公開日 2018/12/11 06:00

“音も最高、スペックも最高” のAKM新フラグシップDAC「AK4499」。そのサウンドは数段上の高みに至った

【特別企画】開発者インタビューも
岩井喬
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さて、この電流出力型と電圧出力型の違いについて詳しく見ていこう。

まず、AKMが長年作り続けてきた電圧出力型とはどういったものなのか。DACチップ内部では基本となるD/A変換と電圧出力用アンプが一つにパッケージングされている。一般的なコンポーネントの接続では電圧出力が用いられており、LSIの出力の段階で、そうした形式で信号が取り出せる。つまりアンプも内蔵しているため、スペック通りの特性を得やすいというメリットがある。

対する電流出力型は、D/A変換のみを受け持つようなイメージだ。電圧出力用アンプはLSIの外にある。DACチップを使うオーディオメーカーは、この電圧出力用アンプから設計する必要性があるので、一見手間がかかり、デメリットの方が大きいように思えるが、逆にコンポーネント全体から見ると設計の自由度が増すとも言える。

電流出力型とすることで、電流→電圧出力用アンプはオーディオメーカーが自由に開発でき、音づくりの幅が広がる

電流出力型では、いわゆるI-V変換回路からオーディオメーカーが担当するわけだが、その外付け部品や構成、チューニングによってブランドカラーを出しやすい。熟練した設計者であるほど、そのこだわりが反映できるのである。ただし使いこなしの点ではややハードルが高く、また電圧出力型に比べて外付けパーツが増えることから、コスト面でも不利といえるかもしれない。

理想を突き詰めたら電流出力型になった

今回、AK4499開発陣から詳しくお話を伺う機会を得た。ご対応いただいたのは旭化成エレクトロニクス株式会社 オーディオ&ボイス事業開発部・オーディオマイスターの佐藤友則氏、そしてAK4499の製品設計を担当された、オーディオ&ボイス製品設計部の中鉢達也氏、中元聖子氏、山本竜蔵氏である。

画期的な新DAC開発の背景をくわしく聞いた

まずは、今回初めて電流出力型とした理由を佐藤氏に伺ってみた。

「LSIという半導体の商品の性格上、スペック競争、スペックに対するマーケットの要求ということに対して、2番手では勝負が難しいのが実情です。AK4497の開発が終わった段階から、このAK4499の構想はありました」。

「ただ、私から『電流出力型が欲しい』とリクエストしたわけではありません。『どんな形であれば理想のスペックが出るか』をまず検討しました。その結果、電流出力型が選ばれたというわけです。電圧出力型でS/N比128dBというのは、ほぼ物理限界に近い状態です。これ以上の数値を実現するためには電圧出力用アンプを外に出し、D/A変換そのもののクオリティを上げることが最善という判断になりました」。

オーディオマイスターの佐藤友則氏

AK4499の開発には3〜4年を要したというが、そのスタート点であるAK4497発表直後、AK4497よりスペック数値上は高いライバルモデルが登場する。決して音質や技術で負けているわけではないのに、スペック値だけで判断されたことは非常に悔しかったという。

そして今回のAK4499では、音だけでなく理詰めでも一番であることを示すため、音質は当然ながらスペック値も最高であることが求められた。その課題をクリアするため、どのような設計としたのだろうか。

次ページ圧倒的な高スペックが生まれた背景とは?

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