公開日 2018/04/16 12:25

「小型ラズパイでBluetoothオーディオ」を手軽に実現する方法

海上忍のラズパイ・オーディオ通信(43)

Hi-Fi志向オーディオコーデックのエンコーダ部分がAndroid 8からオープンソース化されたことも、追い風といえるだろう(関連記事)。AndroidのカーネルはLinux派生とはいえ上位レイヤーが大幅に異なるため、右から左へというわけにはいかないだろうが、LinuxのBluetoothスタック「BlueZ」に移植される可能性はあるはず。そうなると、Raspberry Pi、特にコンパクトなRaspberry Pi Zero Wの利用価値は大いに増しそうだ。

Hi-Fi指向オーディオコーデックのエンコーダ部分はAndroid 8からオープンソース化され、多くの端末に標準装備されている

ラズパイ用DACボードを「スマホのストリーミング再生専用機」に

Raspberry Pi Zero Wなど小型シングルボードコンピュータでBluetoothオーディオを楽しめるようになるとどうなるか、その姿を実感させてくれる存在が、emerge+が開発した「はちわれRN52」だ。

この「はちわれRN52」は、Raspberry Pi Zeroと同サイズの単機能なシングルボードコンピュータ。Microchip社製Bluetoothオーディオモジュール「RN52」を搭載し、OSを用意することなくI2S接続したDACボードへデジタル出力できることが特長である。Linuxディストリビューションの手配も、microSDに書き込む作業も必要なく、ただDACボードをつなぎ電源(USB micro-Bのバッテリー)を接続すれば良い。

BluetoothオーディオモジュールRN52を搭載した「はちわれRN52」をSabreberryDAC ZEROに接続する

対応するDACボードは、起動時にレジスタ初期設定が不要かつマスタークロックを生成できるDACチップ(クロックまたはPLLを内蔵したもの)に限定されるが、以前当コラムで紹介した「SabreberryDAC ZERO」は動作条件にピタリとはまる(関連記事)。つまり、SabreberryDAC ZEROを載せるだけでBluetooth音源専用ヘッドホンアンプになるというわけだ。

試したところ、セットアップは驚くほど簡単!「はちわれRN52」と「SabreberryDAC ZERO」を接続し、スペーサーで高さ調整してネジ止めするだけ。バッテリーをつないで側面のスライドスイッチを動かせば電源がオンとなり、スマートフォンやパソコンとペアリングできるようになる。あとは、Bluetoothイヤホン/スピーカーを接続した時と同じ要領で音楽を再生すればいい。

iPhone Xとペアリングしたところ。通信機能を持たないアクティブスピーカーをストリーミング対応させる即戦力となりそうだ

専用アルミベースを装着したところ。再生/停止と曲送り/戻しボタンはBluetoothのAVRCPに変換される

「はちわれRN52」が対応するコーデックはSBCのみのため、音質はどうだろう?と思いつつ聴いてみると……そこには確かに、SabreberryDAC ZEROとしての音があった。直接Raspberry Pi Zeroでドライブした時と比べれば音は痩せてしまうが、DACチップ(ESS「ES9023P」)やオペアンプ(TI「OPA1662」)、MELF抵抗など厳選された部品の効果もあり、これでSBCか?と疑うほど快活なサウンドを楽しめる。なお、初期ロットはRN52モジュールのI2S出力でL/Rが逆転する不具合があったが、対策版が近々提供開始されるとのこと。

専用のアルミベースも完成度が高い。聞けば、SabreberryDAC ZERO開発者のTakazine氏と、Raspberry Pi用のアルミケースで知られるN2ファクトリーのコラボレーションにより実現した製品だそうで、SabreberryDAC ZEROの基板に実装されたタクトスイッチに力が伝わるよう、慎重に調整されたアクリル板が同梱される。ボリュームボタンには対応しないが、再生/停止と曲送り/戻しボタンはBluetoothのAVRCPに変換され、スマートフォンなどの送り出し側に伝わる仕組みだ。

側面のスライドスイッチで電源をオンするだけで、Bluetoothレシーバーとして動作する

筆者はこの組み合わせをアクティブスピーカーに接続して聴いたが、普段の構成(Raspberry Pi 3とDAC 01)と比べても、圧倒的に気楽なところが良いと感じた。Spotifyなどストリーミングサービスの曲を手近にある(通信非対応の)機器で再生し続けるには、まさにピッタリと言える。このように気軽に楽しめるラズパイ・オーディオがあっても良いな、と思うがいかがだろうか。

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