公開日 2015/08/21 10:39

ヤマハ新プリメインアンプ「A-S1100」を人気CDプレーヤー&スピーカーと組み合わせテスト

【特別企画】SPとCDプレーヤー各3機種でスクランブルテスト

▼マランツ「SA-14S1」×A-S1100

プレーヤー編の最後はマランツの「SA-14S1」である。すでにスピーカー3機種を聴くときに基準機として使っているが、ここではプレーヤー側に焦点を合わせ、あらためて再生音を確認することにした。SA-14S1は、フラグシップ機「SA-11S3」からメカニズムとコア技術を受け継ぎ、パーツや仕上げにも上級機に負けないこだわりがある。USBを含むデジタル入力の音を妥協なく追い込んでいることにも注目したい。

SA-14S1

この組み合わせは、クラシックを中心にしたアコースティック録音との相性が特に優れている。バッハの復活祭オラトリオは、金管楽器の祝祭的な華やかさと声の柔らかい質感が絶妙なコントラストを見せ、ガーディナーの巧みな采配を聴き取ることができた。ピリオド楽器の鋭い立ち上がりが演奏の躍動感をダイレクトに伝える一方、素直な余韻がオーケストラと合唱の響きを溶きほぐす。そのブレンド具合が上質で、録音の完成度の高さにも感心させられる。

マランツ「SA-14S1」との組み合わせ

渡辺玲子の『Solo』を聴くと、ヴァイオリンの直接音と余韻のバランスの良さから、弾き手が演奏会場の余韻を意識しながらテンポや音色を吟味していることが伝わってきた。輝きと深みを併せ持つガルネリの銘器「ムンツ」の響きをじっくり味わいたい。

ジェンツのガーシュウィン・アルバムからは、男声合唱にサックスとソプラノを加えたユニークな編成の面白さが伝わってきた。男声陣の澄んだハーモニーにサックスが彩りを加え、柔らかいソプラノが重なることで響きに厚みが増す。演奏に仕込まれた音色の豊かな階調をどこまで引き出すことができるか、再生装置の能力が問われる録音なのだ。SA-14S1は演奏と録音の特徴を忠実に再現する能力が高く、A-S1100の素直な音調と基本的な方向がよく似ている。音楽がけっして単調にならず、動きと起伏が自然に浮かび上がるのは、おそらくそこに理由があるのだろう。余分な演出を加えないからこそ、演奏の本質に近付くことができるのだ。

■山之内正が語る、A-S1100が持つ「音楽性」の表現に最も直結した組み合わせは?

複数のプレーヤーとスピーカーを組み合わせることによって、A-S1100が目指す音はどこまで見えてきたのだろうか。開発テーマとして「音楽性」に狙いを定めたと聞いたときは、正直なところ、それが具体的には音にどう反映されるのか、想像しにくい面があった。

だが、じっくり半日かけた試聴の結果、設計陣の狙いは鮮明に浮かび上がってきた。特に、最後に聴いたSA-14S1、A-S1100、R300の組み合わせは、音の狙いをはっきり読み取ることができた。簡単にいえば、演奏の特徴を正確に描写し、アーティストが狙った響きを忠実に再現することに尽きるだろう。それこそが、ヤマハの設計者がこだわる「音楽性」の表現に直結するのだ。

今回、山之内氏が最もA-S1100の魅力を感じられたという組み合わせがこちら。スピーカー→R300(KEF)、CDプレーヤー→SA-14S1(マランツ)

もちろん、A-S1100だけでなく、SA-14S1とR300にも同じようなバックグラウンドがあるはずだ。狙った音をどう実現するか、その具体的な手法やノウハウはもちろんブランドごとに違いがある。その一方で、基本的な志向がある程度揃えば、狙いの定まった完成度の高いシステムを組むことができるのだ。

(山之内正)

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