古いスマホを音楽専用プレーヤーに。“好きだから作っちゃった”「reTONE」の仕掛け人に聞くプロジェクトの狙い
古いAndroidのスマートフォンを音楽プレーヤー専用機として蘇らせるーーそんな新しいプロジェクト「reTONE」が発表されて、SNS上を中心に大きな話題を集めている。その仕掛け人である(有)飯田ピアノの飯田良平さんに、reTONEの目指すところを教えてもらった。
Xで大バズ!古いスマホを蘇らせるプロジェクト
飯田ピアノは自社設計のヘッドホンブランド・KuraDaや、Camertonなどの海外ハイエンドヘッドホン/イヤホンの輸入商社も担当する総合オーディオカンパニー。近年はイギリス・MICHELLのターンテーブルの輸入もスタートするなど、多角的にオーディオ事業を拡大している。
記者がreTONEの話を最初に聞いたのは、10月3日に開催された大阪・ポタフェス。その会場で“面白い取り組みがあるんですよ”と、このreTONEプロジェクトについて、大変な熱量を持って語ってもらった。
その時は「近日正式に発表しますね」ということだったが、10月18日にXにて発表したところ、これが大反響。11月3日現在、64万を超えるインプレッション、2,000を超えるリポストと7,000を超えるいいね、を集めている。
「ちょうど10月16日にソニーのウォークマンが発表されて、僕のタイムライン上にポータブルオーディオプレーヤーの話題が盛り上がっていたタイミングだったんですね。本当はもう少し先に発表するつもりだったのですが、Xのアルゴリズムを考えると、このタイミングで投下したら話題になるかも…と考えて思い切って公開しました。そうしたら想像以上の大バズになりまして、僕もびっくりしているところです」
日本はもちろん、フランスなど海外の“ガジェットメディア”にも取り上げられて、reTONEの話題はグローバルに広がっている。
ハードウェアとしてのスマホの魅力をもう一度!
ではこのreTONE、「古いAndroidスマートフォンを携帯音楽プレーヤーに」というのはどういう試みなのだろうか?
「僕自身が古いスマートフォンがすごく好きで。中古ショップなどで、千円や二千円で売られていたりするとつい買ってしまうんです。最近のスマートフォンって収斂してきたというか、ある程度スタンダードが固まってきてしまったのですが、たとえば10年前ほどのAndroidフォンって、日本メーカーも含めいろんなメーカーが出していて、それぞれの個性がありました。かっこよくて、昔欲しかったけど買えなかった機種が安い値段で叩き売られたりするのを見ると、つい手が伸びてしまうんです」
古いAndroidのバージョンでは、たとえばGoogle Play Storeにつながらないなど、メインマシンとしての使用は難しい。だが、せっかくそういったハードウェアがあるのだから、なんとか復活させる方法はないか。その考えとオーディオビジネスが結びついて、reTONEというプロジェクトにつながった。
reTONEはC言語で書かれた独自のエンジンで動作しており、プレスリリースによると192kHz/24bit FLACまで再生できると発表されている。だが、飯田さんによると実際にはDXDやDSD11.2MHzまで再生できるという。


「基本的にはAndroid 4.0以降のマシンについては動作するようにしています。音楽再生専用機として機能を絞ることで、実装に無理をしない、ということも開発において重要でした」。ただし、「CPUの使用率を10%以下目標にする」ということも目標として掲げていたそうで、たとえばDSD11.2MHzの再生などは、不可能ではないが膨大なCPUパワーを消費してしまうため、正式には謳っていないようだ。
昨今のスマートフォンにはイヤホン端子は省かれてしまったが、かつては3.5mmジャックが標準で装備されていた。そのため、音楽再生機として復活させやすい、という側面もある。京セラやLG、ソニー、Google Nexusなどいくつか飯田さんの手持ちのスマートフォンを見せてもらったが、いずれもイヤホンジャックあり。また充電コネクタがUSB typeBが主流なことにも、時代を感じる。
reTONEを使うためには具体的にどうしたら良いか? 公式サイトから無料のAPKをダウンロードし、手持ちのスマートフォンにインストールするだけ。Androidのrootをカスタマイズしたりする必要がないため、基本的なPCの操作がわかれば問題なく使用できる。
音楽は「Music」フォルダの内部を参照するようにしているので、「Music」フォルダにコピーすればOKだ。FLACのほかWAV、AAC、MP3など基本的なフォーマットには全て対応している。
さらに、USBからのデジタル出力時には、ビットパーフェクトでの再生を実現。たとえばドングルDACやポタアンなどを接続して、さらに音質を追求することもできるのだ。
ハードによって音質も違う!その聴き比べも楽しい
せっかくの機会なので、いくつか飯田さんが持ち込んできたreTONEプレーヤーの音質を比較させてもらう。これがそれぞれ、全く違う音質に仕上がっている。ソニーのXperia Pは高解像度で音楽再生機として文句なし! 京セラのURBANOは若干のハイ上がりが耳に刺さる。ESSのDACチップを積んでいるというLGは、いわゆるドンシャリというか、若干の作為的な音作りを感じるところ。いやはや、これは色々聴き比べたくなる楽しさに溢れている。
もうひとつオーディオ好き的に嬉しい機能が、「細かい音量設定」機能。スマートフォンでボリューム設定をしていると、音量のステップがどうも大味というか、「もうちょっと大きくしたいけど1ステップ上げると大きすぎる」というようなことはないだろうか。reTONEでは「細かい音量設定」という項目が設けられており、オンにすることで1dBステップで調整ができため、耳に“ちょうど良い”ボリュームで再生することができる。
APKのダウンロードは無料で、広告もない。これでは収益化が難しいのでは…?と尋ねると、「どうしましょうねぇ」とのんびりしたお答え。「reTONEは、そもそも僕が古いスマートフォンが好きで、こういうのあったら面白そうだ、と友人等と盛り上がって作ったものなのです。なので、思ったよりも話題になっちゃったので僕自身ちょっぴり困惑しているところもあるのです」。
ちなみに「開発支援」として投げ銭ができるシステムも実装しており、国内外のユーザーからの支援金も集まっているという。
今後の展開はどうしていくのだろうか?「Androidって本当に端末によって色々な環境があるので、まずはみなさまに使っていただいて、バグを直していくことが必要かなと思います」。続けて、「SNSでの皆様の声を踏まえて今後については考えていきますが、たとえばもっと古いAndroidで動作するようにして欲しい、という声もあるので、そういったことも考えてゆきたいですね」。
reTONEの話を聞きながら、実はスマートフォンというのは、“記憶”と分かち難く結びついたメディアなのではないか、という思いに駆られた。最初に購入したスマートフォン(あるいは携帯電話も)は、そのデザインや機能はもとより、購入した場所や家族との会話、当時の友人とのコミュニケーション、その時聴いていた音楽や遊んでいたゲーム、そういったさまざまな記憶と密接に結びついている。下取りに出せば多少のお金になることはわかっていても、なんとなく手放し難くて手元においているスマホのひとつやふたつ、誰しもが持っているのではないだろうか。
Xで大きな反響があったのも、そんな「なんとなく手放し難いスマホ」に新しい役割を与えることに、多くの人々が共感したからではないだろうか。
自分が欲しいから、あるいは単に好きだから作っちゃう!というこのDIYの発想で、新しいオーディオのワクワクを生み出してくれるreTONE。11月7日(土)に開催される「秋のヘッドフォン祭り 2026」にも実機を持ち込む予定なので、皆様の耳で、このワクワク、そして音の違いを体験して欲しい。























