公開日 2023/09/21 06:40

「FF14」アナログプレーヤーはガチ。数年かけた音質/デザインへのこだわりを聞いた

実はEPアダプターの制作が一番大変だった
編集部:押野由宇
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スクウェア・エニックスが、MMORPG『ファイナルファンタジーXIV』(以下、FF14)をモチーフに、かなり力の入ったアナログプレーヤーをリリースした。

商品名は「ファイナルファンタジーXIV ダイレクトドライブターンテーブルシステム FFXIV-SQ-1500」。オーディオファンならピンとくるだろうが、テクニクスブランドの人気モデル「SL-1500C」をベースに採用している。現在予約受付中で、販売は2024年2月17日。その価格は187,000円(税込)と、オーディオに馴染みのない方からすれば驚かれるかもしれない。しかし本機についてスクウェア・エニックスに伺ったところ、それに相応しいだけのこだわりがあった。




■実現まで数年、音質を求めて選び抜いたベースモデル



そもそもなぜアナログプレーヤーをアイテムとして選んだのだろうか。その理由については、昨今の世界的なアナログレコードブームを背景に、スクウェア・エニックスが自社ゲームタイトルのサウンドトラックなどのアナログレコード展開に注力していることが挙げられる。実際にそれらのレコードは世界各国で好評だというが、一方で「再生環境をまだ持っていない方もいるのでは」というところから企画がスタートしたそうだ。

「FFXIV-SQ-1500」 187,000円(税込)

自社で展開するアナログレコードを聴いて欲しいから、というのは至極まっとうな理由だ。続いては、数あるアナログプレーヤーのなかで、なぜベースモデルとしてSL-1500Cが選ばれたのか、という疑問が浮かぶ。SL-1500Cは非常に優れたモデルだが、市場にはもっと安価なモデルも多数存在している。これについて問うと、やはり価格的により購入しやすい機種も当初は検討されていたという。

ただ、商品化に向けて協議を続けていくなかで、高音質であることを重要な条件に据えた機種選定を重ねた結果、SL-1500Cが選ばれることになった。その進行には数年かけたというほどの力の入れようだ。

なお、FF14のアナログレコードは、オーディオ・マスタリングエンジニアの巨匠バーニー・グランドマン氏がカッティングしている。高音質盤としてもオーディオファンには注目いただきたい。

SL-1500Cはオーディオファンからの支持も厚く、その音質についてはFF14のサウンドディレクターである祖堅正慶氏の求めるクオリティに達していたが、FF14モデルとなるにはデザインの自由度も必要となってくる。そういった条件もクリアできたのも、SL-1500Cに決定したポイントだろう。

FF14の世界観を演出した特別なデザイン

実際、そのデザインはファンアイテムとしても、そして1つのプロダクトとしても美しく仕上げられている。写真で見ていたときよりも、届いた実物は高級感があり、質感がいい。佇まいから “良いもの” であることが伝わってくる。

とはいえこのデザインも時間がかかったそうで、ブラックとゴールドに全体をまとめるため、色のバランス調整や安っぽく感じないように調整するのに苦労したらしい。そのおかげで「FF14を象徴とするメテオマークを大きく使いながらも高級感を持った筐体が完成した」と、スクウェア・エニックスとしても納得のいくデザインとなった。ダストカバーも高級感を演出するために、あえてスモーク仕様にしたとのことで、細部まで追求されていることがわかる。

全体をブラック×ゴールドでまとめ、高級感と世界観を両立するため細部までこだわられている

ちなみに、そのほかにもゴールドのトーンアーム、エオルゼア十二神のシンボルやエオルゼア文字の印字など、様々なポイントが挙げられるなかで、実はオリジナルのメテオ型EPアダプターの製作が一番大変だったとのことだ。ベースモデルより価格が高くなるのは専用モデルの常だが、本機については作り込みにコストをガッツリかけている模様だ。

アルミ削り出し/アルマイト加工処理されたメテオ型EPアダプターが、実は一番苦労したという

■システム構築はハードルが高そう、に見えてそうでもない



しっかりと作られたアナログプレーヤーを手に入れたとして、再生システムはどのように構築すればいいのか。一般的な再生システムとして、次のような機材が必要となってくる。

・アナログプレーヤー
・フォノイコライザー
・アンプ
・スピーカー

一般的なアナログレコード再生システムの構成イメージ

こう見るとハードルが高く感じてしまう方もいるかもしれない。だが、FFXIV-SQ-1500(とベースモデルのSL-1500C)には、フォノイコライザー機能が内蔵されている。そのため、すでに必要な機材の2/4は揃えられているとも言えるのだ。

背面端子部。フォノイコライザー機能を活用して、アンプやアクティブスピーカーなどに直接接続できる

アンプとスピーカーについても、アクティブスピーカーやパワードスピーカーと呼ばれるアンプ内蔵スピーカーが、手に入りやすい価格帯から揃っている。パソコンと接続するいわゆるゲーミングスピーカーも、このタイプであることが多い。

FFXIV-SQ-1500との接続はRCAケーブル(赤白のオーディオケーブル)で行うことになるため、その入力端子を搭載しているかは要確認。ただこちらも、RCA(メス) - 3.5mm(オス)の変換プラグなどを用いれば、大多数の製品が搭載する3.5mm端子への接続が可能になる。サウンドバーやBluetoothスピーカーなどに備わっていることもあるので、家にある機材を見渡せば、追加費用は数百円などで済むかもしれない。

シンプルなシステムの一例。アナログプレーヤー+アクティブスピーカーの場合、置く場所もコンパクトにできる

■ただのファンアイテムとして見るのはもったいない、上質なアナログプレーヤー



さて、オーディオシステムの音を良くも悪くも左右するのは、スピーカーが大きな役割を担うと言われている。スピーカーが音の出口である以上、そこで崩れてしまえば、どれだけ “良い音” を運んできても台無しになるのは確かだろう。しかしその逆もしかり、どれだけ出口が良くても、入口が整っていなければこれまたどうしようもない。

FFXIV-SQ-1500は、優れたアナログプレーヤーであるSL-1500Cがベースモデルだけに、高音質であることに疑いようはない。実際に、実売価格1万円台のアクティブスピーカーEDIFIER「MR4」をつないでみても、普段づかいしているBluetoothスピーカーなどに比べて圧倒的に音の情報量が多い。エッジの効いたギターやノリの良いベースがガンガン飛び込んできて、音楽だけで高揚感が得られる。FF14の作中BGMのひとつ、「嵐の中の灯火〜怪鳥巨塔 シリウス大灯台〜」のようなコーラスが美しい楽曲では、音の広がり、余韻の響きに思わず目を瞑って聴き入ってしまう。


またシステムのコアとなるプレーヤーが良いからこそ、ステップアップもしやすい。テクニクスが “プレミアムクラス” として展開する「C600シリーズ」は、ネットワークCDレシーバー「SA-C600」とスピーカー「SB-C600」があわせて22万円(税込)という値付けだが、SL-1500Cとのマッチングも考慮された組み合わせだけに、素晴らしいサウンドを聴かせてくれる。

FFXIV-SQ-1500とアクティブスピーカーの組み合わせも大変楽しめるものだったが、テクニクスで組んだシステムではこれまで気づかなかった小さな棘のようなわずかなノイズ感が取り除かれ、耳心地の良さが段違いにアップする。音がソフトなので細かなディテールにまで遠慮なく集中して耳を傾けられるし、一方で「過重圧殺!〜蛮神タイタン討滅戦〜」のような荒々しい楽曲は、その重厚さや迫力はキープしたまま、ディストーションを楽曲としての体を成したバランスで再現。これがあまりよろしくないシステムだと、音楽として狙った歪みなのか、再生の過程で生まれたノイズなのかが判断できなくなってしまう。そんな余計な心配はまったくいらず、安心して音楽鑑賞に身を委ねられる。


FFXIV-SQ-1500は単なるファンアイテムに留まらず、相方となるアンプやスピーカーなどを選ぶ楽しみも体験できる、唯一無二のデザインを持った、優秀なオーディオ機器だ。まずは手持ちの機材で音を鳴らすところからスタートして、システムをアップグレードしていき、楽曲に込められたこだわりを引き出してみてほしい。


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