公開日 2019/12/10 06:40

ついに実現するaptXの96kHz/24bit対応。BTオーディオ用SoCにも新たな動き?クアルコム幹部独占インタビュー

新コーデック「aptX Voice」も発表
米クアルコムがハワイで開催したプレス発表会でモバイル向けハイエンドSoC「Snapdragon 865」を発表した。最新のチップセットに関わるオーディオ機能の進化について、新コーデック「aptX Adaptive」の96kHz/24bitへの拡張対応や完全ワイヤレスイヤホンへの展開など、オーディオ部門の責任者に詳細を聞いた。

イベント期間中に現地でインタビューに答えていただいたのは、クアルコムのプロダクト・マーケティングディレクターであるジョニー・マクリントック氏だ。今回のインタビューでは主に以下の3つのトピックスについてマクリントック氏に聞いてみた。

クアルコムのプロダクト・マーケティングディレクター、ジョニー・マクリントック氏にオーディオ関連のソリューションの最新事情を訊ねた

・aptX Adaptiveが96kHz/24bit対応になったこと
・TrueWireless Stereo Plus(TWS Plus)の動向
・もう一つの新コーデック「aptX Voice」とは何か

aptX Adaptiveが96kHz/24bit対応に。Snapdragon 865から

aptX Adaptiveはクアルコムが独自に開発したBluetoothのオーディオコーデックだ。特徴は定められた範囲の中でビットレートをダイナミックに可変しながら音声信号を安定的に、かつ遅延を抑えながら高音質に伝送できるところにある。昨年にクアルコムが開催した発表会でベールを脱いだ現行の「Snapdragon 855」から、SoCの中にオプションとして標準搭載された。

これまで上限は48kHz/24bitに定められていたが、Snapdragon 865から96kHz/24bit対応が始まり、2020年の主力を担う新しいSnapdragonシリーズのSoCに広く展開される。

2020年春からSnapdragon 865を搭載する最新のスマートフォンが商品化を予定している

転送ビットレートの可変幅は現在280kbpsから420kbpsの間でスケーラビリティを確保しているが、新たにボトムは260kbps、上限は640kbpsまで拡張される。昨年に同じイベントでクアルコムのオーディオ部門の幹部を筆者がインタビューした際に、取材に対して「aptX Adaptiveを96kHz/24bit対応にブラッシュアップを図っている。スループットは600kbps前後まで上げることができそうだ」と答えていたコミットメントが1年後に果たされた格好だ。

マクリントック氏が、今回96kHz/24bit対応を実現するに至った経緯を次のように話している。

「aptX Adaptiveは2018年の秋に発表する前に、当初から(96kHz/24bitの)ハイレゾ対応で行くべきか、あるいはレイテンシーをなくすことを優先すべきか決断を迫られました。議論の結果、動画と音声のリップシンク、ゲーミングなど、よりユースケースが多いと考えられるレイテンシーの性能を確保することから優先しました」

「とはいえ、48kHz/24bit対応ということで妥協したわけではありません。24bitのビット深度を確保することが音楽リスニングにとってまず大事であると考えていましたし、実際にワイヤレス再生時にハイレゾ相当の音質体験を得るために、48kHz/24bitでもすでに十分なクオリティに到達できていると言えると思います。ところがやはり、日本はもちろん、欧州ではドイツのオーディオファイルを中心に、aptX系コーデックの音質向上を狙ってほしいという声が継続的に聞こえていましたので、今回新しいSnapdragonから96kHz/24bit対応に踏み切りました」

Snapdragon Tech Summitの会場に設けられたデモルームでは、Snapdragon 865を載せた評価機からaptX Adaptive、96kHz/24bitの信号をBluetoothでデノンのヘッドホンアンプに飛ばして、ベイヤーダイナミックのヘッドホンで試聴できるコーナーが設けられた

96kHz/24bitのハイレゾ音源とCDソースの聴き比べも用意されていた

最大の伝送スループットを640kbpsとした背景は、「開発段階で試聴テストを繰り返して、音楽コンテンツのエッセンスが640kbpsの伝送ビットレートの範囲内で十分に伝えきれることがわかったから」だとマクリントック氏は話している。

スマートフォンの通知からはaptX Adaptiveの96kHz/24bitの信号が送り出されていることがわかる

次ページ新しいワイヤレスオーディオ向けSoC登場か?

1 2 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

トピック

クローズアップCLOSEUP
アクセスランキング RANKING
1 レコードの音楽を読み取って光るターンテーブル。オーディオテクニカ「Hotaru」一般販売スタート
2 ダイソンとPORTERがコラボした特別デザインのヘッドホンとショルダーバッグ。全世界380セット限定販売
3 LUMINの進化は終わらない。初のディスクリートDAC搭載「X2」の思想を開発担当者に訊く!
4 Spotif、2025年に最も聴かれた邦楽は「ライラック」。国内外で最も聴かれた楽曲・アーティストの年間ランキング発表
5 DUNU、7ドライバー/トライブリッド構成を採用したイヤホン「DN 142」
6 カセットテープとともに過ごすカフェ「CASSE」。12/17渋谷でグランドオープン
7 Vento、3次元特殊メッシュを採用したハイブリッド拡散パネル「DAP180 / DAP120」
8 AVIOT、最大120時間再生と小型軽量を両立したオンイヤー型Bluetoothヘッドホン「WA-G1」
9 サンワサプライ、省スペース設置できる木製キャビネットのサウンドバー「400-SP120」
10 アイレックス、ALBEDO/AUDIAブランド製品の価格改定を発表。2026年1月1日より
12/5 10:47 更新
音元出版の雑誌
オーディオアクセサリー199号
季刊・オーディオアクセサリー
最新号
Vol.199
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
特別増刊
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
最新号
プレミアムヘッドホンガイドマガジン vol.23 2025冬
別冊・プレミアムヘッドホンガイドマガジン
最新号
Vol.23
プレミアムヘッドホンガイド Vol.33 2025 SUMMER
プレミアムヘッドホンガイド
(フリーマガジン)
最新号
Vol.33(電子版)
VGP受賞製品お買い物ガイド 2025年冬版
VGP受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年夏版(電子版)
DGPイメージングアワード2024受賞製品お買い物ガイド(2024年冬版)
DGPイメージングアワード受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年冬版(電子版)
WEB
  • PHILE WEB
  • PHILE WEB AUDIO
  • PHILE WEB BUSINESS
  • プレミアムヘッドホンガイド
  • ホームシアターCHANNEL
  • デジカメCHANNEL
AWARD
  • VGP
  • DGPイメージングアワード
  • DGPモバイルアワード
  • AEX
  • AA AWARD
  • ANALOG GPX