公開日 2017/07/28 20:15

VGP批評家大賞を受賞! KEFのスピーカーシステム「Qシリーズ」を徹底分析

【特別企画】完成度を高めた普及帯シリーズ
山之内正
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
■Q350を聴く ー 反応の早さと豊かな低域再現を両立。音色の再現力も高い

まずは16.5cmのUni-Qドライバーを積む2ウェイ・ブックシェルフ型「Q350」を聴く。インピーダンス8Ωで感度は87dBというスペックを見れば鳴らしやすそうなスピーカーであることは想像できるが、実際の再生音もその期待を裏切ることがなく、控えめのボリューム位置でも活気のあるサウンドが飛び出してくる。

KEF「Q350」

音調はカラッと明るく粒立ちが鮮明、ピアノトリオではベースとドラムが強い音でリズムを刻んでもピアノの音色がくすむことがなく、一音一音を明瞭に聴き取ることができる。低音から中低音にかけて音が集中するフレーズでも3つの楽器の発音が正確に揃っているので、リズムの動きがピタリと噛み合い、演奏の推進力の強さが生々しく伝わる。

オルガン伴奏の合唱では外見とは裏腹に低音の量感が豊かで、スペックの数字よりも1オクターブ低い音域でもエネルギーが極端に落ちることがなく、足鍵盤が受け持つ低音の動きが途切れず安定した響きでコーラスを支える。その低音は振動対策が弱いスピーカーだとキャビネットの共振で低音にブレが生じやすい音域だが、本機の低音は量感の割にイメージが広がりすぎることがなく、動きが重くなる気配もない。ひと回り小さいUni-Qドライバーを採用したLS50も低音のエネルギー感には余裕があるが、Q350はウーファーのサイズが生む量感が加わるので、少なくともベースの音域で音圧不足を感じることはまずないだろう。

反応の速さと音の切れの良さをKEFの上位モデルから受け継いでいることにも注目したい。ハイレゾ音源でスティーリー・ダン『バビロン・シスターズ』を聴くと、音圧感の強いバスドラムの低音を瞬時に制動するタイトな感触があり、立ち上がりにも緩みがない。ボーカルとコーラスのセパレーションの良さ、リズムの明瞭な粒立ちなど、音源のハイレゾ化で際立つようになった特徴が鮮やかに浮かび上がってきた。

DSD録音のピアノ連弾曲を聴くと、低音と中高音2つのパート間のバランスが良いことに加え、ハーモニーがにごらず、和音の澄み切った美しさが印象的だ。リアバスレフ方式に変更することでポートノイズの影響を減らした効果だと思うが、連弾曲を2台のピアノで演奏することで明瞭な響きを目指した演奏者の意図が本機の再生音からそのまま伝わってくる。ピアニストのタッチの個性を聴き取れるのはDSD録音ならではのアドバンテージで、ペア7万円を切る廉価なスピーカーとは思えないほど音色の再現力も高い。

オーケストラのDSD録音は旋律楽器が積極的に前に出る一方、打楽器や木管が自然な距離感でスーッと後方に下がって、ステージ前後方向の深さを立体的に再現してみせた。コンパクトなブックシェルフ型スピーカーはフロア型に比べて立体的な音場を引き出しやすいのだが、本機は同軸型ならではの正確な音像定位がそれに加わるためか、余韻の伸びやかな広がりとフォーカスの良い正確な音像定位が立体感を際立たせるのだろう。

次ページフロア型「Q750」を聴く。従来機からさらに一段上の評価を与えられる理由

前へ 1 2 3 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
クローズアップCLOSEUP
アクセスランキング RANKING
1 BRAVIAが空飛ぶ時代? 動画コンテンツの楽しみ方に押し寄せた大きな変化を指摘するソニーショップ店長。超大画面はさらに身近に
2 ネットワークオーディオに、新たな扉を開く。オーディオ銘機賞の栄えある“金賞”、エソテリック「Grandioso N1」の実力に迫る
3 Nothing、最大40%オフのウィンターセール開催
4 LG、世界初のDolby Atmos FlexConnect対応サウンドバー「H7」。オーディオシステム「LG Sound Suite」をCESで発表へ
5 「ゴジラAR ゴジラ VS 東京ドーム」を体験。目の前に実物大で現れる“圧倒的ゴジラ”の臨場感
6 衝撃のハイコスパ、サンシャインの純マグネシウム製3重構造インシュレーター「T-SPENCER」を試す
7 AVIOT、“業界最小クラス”のANC完全ワイヤレス「TE-Q3R」。LDAC、立体音響にも対応
8 ソニー「WH-1000XM5」に“2.5.1”アップデート。Quick AccessがApple Music/YouTube Musicに対応
9 「HDR10+ ADVANCED」が正式発表。全体的な輝度向上、ローカルトーンマッピングなど新機能も
10 クリプトン、左右独立バイアンプ機構のハイレゾ対応アクティブスピーカー「KS-55HG」新色 “RED”
12/19 11:02 更新
音元出版の雑誌
オーディオアクセサリー199号
季刊・オーディオアクセサリー
最新号
Vol.199
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
特別増刊
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
最新号
プレミアムヘッドホンガイドマガジン vol.23 2025冬
別冊・プレミアムヘッドホンガイドマガジン
最新号
Vol.23
プレミアムヘッドホンガイド Vol.33 2025 SUMMER
プレミアムヘッドホンガイド
(フリーマガジン)
最新号
Vol.33(電子版)
VGP受賞製品お買い物ガイド 2025年冬版
VGP受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年夏版(電子版)
DGPイメージングアワード2024受賞製品お買い物ガイド(2024年冬版)
DGPイメージングアワード受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年冬版(電子版)
WEB
  • PHILE WEB
  • PHILE WEB AUDIO
  • PHILE WEB BUSINESS
  • プレミアムヘッドホンガイド
  • ホームシアターCHANNEL
  • デジカメCHANNEL
AWARD
  • VGP
  • DGPイメージングアワード
  • DGPモバイルアワード
  • AEX
  • AA AWARD
  • ANALOG GPX