PR 公開日 2025/12/31 07:00

「B&W」と「DALI」、2025年の到達点。シニアサウンドマネージャー・澤田氏が振り返る

2大人気スピーカーブランドの魅力を再検証!
インタビュー/構成:山之内 正
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ディーアンドエムホールディングスのシニアサウンドマネージャーとして活躍する澤田龍一氏は、Bowers&Wilkins(以下B&W)やDALIのスピーカー群を日本のオーディオ市場に浸透させる役割を担ってきたことでも知られる。

澤田龍一氏(右)と山之内 正氏(左)が、今年のB&WとDALIのスピーカーを振り返る!

技術を熟知するだけでなく開発のバックグラウンドまで深く理解しているので、澤田氏の解説には強い説得力がある。2025年に登場した両ブランドのブックシェルフスピーカーをどう位置付けるのか、音を確認しながら語っていただいた。

 

ピュアオーディオ志向の強い日本からの要望を反映

――B&Wの2025年の新製品は、限定モデルの「801 Abbey Road Edition」を除くと、「707 Prestige Edition」(以下、707 PE)の1機種だけです。オリジナルの「707 S3」とどこが違うんですか。

Bowers&Wilkins スピーカーシステム「707 Prestige Edition」(330,000円/ペア・税込)

澤田 まずトゥイーター用グリルのメッシュの並びが横目から縦目に変わりました。800と700両シリーズのシグネチャーモデルと同形状で、開口率も若干大きくなってます。特性上は18kHzより上の帯域で0.2dBほどレベルが高くなる程度ですが、聴感ではかなり違います。

2つ目はターミナルの素材変更。真鍮+ニッケルめっきは同じですが、真鍮の純度を上げています。

――外装も違いますね。

澤田 突板の木目がシグネチャーモデルに近付き、塗装が厚くなりました。「サントス・グロス」と呼んでますが、ピアノブラックより塗装が3工程ぐらい多くなって塗膜が厚くなり、重さも増えるので、響きが変わります。音が変わる最大の理由はそこかもしれません。

――音の違いは大きく、音場の遠近描写や中域のリッチな感触が素晴らしい。ところで、なぜ一番小さなモデルにPEが加わったのでしょうか。

澤田 日本からリクエストしました。他の地域では704にPEが欲しいという声もあったようですが、日本はコンパクトモニターに大きな需要があるので、707を希望したんです。

――707の源流とも言える「CM1」も爆発的ヒットを記録しましたね。

左から「707 PE」、通常モデル「707 S3」、そしてロングセラーとなった「CM1」。2ウェイブックシェルフスピーカーの流れが見える

澤田 日本はピュアオーディオ志向が強くて、トールボーイの長い箱で折り返す低音が気に入らない人もいます。コンパクトで高性能なスピーカーを求める声は以前から変わらず強いんです。CM1は塩ビではなく突板仕上げで、クロスオーバーに巨大な空芯コイルを使うなど、特別な作りでした。

――707PEはサイズもCM1に近いですね。

澤田 概ね近いですね。高さは707PEの方が少し高いと思いますが。

――CM1からの音の進化はもちろんですが、S2からS3への進化も大きいですね。

澤田 ドライバーユニットがまるで違いますからね。トゥイーターはアルミからカーボンになり、ウーファーもケブラーからコンティニュアムに変わりました。700シリーズも「700 S2」から「700 S3」への変化がかなり大きかったんです。キャビネット前面がラウンド形状になって強度が上がり、ウーファーのフレームも厚くなりました。その大きな進化の先に今回の707PEが誕生したわけです。

 

フラグシップの “反応の速さ” を引き継いだDALI「KUPID」

――2025年、DALIはブックシェルフスピーカーを2つ、「KUPID」と「EPIKORE 3」を発売しました。

澤田 KUPIDは「KORE」の “ひ孫” のような存在です。とはいえフラグシップの技術そのものではなくて、設計の考え方を引き継いで新たに設計した小型スピーカーです。

DALI スピーカーシステム「KUPID」(57,200円/税込・ペア)

――KOREのコンセプトからどの部分を引き継いでいるのでしょうか。

澤田 反応の速さです。これまでDALIは耳あたりの良いナチュラルな音が特長の振動板素材を使ってきましたが、KOREは反応の良さを際立たせる作り方に変わった。KUPIDも低域と高域どちらも反応の良さを狙ってます。

――反応が良いと同時に低音も意外なほどよく出ます。

澤田 低音についてはサイズの限界はあるものの、かなり低いところまで伸ばしていて、その代わり能率は83dBと低い。大きなストロークに耐えるウーファーですが、高域側で不要な振動を起こしにくい形状にも特長があります。Spherical(球形)と呼んでますが、いわゆる「お椀型」ですね。

DALIはウーファーを高めの帯域まで使うことが多いんですが、その帯域を超えたら速やかに音圧が落ちるのが理想。他のモデルでウーファーのセンターキャップが凹んだ逆ドーム型になっているのはそのためで、お椀型はその手法をさらに押し進めたものと思ってください。

――トゥイーターにはどんな工夫がありますか。

澤田 トゥイーターはネオジウムマグネットを使ってます。「OBERON」も「SPEKTOR」もフェライトなのでKUPIDは特別ですね。水のような磁性流体を使ったのもDALIとしては初めてのことです。KOREのように磁性流体なしとまではいきませんが、緩い磁性流体は反応の良い音につながります。

クロスオーバーが2.1kHzで、かなり低い音域まで使ってますが、低い方は強力なマグネットの磁気制動で暴れを抑えるので、緩い磁性流体でも問題ありません。ネットワーク回路のトゥイーターと直列に入れるコンデンサーはOBERONでも使ってないフィルムコンデンサーが入っている。このクラスでフィルムコンデンサーなんて、生意気ですよね(笑)

――音に良い意味で落ち着きがあって、低価格スピーカーとは思えない質感の高い音が魅力です。

アキュフェーズのパワーアンプと組み合わせて試聴。サイズや価格を超えた質感の高い音が楽しめる

 

音楽体験を目指すDALI「EPIKORE 3」

――EPIKORE 3はDALIの到達点を身近なサイズで体験できるスピーカーです。

澤田 EPIKOREはそれこそKORE直系のスピーカーで、低域側で超ワイドレンジを狙うのでなければクオリティはKOREと変わりません。プラナー型(リボン型)とドーム型のハイブリッド・トゥイーターはKOREと同じものだし、ウーファーもDALIがやりたいことを全部やった新規設計のユニットです。

DALI スピーカーシステム「EPIKORE 3」(2,200,000円/ペア・税込)

――ドーム型トゥイーターは35mmの大口径です。

澤田 DALI史上最大の口径で、その気になれば600Hzぐらいから使える。ミッドレンジかと思うほどですよね(笑)。減衰型のバックチャンバーが付いているので反応が速くて、エコーがない良さもあります。もちろん能率も高く、なんと95dBもある。

プラナー型のユニットも恐ろしい代物で、前後にマグネットを配置したプッシュプル磁気回路で単体だと96dBの高能率です。もちろんシステム全体でレベルは調整しますが、いずれにしてもレスポンスは非常に優秀です。

――ウーファーは新規開発ですね。

澤田 DALI史上最強の磁気回路で、第2世代のSMC(ソフト・マグネティック・コンパウンド)をポールピースとトッププレートの両方に導入しています。ウーファーは2.8kHzまで使うので、中域の歪対策を担うショートリングはなんと3枚も入っているんですよ。

――歪対策の強化ですね。

澤田 振動板が思いっきり前後に動いたときも歪を抑える効果が変わらないので、音楽信号で低音と中音が同時に入り、目一杯動いた状態で中音を出すときも歪を抑えられるんです。測定で見ると中域だけ歪を抑えればいいと考えがちですが、実際に音楽を聴くときに歪が少ないことが大事です。

――ブックシェルフ型にもハイブリッド・トゥイーターを載せました。

プラナー型とソフトドームの組み合わせによるハイブリッド・トゥイーターは「KORE」譲り

澤田 「EPICON」のブックシェルフスピーカーはプラナー型トゥイーターをやめてしまったけど、EPIKORE 3で復活しました。ハイブリッドを使う最大の理由は水平方向の指向性が広がることですが、根強いファンがいることもあり、この復活には強いインパクトがあります。

――トゥイーターの音圧が強いということですが、それを感じさせない優れたバランスで鳴ります。

澤田 たしかにこのユニットをガチガチのキャビネットに入れると力が漲りすぎて、どこか抜けたところが欲しくなるんです。いろいろ苦労したようですが、そこはコンティニュアス・フレア・バスレフポートがうまく効いてるんですね。

独自形状のフレア構造で、なおかつ斜めにすることで大口径のダクトが使える。ダクトのくせを避けるために細いダクトを使うことが多いけど、それだと「抜けた」感じが得られない。大口径でくせもないダクトを作るには、コンティニュアス・ポートは有効なやり方です。

――小音量で聴いても音が痩せないことにも感心しました。

澤田 音量を下げるとウーファーの動きが鈍くなり高音が目立つことが音痩せの原因ですが、ウーファーの反応が良いと音が痩せにくいんです。しかもDALIはそこまで強い振動板を使わず、贅沢な磁気回路で駆動するので、音量を下げても音が痩せない。

振動板も軽めなので鈍くなりにくいし、エネルギーロスの少ないサスペンションも動きの良さに貢献してます。トゥイーターにソフトドームを使うこともそうですが、オーガニック系の素材を使い続けて耳なじみの良い音にまとめるうまさがありますね。カタログでは謳ってませんが、DALIが目指しているのはあくまで音楽体験なんです。信号音ではなくて。

――よくわかります。

澤田 DALIに言わせると、電子楽器は別として、そもそもスピーカーのようにピストンモーションで動く楽器なんか存在しない。声も楽器もそうです。発音形態の肌合いの違いみたいなものが存在する。そこを突き詰め、分割共振も使って耳なじみの良い音を出すには、バックヤードで電流歪やサスペンションの歪を克服する必要があるんですが、そこをSMCのような独自技術で解決するのがDALIのやり方なんです。

――DALIのスピーカーの魅力の根幹ですね。どうもありがとうございました。


(提供:ディーアンドエムホールディングス)

 

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