クリーニングマシンはレコードファンの必須アイテム。超音波と回転ブラシの“二刀流”「VINYL CLEANER premium」をチェック
「いい音になりますように」と願いながら自分の手で愛聴のレコード盤をクリーニングする。レコードファンなら至福のひとときだろう。不肖も以前はそうであった。
だがレコードクリーニングマシンに触れてから、手でのクリーニングをやめた。それは便利かつ時間短縮が図れるうえに、何枚もベールを剥いだかのような効果を知ったからだ。隅々までクリーニングしていたつもりが出来ていなかったのだ。
そして気づけば、水の振動で盤面についた汚れを落とす超音波式と、クリーニング液を盤面に塗布し洗浄した後、汚れたクリーニング液を吸い取るバキューム式の2台体制でレコード盤をクリーニングしている。
どちらも一長一短であり、未だ満足はしていない。だが今年5月中旬にドイツから再上陸した魅力的なクリーニングマシンに触れ、その効果に心が揺れ動いている。

超音波と回転ブラシの“二刀流”
今年5月中旬より輸入が再開されたGLASS-AUDIO DESK SYSTEMEのVINYL CLEANER premiumは、洗浄から乾燥まで全自動の超音波式洗浄機だ。価格は82万5000円と、クリーニングマシンとしては高額の部類に入る。
どこか頼もしさを覚えるマットグレー仕上げの無骨な外観は、スイッチ類など細かな部分は変われど、大きな変更はない。
レコードを差し込み、スタートボタンを押すだけというオペレーションも同じだ。前モデルとの違いは静音化がなされたことだとアナウンスされている。
洗浄方法は専用クリーニング液を用いた、超音波と回転ブラシの二刀流。これが他社の超音波式と異なる点だ。超音波式では取り除くのが難しかった油系の汚れも、洗浄液とブラシにより落ちやすくなるというわけだ。
セッティングも簡単だ。付属する外部DCアダプターを本体とコンセントに差し込む。電源ケーブル着脱式だ。
続いてクリーニング液を作成し本体に入れる。必要な蒸留水は4.5リットル。そこでドラッグストアで購入してみた。510ミリリットルで9本購入。10%のクーポン割引やビニール袋6円を加えたりで、合計金額は1311円であった。
この蒸留水に専用のクリーニング液を入れる。クリーニング液は2本で8800円。1本あたり4400円。よってクリーニング液のコストは不肖の場合5711円となった。ちなみに100枚以上洗浄できるというので、1枚あたり57円が本機のランニングコストとなる。
必要量は4.5リットルの精製水に対して20ミリリットル。ボトルは5リットル用なので、念のためメスシリンダーを用いたところ、案の定少し余った。クリーニング原液は無色透明で臭いもしない。
クリーニング液を投入し洗浄スタート!
精製水とクリーニング液は、天面に見えるスポンジフォームから投入した。念のため、精製水のキャップを空けて、先にクリーニング液を入れてから本体に移動させた。クリーニング液が溜まってくると、次第にフロントパネルの水位計が上がってくる。水位はLEDでも表示される。
あとはレコードをセットし、スタートボタンを押すだけだ。スタートボタンを押す回数によって、洗浄時間が1分 - 5分へと変更できる。再生ボタンを押すと、レコードが回転しながら洗浄と乾燥が行われる。
この時、レコードが回転しない場合がある。その際はレコード盤面を指先の向きに押し込むと回転動作する。
洗浄中は4本のローラーが盤面に接触し、それぞれが正逆回転する。動作音はかなり静かだ。乾燥時はファンの動作音がするものの、それとてバキューム式で見かける大きな音ではない。百聞は一見にしかず。クリーニングの様子は動画をご覧いただきたい。
トータルの施術時間は最も短い洗浄時間(1分設定)で4分30秒ほど。盤面を見ると水滴が残ることはなく、漆黒の輝きに思わず頬が緩む。試しに50枚ほどクリーニングしたが、1枚も水滴が残ることはなかった。レーベル面はもちろんだが、床や机を汚したくない方は嬉しいだろう。
ただ、見た目は乾燥していても溝の奥に水が残っている可能性もある。なのでスグに針を降ろしたり内袋に仕舞うことはしない方がよいだろう。これは本機に限らず全てのレコードクリーニングにいえることだ。折角綺麗にしたのに水気が原因でカビを生やしたら本末転倒だ。
不肖は乾燥台で20分ほど置いてからレコードをジャケットに戻している。
100枚程度クリーニングしたら、汚れたクリーニング液を排出しなければならない。ドレインキャップは本体背面にあり、外せば勢いよく液が出る。廃液はそのまま下水道に流してもよいようだ。ちなみに最後の方は水が抜きにくく、本体を傾ける必要があった。
クリーニングで音は変わるのか?答えはYES
クリーニングマシンの試聴は難しい。本来なら同一アルバムかつ同じコンディションの盤を複数枚揃えなければならないからだ。クリーニングの効果も、不肖の場合、全ての盤がクリーニング済みだ。そこで今回は、精製水のみでクリーニングしたものを聴いた後、専用液を希釈してクリーニングしたものを聴いて比較することにした。
試聴ディスクは前日に全て精製水のみでクリーニングを行ない、聴いた後に専用液を施術。スグに針を降ろさずに10分間の乾燥時間を設けた。楽曲はロック、ピアノソロ、オーケストラから3曲を選出した。
結論から申し上げると、この専用クリーニング液にもキャラクターは存在した。だがバキューム式のクリーニング液に比べ、その変化量は少ないといえる。
以下の試聴レポートは、「よく聴けばこうなった」程度だと捉えて頂きたい。もちろん静電気ノイズが減る、ホコリは付きにくくなるなどの効果が得られたのは言うまでもない。
1枚目はイーグルス『ホテル・カリフォルニア』。スペシャリティ・レコーズでプレスされたUSオリジナル盤で、内周部には「7E 1084 A-1RE SP 1-3」というマトリクスが刻印されている。
蒸留水でクリーニングした音は、透明度や鮮明さという点では魅力があるものの、パチパチといった静電気に起因するノイズも散見するし、盤にホコリがつきやすい。また洗いざらしの髪のような、どこかまとまりに欠ける演奏に聴こえた。
それが専用液を入れたクリーニングを行うと、低域の押し出しが強くなり、ギターの弦に艶やかさが得られる。それは髪にリンスをしたかのような艶やかさとまとまりである。
2枚目は今年映画化されたキース・ジャレットの『ケルン・コンサート』。盤はもちろん西ドイツプレスのオリジナル盤である。
クリーニング液の音は、透徹なピアノの音に、僅かな暖色の音色と高域に艶と優しさが纏う。併せて永遠に続くかのような余韻も加わり、この演奏をより高貴なものに感じさせた。
3曲目は元日のクラシックの祭典『ウィーン・フィル ニューイヤーコンサート』から。カルロス・クライバーがタクトを振った92年盤を聴いた。曲は誰もが知るラデツキー行進曲である。
どこか折り目正しい演奏に感じるのは、クリーニングマシンの出所がドイツだからか? 蒸留水に比べメリハリのついた演奏となり、来場者の手拍子と相まって、ムジークフェラインが地鳴りをあげているかのよう。血沸き肉躍るとはこのことかと思った。
ランニングコストは高めながらも、施術時間の短さと高い効能が魅力のVINYL CLEANER premium。高価でも、使い勝手のよいレコードクリーナーが欲しいという方にオススメしたい。
なにより動作音が大きくないので、「明日はレコードを愉しむぞ」という日の前夜に躊躇なく利用できる。レコードクリーニングマシンは、深夜に使うことをためらう手間や音の問題があるのだ。言い換えるなら、他のクリーナーと比べて圧倒的にタイムパフォーマンスが高いマシンだ。それゆえ、今、アナログ関係で欲しいアイテムのひとつであることを正直に告白する。
(提供:サエクコマース)
