンドである。

【EGEA】 BRUNELLO SERIES J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲(全曲) マリオ・ブルネロ(チェロ/1600年代製作の「マッジーニ」使用)SCA156¥OPEN

3つめは驚異のチェリスト、ガブリエル・リプキンの「LIPKIND PRODUCTIONS」。まさに今月、来日ツアー中の、話題のチェリストである。

LIPKIN'S PRODUCTIONS

リプキンはバッハ無伴奏(GLP0016132)、ミニアチュール&フォークロア(GLP0016142)とこれまで2タイトル発売され、ジャケットのデザインやソロ、デュオ、カルテット、コンチェルトなどそれぞれの分野でプロジェクトを立ち上げ意欲的な活動をしてきた。

待望の3作目は今年生誕200年のシューマンのチェロ協奏曲。ミーシャ・カッツ指揮、シンフォニア・ヴァルソヴィアを共演し、全曲にわたりロマンティックな哀愁漂う曲を魅力的なチェロの音色で表現している。

【LIPKIND PRODUCTIONS】 シューマン:チェロ協奏曲 シンフォニア・ヴァルソヴィア ミーシャ・カッツ(指揮) ガブリエル・リプキン(チェロ) GLP0016152 ¥OPEN


【問い合わせ先】
(株)キングインターナショナル
東京都文京区水道2-9-2 音羽YFビル3F
TEL/03-3945-2333

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