トップインタビュー オウガ・ジャパン
中国ブランドが躍進する国内テレビ市場に、オウガ・ジャパンが中国の家電メーカー「SKYWORTH」(スカイワース)製品で新規参入した。独占販売契約を結んだKDDIをパートナーに全国のauショップで展開、順調な立ち上がりを見せている。スマホとテレビがシームレスに連携したコンテンツの楽しみ方や若年層へのアピールなどテレビの新たな価値創造を目指す。オウガ・ジャパン河野謙三氏、KDDI西田麻衣氏に話しを聞く。<インタビュアー 音元出版 代表取締役・風間雄介>

オウガ・ジャパン株式会社 専務取締役 河野謙三氏
プロフィール/米国のシスコ・システムズおよび国税局で勤務した後、2002年に日本に帰国。 NTTコミュニケーションズ株式会社、株式会社新生銀行勤務を経て、2013年1月にOPPO Digital Japan株式会社を設立し、代表取締役に就任。当時日本に存在していなかった高級Blu-rayプレーヤー市場を開拓して日本シェアNo.1を確立。また、ヘッドホンなど数多くのオーディオ製品も発売し、オーディオ専門誌にてアワード1位を継続的に受賞。オーディオメーカーとしてのOPPOブランドを日本市場に広めた。2017年のオウガ・ジャパン株式会社設立に伴い、専務取締役に就任。組織および事業運営に関する業務執行を統括する。
見逃せない!大きく変化するコンテンツの楽しみ方
―― 今回のSKYWORTH(スカイワース)スマートテレビによる日本市場への参入およびKDDIとの独占販売契約につきまして、まず、決定に至るまでの背景をお聞かせください。
河野 スカイワースは1988年に創業した中国の家電メーカーです。テレビ、モニター、ディスプレイなどを中心に成長を遂げ、スマートテレビにおいては特に画質や音質に強いこだわりを持ち、世界の100以上の国と地域に展開しています。今回のスカイワース製品によるテレビ市場への参入、また、そこでKDDI様と独占販売契約を結んだ背景には、大きな戦略的な意図があります。
まず、アフターコロナに生活様式が大きく変化したことが挙げられます。エンターテイメントの視聴スタイルも大きく様変わりし、リモートワークや巣篭りをきっかけにして、ご家庭で動画配信サービスを楽しむ機会が飛躍的に増えています。
スカイワースのスマートテレビはチューナーレスで、インターネット経由のコンテンツ視聴に特化した製品です。視聴者一人一人がお気に入りや推しのコンテンツを、ネット経由で手軽に高画質にお楽しみいただけるというのがコンセプトになります。
例えば、KDDI様が提供される「データ使い放題プラン」と組み合わせれば、外出先ではスマホで視聴し、自宅に戻られた時には高画質の大画面で続きが楽しめるといった使い方が可能になります。新しい視聴スタイルに特化した製品を投入することで、ポストコロナ時代に芽吹いた新たなニーズを的確に捉えていきたい。
そして、KDDI様の先進的な企業風土が、当社の社風と大変親和性が高かったこと。通信事業者として常に革新的なサービスを展開され、スローガンとして「つなぐチカラの進化」を掲げて新分野に果敢に挑戦される企業文化は、私どもオウガ・ジャパンが大切にするチャレンジ精神と合致しています。市場を切り開くパートナーとして力強さを感じています。
OPPOブランドのスマートフォン事業で培ってきたスピード感や柔軟性を備えた企業風土と、KDDI様のベンチャーマインドを理解し、支援してくださる風土の相乗効果により、日本のお客様にこれまでにない価値提案ができると信じています。
―― 日本のお客様にとっては初めて耳にするブランドになります。浸透させていく上で何が一番大切になりますか。
河野 私どもは2017年に日本のスマートフォン市場へ参入しましたが、経営方針を決めるにあたって必ずやり遂げようと決めたのが、近江商人の経営哲学のひとつとして知られる「三方よし」という考え方で、今でも愚直に続けています。
我々のような海外メーカーでは、メーカーがしっかりと利益を出し、お客様には安い値段で提供して喜んでいただく「二方よし」の考え方が主流になっています。もちろん、お客様にご満足いただくのはとても大事なのですが、日本市場で成功するには、“一般消費者”“メーカー”“流通”の「三方よし」が不可欠であると考えています。
今回のスカイワースであれば、流通を担われるのはKDDI様です。日本では初めてのブランドとなり不安もおありのなか、例えば、製品を展示いただく際のPOPひとつとっても、入念に打ち合わせを重ね、ご納得のいくデザインに仕上げてご提供しています。
私ども直営のオンラインショップのみで販売するのが一番手っ取り早く簡単な方法かもしれませんが、日本市場ではそれをよしとはしません。「三方よし」の考え方は今後も変わることなく貫いて参ります。
全国のauショップに32V型SKYWORTHテレビ登場
―― KDDIさんが製品の展示、接客、販売を担われます。
西田 ベースとなるのは全国に約2,000店舗を構える「auショップ」です。auショップは取り扱う携帯電話の販売・修理やお問い合わせに対応するリアルショップのチャネルとなりますが、今回は一番コンパクトなサイズ32V型の「F32S21Q」を全国のショップに一斉に展示して、お客様が実際に見て、触れていただける環境を整えました。また、auコーナーを設けている一部の家電量販店でも展示を行っています。
体験価値をご案内できるダイレクトな接点となります。実際の映像美だけでなく、リモコンでサクサク動く操作感や実際に配置するご自宅の部屋での利用シーンを想定したテレビのサイズ感をご確認いただけます。家電量販店は都心部では数が多いですが、地方では家から遠くて足を運べないというケースも珍しくありません。お近くのauショップに気軽に足を運び、体験、購入まで完結できるのは唯一かつ大きな強みとなります。
―― スマートフォンと連動した使い勝手をアピールできることも、大きなセールスポイントになりますね。
西田 スカイワースのテレビにはGoogle TVが搭載されており、映画、ドラマ、音楽、スポーツなど多彩なコンテンツが楽しめます。また、auにはデータ通信に「Netflix」「YouTube Premium」「Amazonプライム」などエンターテインメントサービスをバンドルしたプランもご用意しています。好きなコンテンツを外ではスマートフォンで、家ではタブレットよりさらに大きなテレビで続きから楽しめる、新しいシームレスな楽しみ方を提案して参ります。
―― 「F32S21Q」は価格も32,780円と非常に手に取りやすいですね。
河野 今回は32V型、43V型、55V型のスリーサイズをラインナップしました。それぞれに代表的な利用シーンを想定していて、32V型はやはり若い方がメインターゲットで、ベゼルレスでシンプルなミニマルデザインも大きなアピールポイントです。
55V型の「F55S51M」は、量子ドット技術とMini LEDパネルを採用し、ピーク輝度1,000nitsのHDR10対応です。明るさがある程度あるリビングルームでも、細部まで驚くほどの鮮明な画像を楽しんでいただけます。50V型を超える大きいものは要らないけど、画質や臨場感にももう少しこだわりたいという方には、43V型の「F43S32U」がお薦めです。
西田 一部の直営店では32V型に加え、55V型も併せて展示しています。やはり実際に見てみることで「映像美が違う」とご納得をただき、55V型を選択されるお客様もいらっしゃいます。多様な使い方や住宅事情を加味してご案内させていただいています。
SKYWORTHテレビの“エキスパート”auショップスタッフがご案内
―― しかし、スマートフォンとは畑違いの新カテゴリーが加わることは、auショップでもいろいろご苦労があったのではないでしょうか。
西田 スマートフォンおよび関連したアイテムの展示に特化した店舗のため、新たな展示スペースの確保やデモができる環境を構築する必要があり、加えて、全国の店舗それぞれの販売方法の特徴・特色に応じた要望もありました。様々な声・要望につきましては随時、オウガ・ジャパン様に柔軟にご対応いただき、販売体制を整えることができました。
数万人におよぶauショップのスタッフに対し、お客様にきちんと商品の魅力をご案内できるように月単位でのトレーニング環境もご用意いただきました。テレビという初めての商材に対し、NetflixやAmazonプライムなどのコンテンツをもっと大きな画面で簡単に楽しめるもの、タブレットと同様なアプローチでご販売くださいという説明には、スタッフも非常に腹落ちしたようです。auらしさをきちんと残しながら、新しいブランド「スカイワース」を日本全国でピーアールしています。
―― KDDIさんが新規ブランド「スカイワース」の市場導入を実際に進められるにあたって、河野さんは他にどのような点に注意を払われましたか。
河野 人間誰しもそうだと思いますが、聞いたことも見たこともないものに対しては、本能的に恐怖心を抱きます。そこで、スカイワースというメーカーは高い技術力があり、品質管理もしっかりとしている、販売後のサポート体制も日本のメーカー以上に手厚い。安心してご販売いただけるブランドであることをきちんとご説明し、しかも一度だけではなく、真意を伝えるために何度も繰り返しお伝えしました。
西田様から説明があった販売店様向けのトレーニングでは、私どもには社内に専用のトレーニング部隊があり、今回はスカイワースのために専属的にリソースを割り当て、緻密なトレーニングを行いました。一方的にただ情報を押し付けるものではなく、店舗スタッフの方からも「受けてよかった」「本当に安心できた」との声をいただくことができました。
―― 海外製品ではやはり購入後のサポート体制に不安を抱かれるお客様が少なくありませんが、お客様へのサポート体制はどのようになっていますか。
西田 通常のスマートフォンおよび付随する商材の場合とはお客様へのサポート体制が異なっており、今回のスカイワースのテレビについては、お客様からのお問い合わせやご質問は、専用の「SKYWORTH Japanサービスセンター」を特別にご開設いただいており、そちらでダイレクトに対応させていただきます。
テレビは時代時代でその存在意義が大きく変わっていく
―― 2月21日の販売開始から約3カ月、ここまでの販売状況はいかがですか。
西田 導入にまつわる不安も完全に払拭され、販売スタッフや販売代理店からの現場の声は本当に自信に満ちています。結果としてお客様へのご案内へとつながり、販売は好調に推移しています。今後、9月に東京で開催される世界陸上など魅力的なコンテンツも控えており、拡販へのさらなるチャンスになると考えています。
―― 展示している32V型でメインターゲットに設定される若いお客様は、スカイワ−スという中国ブランドに対してどのような印象を抱かれているのでしょうか。
河野 一般論で申し上げますと、良い意味で意識をされていませんね。今は欲しい情報があればすぐに手に入る時代ですから、納得がいくまでスペックを比較してから購入する傾向がさらに強まっています。例えば、スカイワースの55V型「F55S51M」であれば、Mini LED+量子ドット、ドルビービジョン対応をはじめとするモデルが121,000円です。ネットで調べれば簡単に比較できますから、より値ごろ感がある、満足度の高い製品としてお客様の心に響いているようです。
そして、興味をもって実際にauショップへ足を運んでみれば、KDDI様はお客様との距離感が非常に近く、製品の価値をきちんとご説明され、お客様をしっかりとサポートしていただけます。そんなKDDI様とぜひパートナーを組みたいと願っていました。
スマートフォンを長きにわたりご販売され、お客様からの厚い信頼を獲得され、ずっとauを使い続けているロイヤルカスタマーが非常に多くいらっしゃいます。そうしたお客様がスカイワースのテレビを購入され、KDDI様への信頼を損なうようなことが絶対にあってはなりませんから、今回のパートナーシップでは、それもひとつの使命として重く受け止め取り組んでいます。
―― 今後への意気込みをお願いします。
西田 KDDIでは4月1日に松田浩路が新たに社長に就任しました。先日は料金プランのアップデートをご案内させていただきましたが、料金プランにとどまらず、様々な付加価値を付けて提供していく取り組みを、全社を通して行っていく所存でございます。
私はスマートフォンの周辺機器として、スマートウォッチやスマートテレビを担当させていただいていますが、まさに今回のスカイワースのテレビは、皆様の生活スタイルにさらなる付加価値を提供できる商材です。
スマートフォンだけでは実現することができない、お客様にちょっと先の未来のプラスアルファの快適な生活を実現するための最適な選択肢。お客様のライフスタイルのアップデートにお力添えしていきます。
auショップにおいてもちょっと体験してみる、触ってみるという、スマートフォンやタブレットとは異なる臨場感あふれる空間を実感いただけると思います。それぞれのお客様がご利用されるニーズに合わせて、価値を最大化できる新しいラインナップとしてご提案して参ります。
河野 KDDI様の代表的なお客様像から、日中にカーテンを開け放ったリビングで、お子さんと一緒にご家族で、ディズニープラスのコンテンツをスカイワースのテレビで楽しまれる、そんな利用シーンを思い描いていました。
オウガ・ジャパンは2017年にスマートフォン販売で日本市場へ参入以来、常に新しい販売方法などを画策し続けてきました。テレビは時代時代で存在意義が大きく変わる製品であり、“ポストコロナ”“インターネット”の時代に、新たな価値観が生まれてきていることを実感しており、まだまだ有力な商材であると確信しています。
スカイワースは、すでに8Kのパネルを自社開発してグローバルで展開しているメーカーです。また、独占販売契約をKDDI様と締結させていただいたことは、お客様や販売店のスタッフ様の声に直に耳を傾けることができます。今後の展開にあたり、皆様の期待にお応えしていくことができると確信しています。KDDI様とパートナーシップをより深めて取り組んで参ります。どうぞご期待ください。






























