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公開日 2025/11/09 16:10
過大な期待は禁物

ついに日本語対応、AirPodsの「ライブ翻訳」はどれだけ使える? 試してわかった実力と弱点

川端健次

iOS 26.1から、「ライブ翻訳」機能が日本語に対応した。


少しややこしいのだが、ライブ翻訳にはいくつかの種類がある。電話で通話中に音声やテキストへ翻訳を行うライブ翻訳機能、FaceTime中にライブキャプションが表示されるライブ翻訳機能、そして今回紹介する、AirPodsを使って相手の言葉を翻訳するライブ翻訳機能だ。


電話やFaceTimeのライブ録音も便利な機能だが、今回は注目度が一番高いであろう、AirPodsでのライブ翻訳機能を試してみた。


AirPodsのライブ翻訳とは何か?


AirPodsのライブ翻訳とはどういうものか。相手が話す言語を日本語など別の言語へリアルタイムに翻訳し、音声としてAirPodsから再生する機能だ。記事執筆時点ではベータ版だが、使ってみるとかなり実用的であることがわかる。


ライブ翻訳に対応する言語は、記事執筆時点で、イタリア語/スペイン語/ドイツ語/フランス語/ポルトガル語(ブラジル)/中国語(国語、繁体字)/中国語(普通話、簡体字)/日本語/英語(アメリカ)/英語(イギリス)/韓国語だ。今後増えていく可能性がある。


ライブ翻訳に必要なのは対応iPhoneと対応AirPods


ライブ翻訳を使うのに必要なのは、Apple Intelligenceに対応したiPhoneと、ライブ翻訳に対応したAirPodsだ。



Apple Intelligence対応のiPhoneと、ライブ翻訳対応のAirPodsが必要だ


具体的に挙げよう。Apple Intelligeneに対応しているiPhoneは、iPhone 15 Pro/15 Pro Max、iPhone 16/16e/16 Pro/16 Pro Max、iPhone 17/17 Pro/17 Pro Max/iPhone Airだ。日本語のライブ翻訳を行うためには、iOS 26.1以上にアップデートしておく必要がある。


またライブ翻訳に対応しているAirPodsは、AirPods Pro 3とAirPods Pro 2、AirPods 4となっている。こちらも、最新のファームウェアにアップデートしておこう。


ライブ翻訳で準備すること、ライブ翻訳の使い方


AirPodsでのライブ翻訳を使うには、iPhoneの「翻訳」アプリを使用する。あらかじめ翻訳アプリから、使いたい言語のデータをダウンロードしておこう。データ量は、たとえば中国語(簡体字)の場合で約800MBだ。多くの言語をダウンロードしておくと、それなりのデータ量になる。


なおライブ翻訳のデータは、iOSのAirPodsの設定から「言語」を押すと、削除したり追加したりできる。英語や中国語など使用頻度が高い言語のデータはiPhone内に置いておき、あまり使わないものはその都度ダウンロードするという方法がおすすめだ。



AirPodsの設定画面から翻訳対象言語のデータをダウンロードしたり削除したりできる


データをダウンロードしたら、翻訳アプリから「ライブ」を選ぶ。すると相手の言語と自分の言語を選択できる。選び終わったら「翻訳を開始」ボタンを押すと、ライブ翻訳が開始される。


なおライブ翻訳を開始するには、左右のイヤホンを装着した状態で、左右両方のAirPodsのステム部分を長押しする方法もある。一度翻訳の設定を済ませておけば、以降はAirPods側から機能を立ち上げられるので便利だ。また、両方のステムを長押しする操作は誤操作が起きづらく、よく考えられていると感心する。



「翻訳」アプリで相手の言語と自分の言語を設定できる。AirPodsの左右両方のステムをつまむ動作でもライブ翻訳を立ち上げられる


短い文章には使えるが、文章が長くなると正確性が大きく低下


さっそく試してみた。英語のネイティブ話者が周囲にいなかったため、日本人の英語話者と会話してみた。すると、短い文章の場合、かなり的確に文意を掴んで翻訳が行われる。たとえば買い物をする際や、急病時に症状を伝えるといった用途には十分使える印象だ。


では、こちらが話す日本語を、どの程度正確に英語に訳してくれるのか。これも、シンプルで短い文章であれば問題ない。だが、あえてプレゼンのような長い日本語を話して実験すると、途中で文章を切って、ブツ切りのまま英語に訳し始める。それゆえ、もとの日本語から、かなり意味が変わってしまうことが多発する。


英語と日本語のライブ翻訳は、ビジネスなど微妙な言い回しが重要な場面であったり、正確性が重要な用途に使うのは、まだ危険という印象だ。意図しない言葉に訳され、誤解される可能性がある。



長い文章を話してみると、途中で詰まっているわけではないのに、短く文章をブツ切りにされて訳される。このため正確性はかなり低くなる


日本語と英語では文章構造の違いからタイムラグが発生しがち


また、相手が話し終わってから翻訳が聞こえてくるまでのタイムラグはどうしても発生する。特に英語と日本語のあいだでは長くなりがちだ。


とはいえこのタイムラグは、英語と日本語の文構造が異なることが根本的な要因のはずだ。英語などでは動詞が前の方に来るのに対して、日本語は文の末尾に来ることが多い。文の意味が決定するタイミングが異なるため、どうしてもタイムラグが大きくなりがちだ。


このタイムラグをなるべく短くしようとすると、上述のように、文章を途中で切って、その部分だけを訳すことになる。この精度があまり良くないと、誤訳も発生してしまうということだ。


ライブ翻訳自体はスピーディーに動作するので、相手がいる会話であれば、「翻訳を挟むのですこしテンポを落として、なるべく一文一文を短く話して」などと伝えれば、会話を成立させることはできるだろう。



短くシンプルな文章を訳すのにはかなり使える印象だ


一方で、相手が早口でまくしたてるといったシチュエーションになると、ここでもブツ切り翻訳が行われ、ライブ翻訳の正確性は低下する。さらに複数話者になるとお手上げだ。


実際に、アップルの発表会動画を再生し、ライブ翻訳を実行したら、日本語に変換されるまでのタイムラグが長くなりすぎ、固有名詞も正しく訳されず、耳だけでは何を喋っているのか、ほとんど意味が取れなかった。結局、ディクテーションされた英語のテキストを読んだ方が正確で速い、という本末転倒なことになってしまう。


デバイス側で処理するライブ翻訳。そのメリットとデメリット


良い部分もある。ライブ翻訳の一番良いところは、クラウドで処理するのではなく、あらかじめダウンロードした言語のデータを活用し、iPhoneのデバイス内で翻訳処理するため、通信環境が必要ないことだ。単純に通信環境が悪いところで使えるメリットもあるし、モバイル通信データ量を消費しないのも嬉しい。


ただそのぶん、翻訳精度はある程度限定される。たとえば最新の固有名詞や、特殊な名詞などは適切に訳されない。


ほかにもデバイス処理のデメリットはある。クラウドの場合、サーバ側の機能増強で、日々翻訳精度が更新されることも多いが、デバイス側で処理する場合、デバイス側のハードウェアの処理性能に翻訳精度が大きく関わる。サポートするデバイスが古くなると、進化のスピードが鈍ることもあり得る。


ライブ翻訳はまだベータ版、今後の進化に期待したい


見て来たように、ライブ翻訳はまだ完璧な機能にはほど遠いが、伸びしろは大きそうだ。日常のシンプルな会話程度であれば、すでに実用レベルに達している。


外国語に興味がある方は、ぜひ一度使って試してみて欲しい。だが、特に長文になると、誤訳されて意味が変わってしまうケースがあることは、あらかじめ知っておくべきだ。


厳しいことも書いたが、もっと翻訳の精度が高まり、互いにAirPodsを装着した状態でライブ翻訳を使えば、母語同士でコミュニケーションできる未来も想定できる。


まだベータ版であることからもわかるとおり、将来的に翻訳機能が進化することは確実と思われる。今後の動向に期待したい。

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