<TIAS2007>ソナス・ファベール「エリプサ」やCHORDの新製品が展示

公開日 2007/10/07 12:09
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本項ではノアとナスペック、タイムロードのブースの模様をお伝えしよう。

■ノア

ソナス・ファベール「エリプサ」。同社の特許技術「リュート型」のキャビネットを横につなげた形状で、仮想的な平面バッフルを構成しているという。優美いて、かつ豪放なデザインとサウンドのスピーカーである

ブラデリウス初のセパレートアンプ、Idun(プリ)、Balder(パワー)。Idunはバランス入出力対応で、Balderは巨大な電源部を持つ165W+165Wの大出力アンプである

こちらは普及型CDプレーヤーSynとプリメインTyr。ざっくりとしたヘアラインと半球形のノブが同社らしい。どちらも価格は¥441,000とのことである

ガラス棟5階、エレベーターから左に曲がってすぐの部屋がノアのブースだ。今年の同社を象徴する新製品といえば、ソナス・ファベールのエリプサで決まりだろう。数百年にわたって数多くの名バイオリンを創り出してきたクレモナの名匠たちに捧げる「オマージュ・コレクション」の中でも究極といえるストラディヴァリ・オマージュ。本機はその流れを濃厚に汲む製品である。形状はサイズがわずかに小さくなっていることを除けば相似形といっていいくらいに似ており、ユニットも3ウェイ4スピーカーから3ウェイ3スピーカーに変更されているが、大変よく似通ったものが採用されている。ミッドレンジは新開発のものだ。仕上げの美しさこそオマージュに数歩の遅れを取るが、本機も大変な超大作であることに疑問の余地はない。

また、スウェーデンのブラデリウスが発表した新製品も目を引いた。同社は名門スレッショルドで長くチーフ・エンジニアを務めたマイケル・ブラデリウス氏が母国で起こしたブランドだ。新製品は同社初となるセパレートアンプと、より廉価なCDプレーヤーにプリメインアンプと、都合4機種。いずれもクラスを超える出力と頑丈な筐体、そしてシンプルかつ美しい仕上げが持ち味の、ハイCP機ぞろいである。


ベーゼンドルファーVC2。この色はポメーレという。もちろん同社のピアノと同じ職人の手作業による、入念な仕上げである
これは新製品ではないが、オーストリアの名門ピアノメーカー、ベーゼンドルファー社のスピーカーVC7がブースを訪れた時に鳴らされていた。今年のトピックは仕上げ色が増えたことだそうだが、それにしても独特の深い響きと潤いを伴った気品のあるサウンドは素晴らしい。弦楽を聴いても歌曲を聴いてもどことなくかのピアノを彷彿とさせるのだから、やはり血筋は確かである。

■ナスペック

ノア・ブースのもう1枠奥にはナスペックの部屋がある。ここ2年ほどはジョセフ・オーディオのスピーカーをダールジールのアンプで鳴らすという構成がメインで、今年もまさにその組み合わせが、他をもって味わうことのかなわないハイスピードと力感、そして音楽表現の気高さを聴かせてくれていた。金属振動板ならではの解像度と切れ味、そして金属とは思えない暴れの少なさは、ジョセフ・オーディオが誇る-120dB/octもの遮断特性を持つ「インフィナイト・スロープ」ネットワークの賜物である。もう体験された人も多いだろうが、未体験の人はぜひ一度味わっておくことをお薦めする。

シンセシスの真空管プリメイン、FRAME RC。下の段にはCDプレーヤーPRIDEが展示されている。イタリア人は「赤」をうまく使うものだと感心する

シンセシスのスピーカーCLUB。非常にオーソドックスなリアダクトのバスレフである。残念ながら音の出ている時に訪れることはできなかったが、何とも真っ当な作りである

そんなナスペックにあって今年の注目商品は、この9月に輸入・販売を開始したばかりのイタリア・シンセシスのシステムである。同社はイタリア半島の東海岸、アドリア海の近くに居を構えるメーカーで、設立は1992年というからまだ若い会社といっていいだろう。先行輸入されたCDプレーヤーのPRIDE、プリメインアンプNimisRCに加え、もう1機種プリメインのFRAME RCとスピーカーシステムCLUBと、フルラインアップがそろっている。Nimisは終段6BQ5、FRAMEは6CA7を採用した真空管プリメインである。スピーカーは16.5cmウーファーと2.5cmトゥイーターの2ウェイで、バッフルにはレザーが張られている。社長のロレンツォ・ルイージ氏は、オーディオを楽しむ感性は“聴くこと”だけではなく、“観ること”からも満足が得られなければならないというのが持論という。その哲学が表れたものであろう、いずれのコンポーネンツもラッカー仕上げの赤いウッドが特徴で、CDプレーヤーのフロントパネルまでイメージが統一されている。

■タイムロード

エレベーターで4階に下り、一番左の部屋を目指すと、そこはタイムロードのブースだ。同社の顔というと、やはりブルガリアはEBTBの大変個性的な顔つきを持つスピーカーTerra II Proであろう。英国の宝というべきCHORDのデジタルプレーヤー+アンプによるドライブで、今年も生真面目ながら朗々と歌い上げるようなサウンドを聴かせてくれていた。

同社扱い製品で、今年一番の注目を集めるブランドはCHORDである。小型/高品位で名を馳せた「コーラル」シリーズが近年の注目株だったが、今年はフルサイズ製品に注目モデルがいくつも登場してきている。まずはCDプレーヤーのレッド・レファレンスだ。見ての通り、トレイからメカニズムにかけてはコーラル・シリーズのトランスポートと共用だが、価格は同シリーズのセパレートCDを合わせた額の優に2倍以上。名実ともCHORDのフラッグシップというにふさわしいプレーヤーである。それかあらぬか、音は全く一部のすきもない、まるで切れば血の出そうな音像と、クールで張り詰めた音場感を堪能することができた。

CHORDのCDプレーヤーRED Reference。コーラル・シリーズでは「まだ上があるな」と思わされた部分を、本機は完璧なまでにこなして見せたとタイムロードのエンジニア氏はいう

CPA3000は一見するとCPA2500とそっくりだが、音はまるで別物だとか。説明があまりされないというのは、単なる秘密主義ではなく、言葉にできないノウハウの部分が大きいのではないかとも推測する

もうひとつはプリアンプのCPA3000だ。既発のCPA4000Eと同2500の間を埋める製品で、価格的にもほぼ中間、構成は2500にバランス入出力を加えたような格好だが、音はやはり2500より確実に品位が上がっているという。

この2モデルの内容について、さらに詳しく話を聞こうと思ったら、「こんなに音が変わったのだからよっぽどのことをしたんだろうと思って現地に聞いてみたんですが、ちっとも教えてくれないんですよ」と担当氏は苦笑いを浮かべる。また、既存モデルもROHS対応のために鉛フリー化が果たされたりしているそうだが、それでも以前の製品と全くといっていいくらい音が変わっていないのだとか。「ROHSに対応すれば、音は必ず変わるはずなんです。一体どんなチューニング技術を使っているのかと聞こうとしたら、やっぱり……」教えてくれなかったそうである。全く、CHORDの技術力には舌を巻くほかない。

(炭山アキラ)

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