公開日 2011/10/28 17:33

Apple Losslessのオープンソース化でオーディオはこう変わる!?

可逆圧縮方式のオーディオコーデック「Apple Lossless(ALAC)」がオープンソース化された(関連ニュース)。

端的にいえば、ソフトウェアのオープンソース化は「無償化」だが、これまで非公開だったALACのソースコードがオープンになったことは、長らく非公開だったその仕様が明らかになることを意味する。

そして現在におけるApple製品/サービスの存在感を考えると、その影響は広範囲に及ぶと解釈すべきだ。本稿では、その理由と影響について考えてみたい。

■ネットオーディオ機器がALAC対応に?

ALACのオープンソース化は、その仕様が完全に公開されたことと、その機能を無償で製品/サービスに組み込めるようになったことを意味する。

ALAC対応機が少ない現状、市販のオーディオ機器でALAC音源を聴こうとすると、PCからのUSB出力またはiPod/iPhoneのデジタルアウト、あるいはAirPlayに頼るしかないが、今後は多くの機器で直接再生できるようになる可能性が高い。特に可逆圧縮コーデックの需要が大きいネットオーディオの場合、ALACをサポートする必要が高まるだろう。

ではいつ聴けるようになるかだが、対応コーデックをファームウェアの更新で変更できる機種であれば、比較的早い時期にファームウェアアップデータの形で配布される可能性がある。iTunesユーザーの数を考えれば、少なくとも現在開発中のFLACに対応するクラスの製品については、ALACにも対応するよう機能修正を行うものと期待したい。

iTunesライブラリにストックされたALACの楽曲を、ネットワークオーディオプレーヤーで直接聴ける日は近い?

一方、ポータブルオーディオなどデコード機能組み込みのチップを採用する機種の場合、ALAC対応は微妙だ。市場で高いシェアを有するApple製品は以前からALACをサポートしているし、直接iTunesと同期できない他社製品がALACに対応したところで、製品のセールスポイントとはなりにくい。コスト増の原因にならなければ、いずれALAC対応チップは増えるのだろうが、扱いとしては"不要不急"になるのではなかろうか。

■ハイレゾ音源配信サイトはどう動く? iTunes Storeは?

現在、オーディオファンを対象としたハイレゾ音源配信サイトの多くは、フォーマットにFLACを採用している。これはFLACのコーデックとしての優秀さというよりも、多くのネットオーディオ機器が可逆圧縮コーデックではFLACのみ対応している、という現実に基づく判断だろう。

だからネットオーディオ機器でのALAC対応が進めば、iPod/iPhoneでもそのまま再生できるという利便性から、消費者のALAC指向が強まる可能性もある。ハイレゾ音源配信サイトのALAC対応が、いずれ必要になるのではないだろうか。

ただしiTunes Storeでの立場は微妙だろう。今回はDRM(AppleのDRM技術は「Fairplay」)の仕様まで公開されたわけではないため、オープンソースのALACコーデックを用いたネットオーディオ機器では、iTunes Storeで購入した楽曲にDRMが付いていた場合、再生できないからだ。

DRMフリー化が進まない日本のiTunes Storeでは、ALAC対応は期待できそうにない

米国のiTunes StoreはDRMフリー化が完了したため(iTunes Plus)、この問題は発生しないかもしれないが、日本は事情が違う。米国にしても、マスに売るには256KbpsのAACで十分という判断が下されるかもしれず、ALACの取り扱いが始まるにしてもごく一部のジャンル/楽曲に留まる可能性が高いと考える。

(海上 忍)

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

関連リンク

トピック

クローズアップCLOSEUP
アクセスランキング RANKING
1 BRAVIAが空飛ぶ時代? 動画コンテンツの楽しみ方に押し寄せた大きな変化を指摘するソニーショップ店長。超大画面はさらに身近に
2 ネットワークオーディオに、新たな扉を開く。オーディオ銘機賞の栄えある“金賞”、エソテリック「Grandioso N1」の実力に迫る
3 Nothing、最大40%オフのウィンターセール開催
4 LG、世界初のDolby Atmos FlexConnect対応サウンドバー「H7」。オーディオシステム「LG Sound Suite」をCESで発表へ
5 「ゴジラAR ゴジラ VS 東京ドーム」を体験。目の前に実物大で現れる“圧倒的ゴジラ”の臨場感
6 衝撃のハイコスパ、サンシャインの純マグネシウム製3重構造インシュレーター「T-SPENCER」を試す
7 AVIOT、“業界最小クラス”のANC完全ワイヤレス「TE-Q3R」。LDAC、立体音響にも対応
8 ソニー「WH-1000XM5」に“2.5.1”アップデート。Quick AccessがApple Music/YouTube Musicに対応
9 「HDR10+ ADVANCED」が正式発表。全体的な輝度向上、ローカルトーンマッピングなど新機能も
10 クリプトン、左右独立バイアンプ機構のハイレゾ対応アクティブスピーカー「KS-55HG」新色 “RED”
12/19 11:02 更新
音元出版の雑誌
オーディオアクセサリー199号
季刊・オーディオアクセサリー
最新号
Vol.199
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
特別増刊
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
最新号
プレミアムヘッドホンガイドマガジン vol.23 2025冬
別冊・プレミアムヘッドホンガイドマガジン
最新号
Vol.23
プレミアムヘッドホンガイド Vol.33 2025 SUMMER
プレミアムヘッドホンガイド
(フリーマガジン)
最新号
Vol.33(電子版)
VGP受賞製品お買い物ガイド 2025年冬版
VGP受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年夏版(電子版)
DGPイメージングアワード2024受賞製品お買い物ガイド(2024年冬版)
DGPイメージングアワード受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年冬版(電子版)
WEB
  • PHILE WEB
  • PHILE WEB AUDIO
  • PHILE WEB BUSINESS
  • プレミアムヘッドホンガイド
  • ホームシアターCHANNEL
  • デジカメCHANNEL
AWARD
  • VGP
  • DGPイメージングアワード
  • DGPモバイルアワード
  • AEX
  • AA AWARD
  • ANALOG GPX