公開日 2016/07/11 13:04

Fenderイヤホン全5機種一斉レビュー!各モデルの音の違いを探る

ドライバーや構成の違う5モデル
BAドライバー2基とダイナミックドライバー搭載の最上位機種「FXA7」

今回のラインナップ最上位のイヤホンが「FXA7」だ。ユニット構成はやはりハイブリッドだが、BAドライバーを2基(いずれも高域用)と、レアアース使用の9.25mmダイナミックドライバー1基という3ドライバー構成だ。BAドライバーはデュアル使用するために最適化され、超高音域までのカバーを狙う。ネットワークを用いずにBAドライバーとダイナミックドライバーをクロスさせる仕様はFXA6と同様だ。

「FXA7」¥OPEN(予想実売価格62,800円前後)

ユニット数が増えても筐体のデザインは共通で、3Dプリンターにより製造されたハウジング、そしてGroove-tunedポートを搭載する。再生周波数帯域は6Hz〜21kHzで、MMCXによるリケーブルにも対応する。

FXA7のサウンドは、構成からも想像できる通りFXA6の上位版と言うべきものなのだが、そのクオリティーはさらなる高みへ到達している。さらに言えば、価格に相応しい品位あるサウンドにまとめ上げられている。

『The Getaway』を聴くと、ベースもバスドラムもさらに深く沈み、実在感も増す。滲みもいっそうなくなる。そして、BAドライバー2基のFXA5ならではの要素(言い換えれば、BA×1+ダイナミック×1のFXA6が持ち得なかった要素)を、本機が獲得していることにも注目すべきだ。

具体的には、低域における音の芯と立ち上がりの瞬発力、低域から中域にかけての音の情報量と明瞭感である。FXA6に対して高域にBAドライバーを1基追加した構成であるFXA7が、中低域の音質も大きく向上していることが興味深い。


ギターやボーカルの音は特に明瞭で、音楽のダイナミズムを余すことなく表現する。エレキギターのカッティングの小気味良さはシリーズ中でも突出していて、それでいて空間の広がりや見通しの良さも両立している。ギターの帯域の情報量の多さは、他のイヤホンではそうそう聴けないもので、このあたりにはギターブランドとしてのプライドさえ感じさせる。ギターの充実に対してボーカルが埋もれることなく、メロディーラインが際立つのにも好感が持てる。中低域も含め手、全域にわたる帯域バランスに非常に優れている。

こうした特質は、ジャズやクラシックでも十分に発揮される。ジャズピアノは生々しく艶やかな響きで、ウッドベースはソリッドかつ深く沈み込む。ライブ演奏ならではの空気感の再現にもぜひ耳を傾けてほしい。クラシックは音場/音像を本機ならではの解釈で聴かせてくれる。そこで特に際立つのは臨場感だ。

3Dプリンターで作られたハウジングはカスタムIEMのように耳にフィットする

「DXA1」「FXA2」「FXA5」「FXA6」と順に聴いたが、「FXA7」では各機種それぞれの長所をうまく統合している。現時点でFenderが理想と考えるサウンドがここに体現されていると言っていいはずだ。

   ◇   ◇   


Fenderによるイヤホン全5機種を今回はじっくり聴きこんでみたが、そこに通底するサウンドキャラクターは一言では言い表せない。各機種で異なるユニット構成を採用して、それぞれ異なる到達点を目指した音づくりを行っているからだ。

だからこそ自分の好みの音を探して、ぜひ5機種を聴き比べてみてほしい。ストラトキャスターとテレキャスターのどちらの音が好きかは人によって答えがまったく異なるように、音楽には必ず好みがある。それを誰よりも知っているFenderだからこそ、個性が異なる5機種を最初にラインナップしたように思えてならない。

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