80'sデザインが堪らない! カロッツェリアの“車載スピーカー”をあえてホームオーディオで使ってみた!
前田賢紀オーディオ趣味とはサウンドそのものを追求する道である。しかし、オーディオ製品に与えられたスペックを踏まえ、遊びを深掘りしてみよう、そんな意図から始まった本連載「ザ・良音計画!」もおかげさまで、キリ番となる第10回。
今回は7月に発売、たちまち大人気というパイオニアのカーオーディオブランドcarrozzeria(カロッツェリア)のボックススピーカー「TS-X40」を俎上にあげる。
SUV全盛時代に誰得なのか?
近年カーオーディオに対する多様な取り組みが見られるカロッツェリアだが、こんなレトロ心をくすぐる企画を実行するとは、正直驚きだった。
本製品「TS-X40」は、曰く、
「1980年代の名機をモチーフに、最新の音響設計で再構築したレトロデザインモデル」
である。
こういったスタイルのカー用スピーカーは、かつてセダンやハッチバックのリアウインドウに設置され、車内空間をサウンドで満たしてきた。だから昨今のクルマのど真ん中スタイルである「SUV」において後付けで使われることはほぼない。ということは、いったい誰得なのか? と頭をひねってしまったので、パイオニアに尋ねてみた。
Q1:製品化にあたって、どのような市場背景(ニーズ)を想定しましたか?
A1:ボックススピーカーは継続的に支持を得ており、今回の新モデルでは、かつてそのクルマに親しんだ世代が抱く懐かしさはもちろん、「ヤングタイマー」や「ネオクラシック」と呼ばれる若い世代のクラシックカー文化にも新たな提案として開発しました。
なるほど! 確かに昨今80-90年代の日本の旧車人気がスゴイことになっている。各地の旧車イベントは抽選参加というほど人気があり、自動車メーカー自身が、名車たちの復刻パーツを手掛ける動きも顕著だ。
新車の売れ筋は確かにSUVだが、クルマ趣味層へと目を転じれば、セダンやハッチバックは人気だし、だからこそ、「あの当時の雰囲気を持ったカースピーカーが欲しい!」という熱い声にパイオニアは応えたのだろう。
とはいっても、長く単車人生を送ってきた本稿担当者ゆえ、あの頃の記憶の中にあるカーステレオサウンドと、新製品「TS-X40」を比較することはできない。
そんな事情から、「家で鳴らして遊んでみよう!」と開き直った次第である。
「TS-X40」を家で鳴らすために
「TS-X40」はカー用スピーカーである。だからケーブルやコネクタもカー用である。車に取り付けるならともかく、家庭用アンプに接続する場合、すこし工夫が必要だ。
まず確認したいのが、インピーダンス。「TS-X40」のインピーダンスは4Ωだから、接続しようとしているアンプが対応しているか調べよう。昨今のプリメインアンプならだいたい、4-16Ωに対応という具合に幅をもっているので大丈夫かと思うが、真空管アンプなどは対応インピーダンスが決まっている場合もあるので、気を付けたい。幸い我が家のAmulech製デジタルアンプ「AL-202H」は4-8Ω対応だった。
続いてコネクションである。「TS-X40」は背面の「carrozzeria」ロゴがブルーに発光するため、音と光それぞれにケーブルが出ている。発光用電源は12Vだから、ものすごく単純に言うと、1.5V電池を直列に8本つなげば発光するはず……だが、逆接続すると回路を破壊する恐れがあることと、付け加えるなら、ホームで使用する場合どうせ背面は見えない(笑)ので、今回は音声信号のみの接続とした。
音声信号はタミヤのRCカーでも昭和少年にはおなじみの「ギボシ端子」が使われているので、アンプに接続する簡単なアダプターを製作すればいい。工作は簡単だ。
これで「TS-X40」を鳴らすための準備は完了……のはずだが、アンプのパワーを入れるのに緊張が走る。大丈夫。気を取り直してスイッチオン!
「音出たよ!」元気はつらつ鮮烈サウンド
今回はハイレゾ音源を鳴らして通常盤CDとの違いを探るようなスタンスではなく、雰囲気をあげていく方向で楽しんでみたい。そこで再生メディアとして選んだのがカセットテープだ。
往年のカセットテープが残っている私にとって、音源としてはそのほとんどがサブスクで楽しめる現在であっても、敢えてカセットを装填して聴いている。レコード同様、かける手間込みで楽しみたいからだ。
旧車、オールドタイマー、カーステレオ、『カーグラフィックTV』(笑)……だからやっぱりあの頃の車での音楽といえばカセットに尽きる! しかも最近手に入れたカセットがCBSソニーの「フリーウェイフュージョン」(1986年)だというのだから、何をかいわんや。
「TS-X40」はどんなサウンドを狙ったのか。再びパイオニアに尋ねた。
Q2:「TS-X40」のサウンドの傾向や音楽の向き不向きなどあれば、教えて下さい
A2:車室内全体を音で満たすことを目指して、クリアなボーカル再生を軸に、豊かな低域をバランスよく加えた音作りをしていますので、音楽ジャンルを問わず楽しめると思います。例えば、J-POPやボーカル主体の楽曲、ライブ音源などでは、歌声の存在感や演奏の一体感を心地よく再現し、リズム感やエネルギー感あふれるサウンドがドライブ中の高揚感をさらにひきたててくれるはずです。ぜひお気に入りの音楽とともにその魅力を体感してください。
概ね皆さんの想像通りだろうか。車内という限られたスペースで鳴らすためのスピーカーという特性を考慮すれば、より広い室内で鳴らすのはイレギュラーな使用に違いないが、どうしてどうして、元気はつらつサウンドに、ちょっとウキウキ楽しくなってくる。眉間にしわを寄せてディテールに耳をそばだてるよりは、BGM的に楽しむ、それこそサウンドインテリアとしてリビングで使っても絵になりそうだ。
本稿担当者は仕事部屋のPCサイドに置いて聴いてみた。ここでは通常12cmフルレンジ(ECLIPSE TD510)を鳴らしているので、「TS-X40」に置き換えたら、マルチウェイの分離の良さに(今さら!)目が覚めた。
音調としてはスッキリしたウーファーと主張するスコーカー&トゥイーターのコンビネーション。フュージョンはヌケがいいし、回答でアドバイスをいただいた通り、J-POPやライブ音源も相性がいい。
こだわりは随所に
というわけでカー用ボックススピーカー「TS-X40」をホームで使ってオーディオを遊んでみたわけだが、作りのこだわりも感心した点。そのあたりも尋ねた。
Q3:本製品はかつてのヒット商品「TS-X60」等をベースとしているかと察しますが、リバイバル化、伝統を継ぐ製品化という意味で、どのような点に配慮されましたか?
A3:リバイバルを狙ったわけではなく、近年の旧車カスタムの盛り上がりを背景に、ヤングタイマーやネオクラシックといった車両の世界観にマッチし、そのカーライフやミュージックライフをより豊かにできる製品を目指しました。
デザイン的にも車両の雰囲気を損なうことなく、むしろ魅力を引き立てる存在となるよう配慮しました。当時のカーオーディオを楽しんでいたユーザーには懐かしさや親しみを感じていただきながら、一方で若い世代には歴史あるブランドならではの価値や世界観を知っていただけたら嬉しいです。
デザイン開発にあたっては、往年の人気モデルである「TS-X60」を参考にした部分もあります。ただし、単なる復刻を目指したわけではなく、当時のカロッツェリアらしさを現代に再解釈することを意識しました。
例えば、スピーカーグリルには現代的なパンチングメッシュではなく、あえてワイヤーメッシュを採用。また、バッフル固定用の六角ネジやフロントのアクリルパネルなど、当時を彷彿とさせるディテールを随所に取り入れています。さらに、塗装や素材の質感、各部の形状に至るまで細かな検討を重ねることで、単なるレトロ調ではない、カロッツェリアらしいオールドタイマーな世界観を表現しました。
確かに物欲を刺激されるデザインだ。PHILE WEBの音の仲間たちなら、「いま、手に入れておきたい!」と思わずにいられないだろう。人気商品ゆえ、ショップによっては品切れや入手に時間のかかる場合もあるだろうが、予約を入れて気長に待つことにしましょう。