ルームインルームの防音仕様で観たい時に気兼ねなく! 大迫力のプライベート8Kシアター

外の雑音と切り離された防音室。上映のため照明を落とせば、眼前には映像だけが浮かび上がり、映画の世界に没入できる。映画館もかくやと思わせる出来栄えながら、座り心地よいリクライニングソファはオーナー好みのスクリーン前寄りに配置。造作ラックには手ずから収集した数々のソフトが並ぶ。
観たい作品を観たい時に、好きな音量とポジションで。アバック新宿が手掛けた高橋邸のシアタールームには、自宅の映画館の醍醐味がこれでもかと詰まっている。本稿では、アバック新宿のスタッフとともに高橋邸を訪れて訊いた、ホームシアターのこだわりとアイデアをお届けする。
マンションでも気兼ねなく音出しできる高水準の防音性能
高橋邸は新築マンションの1室、17畳ほどの空間を丸ごと使ったホームシアター。音の伝わりやすいマンションにも関わらず、外へ音漏れする心配もなく、楽器演奏が可能なほどの防音仕様。それでいて、機器の理想設置や過ごしやすい空間づくりにもとことんこだわった。この設計の緻密さこそ、高橋邸の白眉である。
部屋はルームインルーム工法を採用し、箱型に20cm以上のぶ厚い空気層が設けられている。加えて、音が出入りしやすい窓、扉、換気扇にもそれぞれ厳重に対策を施した。
窓は55cmほどの空気層を設けた二重窓であることに加えて、ベランダのスペースも作用して、内外ともに音の干渉はほぼないという。部屋の表はバス通りだが、室内は静か。扉側は共用廊下に面しているため、前室を設けて対策。こちらも二重扉となっている。
徹底した防音設備が整えられた要因は、設計の初期段階からアバックが参画していたこと。壁、床、天井、設備などがなにもないスケルトンの状態から、シアタールームをつくりあげた。
アバックで防音設計を一手に担っている関口氏は「建築設計を担当していた大和ハウスと何度も打ち合わせ、自分自身も3、4回と現場に足を運んでは、小さなズレを修正して設計し直すのを繰り返しました。映像音響のクオリティもさることながら、とても過ごしやすいホームシアターになったと感じています」と自信をのぞかせる。
機器選定、レイアウト、空間設計まで、妥協なくクオリティを追求
オーナーである高橋さんが重視したのは、シアタールームで映画館のような視聴体験ができること。大きなスクリーンと臨場感あるサラウンドはもちろん必須だ。
映像は120型のスクリーンに、ビクターの8Kプロジェクター「DLA-V800R」を採用。プロジェクターは8K、4K/120Hz、3Dへの対応をマストに考えていたことから、ほぼ決め打ちとなった。
スクリーンサイズは、シアタールームが完成するまでの仮住まいにて高橋さんが壁にマスキングテープを貼り、100型と120型をそれぞれシミュレーションして検討。視聴位置と画面サイズを実際の生活環境に落とし込んでみると、高橋さんの考える理想の環境には、120型の導入が不可欠だと確信したのだという。
アバックはさまざまな要素との共存に苦心しつつも、見事に120型の導入を実現。防音のための設計、スクリーンの大きさ、プロジェクターの投写距離、スピーカーの配置など、ひとつを変更すればそれに合わせてすべてを調整する必要があるほど緻密に設計、空間を最大限に活用している。
サラウンドは、Dolby Atmosの再生にも対応する7.2.6ch。フロアの7chはBowers & Wilkins(以下、B&W)で揃えて音色を統一。さらにスピード感のある重低音とコンパクトサイズが特徴的なイクリプスのサブウーファー「TD316SWMK2」を2台採用し、低域表現を強化。没入感あふれる立体音響を再現する。
「実はホラー系は苦手だったのですが、このシアタールームで観ると怖さが全然違い、逆にそれが面白さにつながって、最近『死霊館シリーズ』にハマっています」と高橋さん。
そして、高橋邸の作り込みは機器のインストールにとどまらない。専用の機器を使わず、内装の素材やしつらえの工夫で映像音響のクオリティを高めているのである。
